ワインに触れる機会が増えると、「格付け」という言葉を耳にするようになりますよね。
「格が高い」ワインやそうではないワインがあるようだけど、それが一体何なのかよくわからない……そんな風に思われたことはないでしょうか?
ヨーロッパのいわゆる「旧世界」の格付けは、「新世界」のそれよりもずっと難解であることが指摘されてきており、近年消費者にわかりやすいように改定されつつあります。 それでもやっぱり難しく、ワインボトルのラベルとにらめっこしてしまうという人は多いようです。
というわけで今回は、世界随一のワイン生産地であるフランスの、ワイン法によって定められている大きな分類での格付けと、主要産地内での格付けについて簡単にご紹介したいと思います。
原産地呼称のAOPから自由なテーブルワインまで
フランスには国で定められたワイン法があり、2008年までは「AOC法」、2009年からは「AOP法」と呼ばれています。
これによる品質分類は「AOP」(Appellation D’origine Protégée:原産地名称保護)のワインをヒエラルキーの頂点に、「IGP」(indication géograghique protégée)、そして「Vin de Table」という区分があります。
AOPに分類されるワインは、ワイン法によってブドウの生産地や醸造所、生産法、使用品種などが決められている他、官能審査にクリアしているという、いわばワイン界のエリートたちです。日本に輸入されるほとんどがこのワインで、上は100万円を超えるものまで存在します。ラベルへの表記は「Appellation 産地名 Protégée(又はContrôlée)」となり、産地名の部分には例えば「Romanée-Conti(畑名)」「Vosne-Romanée(村名)」「Bourgogne(地方名)」などが入ります。
「IGP」は生産地域や使用品種などが細かく定められていますが、畑まで細分化されている「AOP」よりも保護している区分けが広く規定も緩やかです。そして「Vin de Table」は、気軽なテーブルワインの区分で生産地域の表示がないために自由に造られています。
この格付けはあくまで「質の良さのランク」ではなく規定をクリアしたワインほど上級の格付けとなりますが、結果的に「AOP」のワインほど質が良いものであることが多くなっています。ただし、生産者の意向によって規定をクリアしていない品種を使用してワインを生産し、本来ならば上級ワインに勝るとも劣らない品質であるのに最下級の「Vin de Table」で販売しているという場合もあります。
ボルドーの格付けとは?
国全体での格付けは3つに分かれているだけなので覚えやすいですが、地域ごとに細分化された格付けはどのようになっているのでしょうか?
銘醸地であるボルドー地方の場合は、ワインを生産するシャトーごとに格が当てられています。
中でもガロンヌ川西に位置するメドック地区では61のシャトー(シャトー・オー・ブリオンのみグラーヴ地区)は1級から5級に分けられており、さらにその下にはクリュ・ブルジョワ級があります。ちなみに、かつてクリュ・ブルジョワ級のトップだった9シャトーは他のシャトーと差別化するために認証を拒否しています。
1級は「ボルドー5大シャトー」と呼ばれるシャトー・ラ・トゥール、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・マルゴー、シャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・オー・ブリオンの5つで、トップシャトーに相応しい素晴らしいワインを生産しています。2級、3級はそれぞれ14シャトー、4級は10シャトー、5級は18シャトーとなっています。
この等級はフランスのワイン法が制定された1935年よりも80年も遡った1855年、パリ万国博覧会にてナポレオン3世の命令により、ボルドー市商工会議所によって制定されました。ワインの価格が高い順に1級から5級の格が付けられ、シャトー・ムートンは当時2級に格付けされていました。1973年にやっと1級に昇格したことがワインファンの中では驚きと共によく語られています。
また、2級以下に格付けされながらも、生産者の努力により現在では実際の等級よりも高い評価を得ているシャトーもあります。これは1級に継ぐ存在として「スーパー・セカンド」と呼ばれており、シャトー・コス・デストゥネル、シャトー・ピション・ロングヴィル。コンテス・ド・ラランド、シャトー・デュクリュ・ボーカイユ、シャトー・レオヴィル・ラスカーズ(以上2級シャトー)、シャトー・パルメ(3級シャトー)、シャトー・ランシュ・バージュ(5級シャトー)などがこれにあたります。ただしこの呼名はフランスでは一般的ではなく、アメリカで使われるようになった影響から、日本でも好んで使われています。
ブルゴーニュの格付けとは?
ボルドーと共に銘醸地とされるブルゴーニュでは、繊細で滑らかなピノ・ノワールを使用した赤ワインや、シャルドネを使った気品ある白ワインなどを生産しています。 そんなブルゴーニュの格付けは、シャトーごとに等級が与えられたボルドーに比べて「AOP」の生産地名が狭い範囲であるほど上級となっています。
最上級は「特級畑」(Les Appellations Grans Crus)で、39の畑(コート・ドールが32、シャブリが7。AOCは33)が認定されています。これは畑名が、そのままラベルにある「AOC」表記の「O」の部分となり、ラベルのどこかに「Gran Cru」の表記があることが多いのです。その次は「1級畑」(Les Appellations Premiers Crus)で、これは「O」の部分が「村名+Premier Cru(1er Cre)+畑名」となります。
そして、その下の区分になると範囲が広がって「村名」(Les Appellations Communales)となり、「O」の部分にはそれぞれの村名が入ります。この区分内で畑名が記載される場合もあり、その際は「村名+畑名」となります。最後は「地方名」(Les Appellations Régionales)の区分で「Bourgogne」などの地方名や地区名が生産地名に記載されます。
畑名も村名も何も覚えていない状態だと、「1級畑」のワインが村名に加えて1級であることが絶対に記載されているので見分けやすくなっています。
まとめ
EUは基本的に「AOP」を頂点としたワイン法による品質分類がされていますが、例えばドイツの場合は最上級である「プレディカーツワイン」内では果汁の糖度が高いほど上位になるという、少し変わった格付けがされています。
またスペインでは、上質な畑から造られたワインであることが畑の名前を知らなくても消費者に分かりやすくなっています。フランスでは地区ごとで畑に付与されていた格が、既にAOPの分類で存在しているからです。(例:V.P.、Vino de Paraje Calificadoなど)
格付けは、ワインの質や生産地の質を可視化したものとは断言できませんが、概ねそのようなものだと言っても過言ではありません。
まだまだ消費者の視点だとわかりづらいかもしれませんが、自分が飲んだワインがどの程度の格のものなのかを把握しておくと、今後のワイン選びの参考にとても役立つと思いますよ。