ドイツ版5大シャトー「シュロス・フォルラーツ」生産者来日イベント・レポート!

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レポート
公開日 : 2018.3.14
更新日 : 2019.3.7
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シャトーの横に桜が咲いている
目次

世界最古のワイナリー?

みなさん、現存する世界最古のワイナリーはどの国にあると思いますか?ほとんどの方がフランスやイタリア、ワインに詳しい方ならグルジアなどをご想像されたかも知れません。しかし、その証拠を示せるのはドイツのワイナリー「シュロス・フォルラーツ」です。
ワイナリーには、1211年のインヴォイス(明細書)が残っており、その歴史を書類にて証明ができる世界最古のワイナリーです。
今回、この「シュロス・フォルラーツ」から、ワインメーカー兼マネージング・ダイレクターのロヴァルト・ヘップ氏が来日し、東京駅グランスタ丸の内店でイベントが開催されました。その内容をお届けします。
イベントの看板

シュロス・フォルラーツとは。

シュロスは日本語で「城」という意味で、フォルラーツは創設者の名前をあらわしています。
つまり、フランスであればシャトー・フォルラーツにあたります。ワイナリーはドイツ最高の銘醸地 ※ラインガウ地方に位置し、オルツタイルラーゲと呼ばれるドイツでも特別な畑です。
一般的にドイツワインは、ブドウの生産地である「村名」と「畑名」がラベルに表記されますが、特に優れた銘醸畑はオルツタイラーゲ(特別単一畑)として村名を省略し、畑名だけをラベルに表記することが許されています。このオルツタイルラーゲは、なんとドイツ国内でたった5つしかない、まさにドイツ版5大シャトーなのです。
※ラインガウ地方は、18世紀にはフランス・ボルドーの1級シャトーよりも高い値段で取引されていたほどの歴史ある高級ワイン産地です。同じくドイツの2大銘醸地と讃えられるモーゼル地方と比較すると、北にあるタウヌス山の裾に広がる真南向き斜面に畑があり、山によって冷たい北風や雨から守られる為、成熟度が高いブドウからふくよかな貴婦人のようなスタイルのワインが造られます。
今回はそんな「シュロス・フォルラーツ」からワインメーカー兼マネージング・ダイレクターのロヴァルト・ヘップ氏に5種類のワインをテイスティングしながらお話しを伺いました。
シュロスフォルラーツのワイン5種類
テイスティングワインはこちら

2015 RIESLING SEKT BRUT

リースリング・ゼクト・ブリュット

2016 RHEINGAU RIESLING TROCKEN KABINETT

ラインガウ・リースリング・トロッケン・カビネット

2015 RHEINGAU RIESLING GROSSES GEWACHS SCHLOSSBERG

ラインガウ・リースリング・グローセス・ゲヴェックス・シュロスベルグ

2015 RHEINGAU RIESLING SPATLESE

ラインガウ・リースリング・シュペトレーゼ

2003 RIESLING BEERENAUSLESE

リースリング・ベーレンアウスレーゼ

ドイツ人はスパークリングワインが大好き!

お話をしているオヴァルトヘップ氏
ロヴァルト・ヘップ氏
ウェルカムドリンクには2015 リースリング・ゼクト・ブリュットが振る舞われました。シュロス・フォルラーツでは1861年からこのワインを造っていますが、2015年ヴィンテージは当イベントで初リリースとなった最新年!このワインを飲みながらヘップ氏が語ってくれたのはドイツのスパークリングワイン事情でした。
少々意外かもしれませんが、世界で最もスパークリングワインを消費しているのはドイツです。ワイン全般の消費量ではアメリカ・フランス・イタリアに次いで4位なので、かなりの割合でスパークリングワインが飲まれています。
これはドイツ人が飲むワインの5本に1本はスパークリングワインということになる計算で、さらにそのうち60%のボトルが午前中に女性によって消費されているデータがあるそうです。
また、ヘップ氏は「恐らく老婦人がランチに飲み、リウマチなどの痛みを緩和するのに役立っているのだろう」と、テイスティングの最中にジョークも交えながら、楽しくワインの解説をしてくれました。
2015 リースリング・ゼクト・ブリュットは、青リンゴやレモン、食パン、ヨードを感じるフレッシュな香り。繊細な泡立ちに、口を潤す溌剌とした酸味と余韻のほろ苦さが魅力的なワインです。
飲み疲れしない軽やかなスタイルは、まさにランチやアペリティフにぴったりで、ヘップ氏のおすすめは出汁を使った和食とのマリアージュだそうです。

まさにドイツワインの歴史を築いたワイナリー!

