上質な生ハムは舌の上で脂が溶け、適度な塩気と旨味が口の中で広がり、ワインに合う至福のおつまみです。
しかし、生ハムの代表的な国や種類、美味しい食べ方など、意外に知らないことも多いのではないでしょうか。今回は、世界でもトップの生ハム生産国である、スペイン産の生ハムをご紹介。
スペインワインとの相性が良い代表的な生ハムの種類と、さらに美味しく食べるポイントを知っておけば、最高のペアリングに出会えるはずです。
目次
スペインを代表する生ハム「ハモン・セラーノとハモン・イベリコ」
豚の腿肉を塩漬けし、長期熟成させる生ハムは、国や種類によっても味わいが異なります。
世界三大生ハムと言われる有名な生ハムは、イタリアのプロシュット・ディ・パルマ、中国の金華火腿、スペインのハモン・セラーノです。
スペインの生ハムは、適度な硬さで噛むほどにコクと旨味が広がり、しっかりとした力強いスペインワインとの相性が抜群です。
スペイン生ハムを代表するハモン・セラーノですが、さらに上級のハモン・イベリコと呼ばれる最高級品があります。この2つの生ハムの違いを見ていきましょう。
ハモン・セラーノ(Jamón serrano)
「ハモン」とは、スペイン語で「ハム」、「セラーノ」とは、「山の」を意味します。スペインで作られる生ハムの大半が、ハモン・セラーノです。
ハモン・セラーノは、白豚を原料としています。伝統的には山岳地帯で作られていましたが、現在はスペインの広域で生産されています。1~2年を通じて風通しの良い貯蔵庫で吊るし、熟成されます。値段も比較的良心的で、日常的に食べやすい味わいです。
ハモン・イベリコ(Jamón Ibérico)
イベリア半島で良質な脂を含む天然のドングリを食べて育つ、ブランド豚のイベリコ豚(黒豚)が原料となります。
ハモン・セラーノと比べ、極めて少量生産且つ熟成期間も長くなります。スペイン生ハムの約1割と言われています。希少価値が高いことから、生ハムの中でも最高級品となります。ハモン・セラーノと比べると、香りも複雑になり濃く赤い色合いで、旨味とともに甘味も強くなります。
生ハムの選び方とランク
生ハムを選ぶポイントは、原料が白豚であるかイベリコ豚であるかなどの種類と、熟成期間にあります。
種類を見分ける際には、脚の原木のままの色を見ます。ハモン・セラーノの蹄の色は白、ハモン・イベリコの蹄の色は黒色をしています。色の違いだけで原料の種類が分かるので、味わいや希少性が異なることが分かります。
熟成期間は、ハモン・セラーノの場合18〜24ヵ月のものが味わいのバランスが良いと言われます。2年以上の長期熟成のハモン・イベリコとなれば、芸術を思わせる最高級品です。
長期間吊るして熟成させる為、筋肉量の多い足首に近い部分は、塩味がやや穏やかになり、味わいはしっかりとした人気の部位です。生ハムはワインやチーズ同様、熟成期間によって変わる美味しさなので、嗜好によって選ぶ楽しさもありますね。
ハモン・イベリコのランク分け
最高級品となるハモン・イベリコですが、実は肉質や基準によってランクが存在します。
ベジョータ (Jamón Ibérico de bellota)
スペイン生ハムでも最高級とされるベジョータ。ドングリや自然の産物のみを食べ、補完飼料(穀類・豆類)を与えられることなく、放牧されて育ちます。肉質の基準をクリアしたベジョータのみに付けられるハモン・イベリコ・デ・ベジョータは、幻とも言われ人気があります。ほんのりとナッツのような芳醇な香りに、きめ細かい品の良い脂を持ちます。
デ・セボ・デ・カンポ (Jamón Ibérico de cebo de campo)
こちらは、ドングリや草などの自然産物に加え、補完飼料を与えられ、放牧で育ちます。屋外や屋根付きの農場で飼育されています。
デ・セボ (Jamón Ibérico de cebo)
補完飼料を主に与えられて育ちます。
デ・ベジョータの補完飼料仕上げとして存在した「デ・レセボ」は、2014年に規定が改定され、現在3種類による餌や飼育法により仕分けされています。
このように、希少価値のあるイベリコ豚は厳しい規定が設けられ、ランク分けされています。
スペイン産生ハムの美味しい食べ方
そのままの生ハムを食べる際は、冷たいままではなく常温にすることがポイントです。
良質な脂が口の中で溶け、風味が口いっぱいに広がります。バゲットに生ハムを挟んだスペインフードのボカディージョ(生ハムのサンドイッチ)も、上質の生ハムだからこそ味わえる美味しさです。
他には、スペインのおつまみの代表でもあるピンチョスなどのタパス料理に使用し、料理に塩気と旨味を加えます。シンプルなサラダにも加えるだけで、素材の味を堪能できる豪華な1品に仕上がります。
そのままでも噛むほどにコクと旨味が広がる生ハムは、フルーツとの相性も抜群です。甘味のあるフルーツに生ハムを乗せて頬張れば、塩気と甘味のバランスの良い組み合わせでワインが進みます。
若い熟成で比較的低脂肪のハモンにスペイン産のチーズを組み合わせたり、良質なオリーブオイルを回しかけたりすることもお薦めです。さらに、コロッケやスープなどにも刻んで加えることで、塩気と旨味・コクをプラスすることができます。良質な生ハムだからこそ、そのままでももちろん、料理にプラスするだけでも存在感を発揮してくれます。
まとめ
意外と知らない生ハムの豆知識も、知れば知るほどスペインワインが飲みたくなりますね。
チーズのように、生ハムも熟成期間や品格を合わせてワインと組み合わせると、さらに美味しさが増します。熟成期間が長く上質な生ハムに、上質なスペインの赤ワインを合わせれば、余韻までじっくりと楽しむことができます。
パーティーなどでは原木のまま購入し、ワインタイムを盛り上げることも良いですね。レストランやワイン祭などで、切り立てを頂けるチャンスがあれば、見逃さずに。生ハムの概念が変わるような味わいのスペイン産生ハムと、スペインワインを楽しんではいかがでしょうか。