11月は「ボジョレー・ヌーヴォー」をはじめ、ドイツの「ディア・ノイエ」、オーストリアの「ホイリゲ」など、世界中のワイン産地で新酒が解禁されていきます。
そんな中、日本にも解禁日が指定されている新酒があります。「山梨ヌーボー」です。今回は、そんな山梨ヌーボーについて、ご紹介していきます。
山梨ヌーボーとは?
山梨ヌーボーとは、山梨県内のワイン醸造業者でつくる組合「山梨県ワイン酒造組合」によって設けられた、県内産新酒のことを指します。
県内産ワインのブランド化と販路開拓を図る取り組みの一環で、2008年から11月3日が解禁日と定められました。
ちなみに、山梨県内で収穫、醸造された甲州とマスカット・ベーリーAの新酒ワインのみが「山梨ヌーボー」と呼ばれます。
山梨ヌーボーのはじまり
山梨ヌーボーの解禁日は2008年に定められた自主規制の一つですが、山梨県内では以前から新酒は製造されており、新酒まつりも行われていました。
昭和61年に行われた「山梨新酒祭り」が、初開催となりますが、山梨県ワイン酒造組合(当時は、山梨県果実酒造組合)により、甲府市内にある岡島百貨店前にて開催されました。
その後、平成3年には甲府市内の小瀬スポーツ公園、東京都日比谷公園での開催となり、甲州とマスカット・ベーリーAで造られた新酒が振る舞われました。
その後、さらに山梨県内産新酒の認知度、販路拡大を広げるために前述した「山梨ヌーボー」の解禁日を制定。現在では「山梨ヌーボーまつり」とイベント名を変え、開催されています。
山梨県にとって重要な2品種
山梨ヌーボーを名乗ることができるのは、白ブドウ品種の甲州と黒ブドウ品種のマスカット・ベーリーAのみとされています。
甲州とマスカット・ベーリーAは日本の重要な固有品種であり、山梨県内で最も多く栽培・ワイン醸造に使用されている品種です。
およそ140年前からワイン醸造が行われている山梨県ですが、甲州ブドウ栽培は1,000年以上の歴史があると言われます。
また、マスカット・ベーリーAは、岩の原葡萄園の創設者である川上善兵衛氏によって、1927年に開発された黒ブドウ品種ですが、山梨県内で最も多く仕込まれている黒ブドウ品種であり、日本を代表する赤ワインを造る重要品種です。
国税庁の国内製造ワインの概況(平成28年度調査分)の原料用国産生ぶどうの概況(※)を見ても、山梨県の品種別数量は甲州が半数を占めており、次いでマスカット・ベーリーAが約30%使用されています。
近年、国際品種で製造される山梨県内産ワインが注目されていますが、数量の割合で見ると、メルロは全体の約2%、カベルネ・ソーヴィニョンは約1%弱、シャルドネは約1%弱ということで、県内を代表する品種とは言いにくい状況です。
山梨県および山梨県ワイン酒造組合が言う、県産ワインのブランド化と販路開拓を促進するための品種としては、甲州とマスカット・ベーリーAが最も適していると考えられます。
※国内製造ワインの概況(平成28年度調査分)https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/kajitsu/kajitsuh28.htm
世界に誇るワインに向けて
山梨ヌーボーは、ボジョレー・ヌーヴォーなどと同様、フレッシュで果実の香味が楽しめるワインを全国の人たちに楽しんでほしいという目的もあり、販売・イベントなどが行われています。
その一方で、甲州とマスカット・ベーリーAを世界へ発信していきたい、という力強い思いも込められていると言います。2010年には、甲州が、O.I.V.(Office International de la vigne et du vin 国際ブドウ・ワイン機構)に品種登録。2013年には、マスカット・ベーリーAも品種登録されました。
また、「KOJ(Koshu of Japan)」の名の下で甲州ワインEU輸出プロジェクトを行ったり、近年国際的なコンクールで名誉ある賞を受賞する甲州ワインが登場したりするなど、一歩一歩ではありますが、世界的にも認知度が高まり出しています。
一人でも多く、山梨県が造る甲州ワイン、マスカット・ベーリーAのワインを知ってほしい、楽しんでほしい。そして、日本全体で山梨県産ワインを世界に発信していきたい。山梨ヌーボーをきっかけに、甲州、マスカット・ベーリーAのワインの魅力を知ってほしい、という思いも込められています。
山梨ヌーボーまつりで楽しもう
山梨ヌーボーの解禁日を皮切りに、11月には多くのイベントが開催されます。
大小様々なイベントがありますが、山梨県内の多様なワイナリーが集まる大きなイベントが、先ほども紹介した「山梨ヌーボーまつり」です。
今年は解禁日の11月3日(土)に東京日比谷公園でイベントを開催し、その後県民の日記念行事として10日(土)、11日(日)に甲府市の小瀬スポーツ公園で開催されます。
県内から37ものワイナリーが集結し、60銘柄以上の新酒ワインを楽しむことができます。会場では、新酒の試飲だけでなく、気に入ったワインをその場で購入することもできるので、吟味しながら飲み比べしてみても楽しいでしょう。