続いて提供されたのは「2016 ラインガウ・リースリング・トロッケン・カビネット」と「2015 ラインガウ・リースリング・グローセス・ゲヴェックス・シュロスベルグ」。
ドイツワインのラベル表記ですが、上記のワインで言う「カビネット」はドイツワイン法の最高位プレディカーツヴァインという分類の中での、法的格付けを表しています。
実は、この「カビネット」という名称のワインを、今から約300年前の1716年に初めて作ったのはシュロス・フォルラーツです。そこから品質等級を表す言葉として認知され、現在のドイツワイン法に取り入れられました。これは1855年の有名なボルドー・メドック格付けに先立つ、世界で最も古い格付けだと考えられます。
2016 ラインガウ・リースリング・トロッケン・カビネットは、 白い花や白桃、リンゴ、貝殻のフローラルなアロマ。スリムな肉付きで硬質な酸があり、塩味を感じるミネラリーな余韻。10月初めに収穫した樹齢15年前後の若樹のブドウを使用。
2016年は冷涼なヴィンテージで、同じドイツのモーゼル地方の生産者は多雨と菌病に悩まされたようですが、ラインガウはその恵まれた地勢のおかげで影響は少なかったようです。そしてなんと、シュロス・フォルラーツでは収穫期付近は朝4時から畑仕事をする徹底した管理をしている為、全く問題なかったそうです。
シュロスベルグの広大な畑
シュロスベルグの畑
続く、2015 ラインガウ・リースリング・グローセス・ゲヴェックス・シュロスベルグはワイナリーを代表する辛口ワインです。
「グローセス・ゲヴェックス」というのはドイツ高品質ワイン生産者協会が認めている最高格付けで、グローセス・ラーゲ(=偉大な畑=グラン・クリュ)として認められている畑のワインだけが名乗ることを許されています。シュロス・フォルラーツの畑は、全てまとまった地続きのため、上記のカビネットも同じ畑と考えることができますが、そのうちの指定された1区画の古樹からのみ「シュロスベルグ」が造られています。
花や黄桃、アプリコットにスパイス、石のようなミネラルを感じる香り。段違いの果実の凝縮感があり、トロりとした口当たりと共に横に広がります。果実味、酸味、苦味がバランスをとる複雑な味わいで、フルボディのリースリング。
樹齢40年前後の古樹のブドウをカビネットより1ヵ月以上遅摘み。さらにブドウの房の中でも成熟度の高い上半分を残し、下半分を落とすグリーン・ハーヴェストを行っており、凝縮感を高めています。醸造においてはスキンコンタクトをすることにより最大限のアロマと、わずかなフェノール類を引き出しワインに複雑味を与えています。
ちなみに今回のイベントでは語られませんでしたが、ドイツワインというと昔は甘口ワインが大半でした。それを現代的な辛口ワイン造りに牽引したのもシュロス・フォルラーツで、まさにドイツワインの歴史を造ってきた生産者と言えるでしょう。

伝統的な甘口ワイン

白ワインが注がれたグラスがいくつか並んでいる
今や辛口ワインが主流、とはいってもドイツの伝統的なワインといえばリースリングの高い酸味を生かした芸術的なバランスの甘口ワインです。最後の2本は、2015 ラインガウ・リースリング・シュペトレーゼと2003 リースリング・ベーレンアウスレーゼが提供されました。
「シュペトレーゼ」は日本語にすると「遅摘み」を意味し、前述の「カビネット」のワンランク上の格付けになります。その名の通り、カビネットより2週間以上収穫を遅らせることで糖度を高めたブドウから造られる甘口ワインです。
ナチュラルな甘味と酸味のバランスがとても心地良く、ワインだけでも楽しめますが、スパイシーな食事に合わせてもいいでしょう。ワインスペクテーターの年間TOP100ワインに7年間で4回もランクインするほどで、消費者からの評判もよく「シュペトレーゼだけ造ればいいのに。」と言われることもしばしばあるそうです。
しかし、この遅摘みワインは、ヘップ氏曰く「これだけ造っていたらワイナリーが潰れてしまう」というほどの非常に高いリスクを負って造っているワインだそうです。
2週間収穫を遅らせるということは、それだけ寒い時期に収穫がずれ込むことを意味し、霜害や雹害のリスクを高めてしまいます。ワイナリーではそのリスクを分散させる意味でも収穫期の違う等級ワインを造っているのです。
甘口と言っても、高い酸味があるのでベタつくような甘味は感じません。また、カビネットとほとんど値段が変わらないという良心価格です。ぜひ一度は試して頂きたいシュロス・フォルラーツの名品です。
そして、イベントのトリを飾るのは2003 リースリング・ベーレンアウスレーゼ。こちらは「粒選り摘み」という意味の等級になります。つまり、このワインはブドウを房で摘むのではなく、1粒単位で熟したブドウを選び摘みとる、非常に手間のかかる手法で造られていることを意味します。
2003 リースリング・ベーレンアウスレーゼは、落ち着いた黄金色で、ドライアプリコットやサルタナ、甘いスパイス、蜂蜜、切りたてのマッシュルームの香り。酸味は穏やかで、ラインガウらしい濃密で官能的な果実味を感じる長い余韻が続きます。
微笑みながらお話をするヘップ氏
ヘップ氏は、ヨーロッパでも有名なワイン漫画「神の雫」の作者、亜樹直氏とディナーをする機会があり、その際には、この「2003 リースリング・ベーレンアウスレーゼ」を持ち込んだそうです。
その理由は「神の雫はドイツでは『god tropfchen(神の雫) 』として知られていますが、極甘口のベーレン・アウスレーゼは『go”l”d tropfchen』(黄金の雫)だからね。」と陽気に話していました。

まとめ

ドイツの名門ワイナリー「シュロス・フォルラーツ」は、所有する60haの畑全てにリースリングが植えられている、リースリングに特化したワイナリーです。
しかし、同じリースリングでも、本日テイスティングした5種類のように全て違うスタイルのワインが造られています。それは、ワリナリーがリースリングから造られるワインの多様性や、テロワールの表現力を信じているからだそうです。
最後にヘップ氏は「私の仕事は、美味しいワインを造ること。ここからはみなさんの仕事です。シチュエーションに合わせて様々なスタイルのリースリングを選んでください。」と締めくくりました。
ロヴァルト・ヘップ氏、本当にありがとうございました! とてもお話し上手で、会場も盛り上がった素晴らしいイベントでした。
 
シュロスフォルラーツのページ
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