赤ワインと白ワイン、見た目の色合いは大きく違いますが、どうしてこのような違いが生まれるのでしょうか?
実は品種の違いだけではなんです。
この違いが分かれば味わいの違いも理解できるかもしれません。今回はそんな赤ワインと白ワインの違いについてソムリエの解説付きで詳しくご紹介します。
解説してくれるのは、紫貴あきさん
ワイン講師 日本最大級ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の人気講師。初心者から上級者まで唸らせる質の高いレッスンが評判で、その指導実績は3500人超。その他、企業研修、メディアへの執筆・監修・取材協力、出演など幅広く活動している。 著書『ゼロからスタート! 紫貴あきのソムリエ試験1冊目の教科書』(KADOKAWA)を2024年3月28日に出版予定。
赤ワインと白ワインの違いとは?
赤ワインと白ワインの明らかな違いはブドウ品種と醸造方法にあります。この違いについて紫貴さんに教えてもらいました。
ブドウ品種の違い
紫貴さん
赤ワインと白ワインの大きな違いの一つは原料となるブドウの種類が違うことです。 赤ワインの主原料は黒ブドウ品種。果皮に赤の色素成分「アントシアニン」を含む黒ブドウを主原料とすることで、赤色のワインが仕上がります。 それに対して白ワインは、白ブドウのみならず、黒ブドウからも造ることができます。理由は、白ブドウは「果汁」だけで仕込んでおり、ブドウを収穫したら、早い段階で、果皮・種子と果汁を分けてしまうからです(これを「圧搾」といいます)。 マスカットの皮をむいても、巨峰の果皮をむいても、中からは黄色っぽい果汁を含んだ実が出てきます。それと同じで、果汁だけで仕込む白ワインは、果皮の色の影響を受けないのです。 ちなみにシャンパンも白ブドウのみならず、黒ブドウをよく原料として使います。ときには黒ブドウ100%のこともあります。
醸造方法の違い
紫貴さん
白ワインは、白/黒ブドウを収穫したら、回転するローラのようなもので両側から挟み込み、果皮を破きます(これを「破砕」といいます)。果皮が破けたブドウを容器に集め、置いておくと果汁があふれ出します。 その後、果皮・種と果汁を分けるために、圧搾機に送り込み、栓をひねると果汁だけが取り出されます(この液体と固体を分ける作業を「圧搾」といいます)。その後、この取り出した黄色果汁だけで、アルコール発酵させます。タンクの中は果汁のみです。
紫貴さん
それに対して、赤ワインは黒ブドウを収穫したら「破砕」して、容器に果皮・種子・果汁を集めますが、白ワインと違い「圧搾」を行わずに、その容器ごとアルコール発酵を始めます。 このアルコール発酵を行っているとき、ほぼ同時に、果皮や種子から、色や渋み(=タンニン)成分が抽出されるのです(これを「醸し」と呼びます)。これは、いわば茶葉から紅茶を入れるのと似ています。
このような原料と醸造方法の違いによって白ワインと赤ワインの味わいは異なります。紫貴さんにその違いを聞きました。
味わいの違い
紫貴さん
白ワインは、果汁だけで仕込むために、スッキリとした味わいをしています。赤ワインと比べて、味わいの要素が少ないからこそ、酸味が味わいのキーを握ります。酸味が高くて、シャープなら、引き締まった印象のワインに、酸味のヴォリュームが中程度で、マイルドならば、まったりとした印象になります。 その反面、赤ワインは渋みがキーとなります。ワインを仕込む途中で「醸し」を行うために、渋みを含んだワインになります。渋みが強ければ、飲みごたえのあるしっかりとした味わいに、渋みが弱ければ、しなやかな印象になります。
相性の良い料理
味わいが違えば相性の良い料理も変わってくるはず。紫貴さんに聞きました。
白ワインと相性の良い料理
紫貴さん
ブドウの果汁だけで造られる白ワインは「酸味」が味わいの印象を決めます。ここではワインの酸味を意識した相性の良い料理の見つけ方をご紹介します。 軽めの白ワインの中には、酸が高めで、爽やかに感じるものが多いものです。こういったタイプのワインには、レモンやカボスをほんの少し搾ったり、お酢を使ったりするとワインの酸味と寄り添い、相性が良くなります。カルパッチョなどがその例です。 対して酸味が穏やかでマイルドな飲み口の白ワインには、口当たりを合わせて、バターやクリームを使った料理がおすすめ。クリームパスタや鮭のムニエルが好相性です。
赤ワインと相性の良い料理
紫貴さん
果皮と種ごと仕込んで「渋み」を抽出する赤ワイン。そのため「渋み」が味わいの印象を決めます。ここでは渋みを意識した組み合わせをご紹介します。 渋みが強く、飲みごたえのある赤ワインは、料理の脂分と好相性で同時に取ると互いが和らぎます。脂肪分の多い肉(仔羊、牛)を素材としたり、クリーミーなソースがかかったりしている料理と合わせてみてください。 一方で、渋みが控えめで繊細な赤ワインには、脂肪分の少ない肉(例えば鶏肉)や赤身の魚(マグロなど)を素材とした料理がおすすめです。照り焼きや塩コショウをベースとしたシンプルな味付けのものも、ワインを圧倒しないため好相性となります。
