奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

ワインの香りの表現において、「花の香り」はフルーツに次いで、よく使われます。カテゴリーとしては第一アロマ、ブドウ品種由来の香りです。つまり、なんの花なのかはブドウ品種により違ってきます。もちろん、花の香りが あまりしないブドウ品種もあります。 この花の香りが、はっきりしているワインを「フローラル」と表現するのです。 どんな花が表現に用いられるかというと、ジャスミン、スイカズラ、ライラック、アカシア、バラ(赤、白)、スミレ、牡丹、ゼラニウム、ダリア…。
テイスティングコメントはフランス語で発展した関係もあり、フランスによくある花ですので、耳慣れないものが多く、違和感を持たれる方も多いと思います。 私も初めて先輩のコメントを聞いたときはショッキングで、それ以来、花屋さんを通りかかると店員さんの目を盗んでは、嗅いでいました(笑)。
以前、「カシスのつぼみ」についてご紹介した時にも言いましたが、テイスティングコメントに使われる「モノ」が、実際に分かるかどうかはあまり問題ではありません。 その「モノ」はブドウの個性や成熟度合い、ワインの熟成感を表す「単位」として考えればよいのです。 例えば白ワインのコメントでは、その香りの強さにより、ジャスミン→スイカズラ→ライラック→アカシア→バラ→ユリと表現します。つまり、「花の香りの強さは軽いけど感じるな」となればジャスミン、「はっきり感じる」でライラックやアカシア、「とても強く、個性的」でバラやユリ、となるわけです。
花の香りの表現で、みなさんが「えっ!?」と思われるのはゼラニウムでしょうね。 ソムリエの仲間に、「ゼラニウムってどこで嗅ぐことができるんですか?」と聞かれたこともあるほどですから。 調べてみると、育てやすく、丈夫なので結構出回っているようです。日本ではピンクのものが多いそうですが、テイスティングコメントのゼラニウムは濃い赤のものをさします。
私はゼラニウムというとブルゴーニュを想い起こします。初めて読んだワインの本で「シャンボール・ミュジニイ村は、小さく、魅力的な街並み、窓には愛らしいゼラニウムが飾られている」という下りを気に入っていました。 実際にブルゴーニュのあるドメーヌを訪ねたとき、軒先にゼラニウムをみつけて、「これだ!」と香りを嗅ぎました(笑)。 そこのマダムに、ブルゴーニュではポピュラーな花で、虫除けにもなるので飾っている、と聞きました。
ショレイ・レ・ボーヌ 2009 トロ・ボーは、明るく、鮮やかなルビー色。香りは率直で自然な感じがします。 潰れたブラックチェリー、ゼラニウムの香りが際立ちます。丁子やバニラなどのスパイスもあり、香り豊かですが、調和がとれていて、やはり自然さが特徴です。 味わいはなめらかで、キメ細かな甘みと酸味のバランスが素晴らしく、ビロードのような触感の渋みが大変心地よく、長い余韻をつくります。 秀逸なブルゴーニュのなめらかさと上品さを持ちつつ、ショレイらしい素朴さを残しています。
「ゼラニウム」を感じるワイン
ショレイ・レ・ボーヌ/ トロ・ボー(フランス ブルゴーニュ)
5,000 円 (5,400 円 税込)
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