高樹齢のブドウ樹から造られるワインの魅力

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公開日 : 2021.1.15
更新日 : 2023.7.12
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ラベルに記された「Old Vine」「Vieille Vigne」。いったいどのような意味なのでしょうか。

これらの文言は、高樹齢のブドウ樹から造られたことを意味しています。そして今、古樹から造られたワインが世界的に注目されているのをご存知でしょうか。

今回は古樹ワインの魅力についてご紹介します。

目次

ブドウ樹の一生

ブドウ樹はどのような一生を歩むのでしょうか。

植樹されてから3年間は実を付けず、7年までは商業用といえるほどの量がつきません。しかしそれ以降はブドウ樹1本につけるブドウの生産量は増えていきます。

ところが20年を超えるころからは、樹の勢いが落ち着き徐々に収穫量は減っていくのです。

このことは実に人間と似ていると思います。小学校入学の7歳ぐらいまでは、なんとなく心もとないものですが、20歳に向けてどんどん体力も増していきます。

しかし残念なことに20歳を境に徐々に体力が落ちていくものです。

高樹齢のブドウ樹の利点

量を稼ぎたいはずの栽培家にとっては、20年を過ぎたブドウ樹というのは、一見マイナスに思えますが、ワインの質という観点ではプラスに働きます。

なぜならブドウはミステリーに富んだ植物で、豊作にしてしまうと一般的に品質が落ち、その反面、生産量を抑える(これを低収量と呼びます)と品質が高まることが経験的にわかっているからです。

そのため、20年を過ぎたブドウ樹は、人間があえて手を加えなくても、自然と低収量になるため良いブドウができ、ひいては高品質なワインができるのです。

「古樹のワインは決してオーバーパワーにならずバランスの取れたものが多い」と評価する世界的テイスターも多数います。

一般的に量と質のバランスが良いとされているのが35年ほどです。

人間も確かに20歳を超えれば肉体的には徐々に衰えが出てきますが、年を重ねるごとに内面は向上していき、35歳ぐらいになると「社会人としても良い時期だ」なんて言われますね。

樹齢の高いブドウ樹は、地中深く根を伸ばし、水源まで達していることが多いため、安定的に水分を吸い上げることができます。そういった点で、天候に左右されず、ブドウを産出することができるというアドバンテージが古樹にはあるのです。

そのため、高品質ワインを目指す生産者は、量(つまり経済性)を犠牲にしでも、古樹を畑に残そうとします。一般的にブドウ樹の寿命は50年と言われていますが、丁寧に管理すれば100年以上も生き続けることができるのです。

フィロキセラと古樹の関係

19世紀後半、ヨーロッパ中がフィロキセラの被害に遭いました。フィロキセラはブドウ樹の根に寄生する小さなアブラ虫です。一度でも被害に遭えば、どんな手立てを打っても樹は助からず、枯死してしまいます。

このときヨーロッパのほとんどの畑が植え替えを余儀なくされました。しかし、なかにはフィロキセラの被害に遭わなかった産地があることをご存知でしょうか。

たとえば、イタリアのサルディーニャ島南部、ポルトガルのコラーレス、ギリシャのサントリーニ島などがそうです。

ボランジェ ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズというシャンパンもフィロキセラ害にあっていない古樹から造られ、高額で取り扱われています。

これらに共通することは「砂質土壌」であるということ。砂地ではフィロキセラは生息することができず、奇跡的に古樹として残されているのです。

上述の例外を除けば、ヨーロッパのほとんどが比較的樹齢の若い樹からワインが産出されていることになります。しかしそれが味わいに影響を与えているかどうかというのは、すぐに判断できるものではありません。

高樹齢のブドウ樹が植わる産地

ヨーロッパ以外の国々でも、古樹が残されている産地があるのでご紹介します。

南アフリカ

世界で唯一、古樹に関する法的な認証制度を設けているのが南アフリカです。

古樹研究者ロサ・クルーガー女史が立ち上げた「Old Vine Project(以下OVP)」では、OVPに所属しているメンバーで、樹齢35年超えのブドウから造られたワインには、ラベルにブドウ樹の植樹年を記したシールが貼れることができるようになったのです。

このことは古樹を抱えるワイン産地に大きなインパクトを与えることとなりました。

南米(アルゼンチン、チリ)

アルゼンチンもノン・フィロキセラで樹齢の高い樹が残されています。理由はナチュラル灌漑といって水田のような方法で水を引いた場所が多数あり、水中ではフィロキセラが生息することができないからです。

隣のチリに関しては、いまだフィロキセラの被害がみられない稀有な産地です。産地がアンデス山脈や太平洋などに囲まれて隔離されているからだという説もあれば、アルゼンチン同様ナチュラル灌漑を採用している場所が多いからだという説もあります。

理由ははっきりしませんが、いずれにしてもフィロキセラに遭ったことがないため古樹がたくさん残されていることは事実です。

オーストラリア(南オーストラリア州・バロッサ)

バロッサは「楽園」といえる程、シラーズの古樹が至る場所に残されています。中には170年超えのものも見つけられるでしょう。もちろんフィロキセラ禍に遭わなかったことが最大の理由です。

バロッサがフィロキセラから免れることができた理由は主に二つあります。

一つは、この地は乾燥が激しく、フィロキセラが蔓延し得なかったこと、二つ目にオーストラリアは独自の動植物を保護するために検疫などが厳しく、州と州を車でまたぐときに厳しいチェックが入るからだといわれています。

古樹に関してはっきりとした規定がない中、世界に先駆け明確な指標を打ち出したのもバロッサです。

生産者が中心となって「バロッサ古樹憲章(The Barossa Old Vine Charter)」を発表したのは2007年のことでした。

ワインのエチケットに下記のような表示があるので、私たちがワインを購入する際にわかりやすく、大きなアドバンテージになりそうです。

樹齢表記
35年~Old Vine
70年~Survivor Vine
100年~Centenarian Vine
150年~Ancestor Vine

まとめ

19世紀後半のフィロキセラの被害を逃れ、こうして今も生存するブドウ樹は「歴史の証人」ということもできますし、その土地に長らく住み、ブドウ樹を守ってきた人々のアイデンティティと称賛することもできるでしょう。

グラスを傾けるときにそれらの思いにふければ一層ワインがおいしく感じるかもしれません。

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