代表的なブドウ品種について
冒頭で白ワインと赤ワインはブドウ品種が異なるとお伝えしましたが、それぞれ代表的なブドウ品種について教えてもらいました。
おすすめのワインもご紹介しますので、ワイン選びの参考にしてみてください。
ソーヴィニヨン・ブラン
紫貴さん
ハーブの香りと、軽快な飲み口が特徴のソーヴィニヨン・ブラン。2大巨頭の産地といえば、フランスのロワール地方、ニュージーランドでしょう。 特にニュージーランド産は、パッションフルーツの香りがはっきりと香ります。おすすめは、シレーニ・エステーツ。国内外のコンクールで多数の受賞歴があり。現在、日本に輸入されているニュージーランドワインの中で、輸入量No.1を誇っています(※)。
※食品産業新聞2023年3月23日号「2022年輸入銘柄別ランキング」より
セラー・セレクション・ソーヴィニヨン・ブラン
白
アロマティック&ピュア
日本で一番売れているニュージーランドワインブランド、シレーニが手掛ける人気の白ワイン。フレッシュでクリアな味わいが幅広い料理と合う1本。 詳細を見る
4.5
(238件)2023年
2,200 円
(税込)
シャルドネ
紫貴さん
ふわりと香る果物にヴァニラ、トースト、バターの香りが寄り添います。飲みごたえがしっかりあって、口当たりも滑らかです。 シャルドネの本家本元はフランスのブルゴーニュ地方ですが、大人気の品種のため世界中で育てられています。 この品種の個性を知るためにまずは試したい教科書的な1本がアメリカ・カリフォルニア州のケンダル・ジャクソンが手掛けるシャルドネです。
ヴィントナーズ・リザーヴ・シャルドネ
白
リッチ&コンプレックス
多くのラインナップを手掛けるカリフォルニア屈指のワイナリー。完熟した果実のような濃密でリッチなシャルドネ。 詳細を見る
4.4
(159件)2023年
3,520 円
(税込)
ピノ・ノワール
紫貴さん
明るい赤に、イチゴやラズベリーなどの赤系果実が香るピノ・ノワール。タンニンも少なめで、軽やか気味な飲み口が特徴です。 本家本元はフランスのブルゴーニュ地方。シャルドネ同様人気品種のため、世界中で栽培が挑戦されていますが一筋縄にいきません。そのため「The Herat Break Grape Variety(失意の品種)」とも呼ばれています。 チリの人気生産者モンテスが手掛けるモンテス・アルファ・ピノ・ノワールは2,000円台ながら上質なピノ・ノワールが堪能できます。
カベルネ・ソーヴィニヨン
紫貴さん
濃い色合い、カシスなどの黒系果実に、ときおりミントの香りがアクセントに香ります。タンニンも多く、しっかり飲みごたえがあります。 本家本元はフランスのボルドー地方ですが、世界中で育てられています。 おすすめは、エスクード・ロホ・グラン・レゼルヴァ。シャトー・ムートン・ロスチャイルドを造るバロン・フィリップ・ロスチャイルドがチリで手掛けるワインです。お財布に優しい価格で、ムートンの技術と哲学を楽しめます。
エスクード・ロホ・グラン・レゼルヴァ
赤
パワフル&ストラクチャー
まるでポイヤックとプロも評価する、バロン・フィリップ社が手掛ける高品質チリワイン。ボルドーブレンドが織りなす、濃厚で滑らかな味わい。 詳細を見る
4.3
(89件)2022年
2,860 円
(税込)
ロゼワイン、オレンジワインとは?
赤ワインと白ワインの違いが分かったところで、「ロゼワインとオレンジワインは何なのか?」という新たな疑問が生まれるかもしれません。ロゼワイン、オレンジワインの醸造法についても簡単にご説明します。
ロゼワインの醸造法はいくつかありますが、直接圧搾法と呼ばれる最もシンプルな製法は「黒ブドウで造る白ワイン」と言い換えられます。黒ブドウを圧搾する際に、果皮から色素が移りピンク色になった果汁を、白ワインと同様に醸造します。
一方、オレンジワインは「白ブドウで造る赤ワイン」と言えるでしょう。ただし、白ブドウの果皮中にアントシアニンが含まれていないので、赤色にはなりません。代わりに黄色系色素が溶出することで、オレンジに近い色調になります。
まとめ
白ワインと赤ワイン、見た目の色合いが異なるだけでなく、原料や醸造方法が異なります。それぞれ味わいの違いによってピッタリな料理も変わるので、シチュエーションに合わせて楽しむことができます。
ワインの楽しみ方は多岐にわたりますが、それぞれの特性や相性を理解することで、より一層ワインの魅力を知ることができるでしょう。
文=川畑あかり