近年、栽培面積が増えている?!カベルネ・フランの魅力

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公開日 : 2018.11.20
更新日 : 2023.1.20
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赤ワイングラス

カベルネ・ソーヴィニヨンにブレンドされるブドウ品種という脇役のイメージが強いカベルネ・フラン。

しかし、最近は世界のワイン産地でカベルネ・フランの栽培面積が増え、カベルネ・フランから造られるワインの人気が高まっています。では、カベルネ・フランとは一体どんなブドウなのでしょうか?詳しく紹介致します。

カベルネ・フランの一覧を見る

目次

カベルネ・フランとは?

カベルネフランブドウ

カベルネ・フランは赤ワインの原料となる果皮の黒いブドウで、カベルネ・ソーヴィニヨンの交配親(原種)です。房は小さく、青みを帯びた黒い果粒で、ブドウの外見はカベルネ・ソーヴィニヨンによく似ています。

しかし、カベルネ・ソーヴィニヨンに比べるとブドウの発芽、成熟ともに1週間程度早く、涼しい環境下でも完熟させることが容易です。

一般的には、ボルドーの赤ワインに代表されるように、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロのワインにブレンドする品種として栽培されていますが、カベルネ・フラン主体もしくは単独で造られるワインもあります。

カベルネ・フランの主な産地

カベルネ・フランは世界中のワイン産地で栽培されている国際品種ですが、主にフランスで栽培されています。主要な産地を紹介致します。 

ボルドー(フランス)

フランスの銘醸地であるボルドー地方左岸のメドックやグラーブ地区では、代表的なブドウ畑で1~2割程度カベルネ・フランが栽培されており、常にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロとブレンドされています。

これは、ワインにカベルネ・フランのフレーバーを与えるためというより、悪天候の影響を受けやすいカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロに対する保険のような意味合いが強いと考えられます。

一方、右岸のサン・テミリオンやポムロールでは、カベルネ・フランは特に湿った冷涼な土地で広く栽培されています。右岸の赤ワインはメルロを主体に造られますが、メルロとのブレンドに骨格を与える品種を選ぶ際に、晩熟でリスクの高いカベルネ・ソーヴィニヨンではなくカベルネ・フランを選んでいるのです。

以上のことから、カベルネ・フランはボルドーの赤ワインの原料品種としての存在感はやや薄いですが、カベルネ・フランを主体としたワインも少し造られています。

サン・テミリオンの最高格付けワイン「シャトー・シュバル・ブラン」は、メルロと同程度の割合でカベルネ・フランをブレンド(年によってブレンド比率は異なりますが全体の約50%前後)して造られており、長期熟成可能な素晴らしいワインです。

ロワール(フランス)

ロワールの畑

フランス中央部を流れ大西洋に注ぐ全長1000km以上に及ぶロワール川流域のワイン産地で、最も多く栽培されている黒ブドウがカベルネ・フランです.アンジェ市の周辺からロワール川上流に広がるアンジュ地区や、トゥール市を中心とするトゥーレーヌ地区で多く栽培されており、この地の「シノン」や「ブルグイユ」といった赤ワイン(ロゼワインも有り)はカベルネ・フラン90〜100%で造られます。

北緯47度前後と、ワイン産地としては冷涼な北の地域にあるため、全体的にアロマが豊かで軽やかな、若いうちに飲むタイプのワインとなります。

なお、ロワールではカベルネ・フランのことを「ブルトン」と呼ぶことがあります。

北イタリア

イタリアにおけるカベルネ・フランの栽培は、北イタリアのヴェネト州、トレンティーノ・アルト・アディジェ州、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州に広がっており、主にテーブルワインが造られています。

トスカーナ(イタリア)

トスカーナの畑

カベルネ・フランの大きな産地ではありませんが、カベルネ・フランを主体にした高品質なワインがいくつか造られています。スーパータスカンと呼ばれる国際品種を使ったワインで一躍有名になった産地ボルゲリでは、ピエモンテの生産者でイタリアワインの帝王とも呼ばれるガヤが、カベルネ・フラン主体の赤ワイン「マガーリ」を造っており、世界的にも高い評価を得ています。

ヨーロッパ以外では、アメリカのニューヨーク州ロング・アイランドやヴァージニア州でカベルネ・フランの栽培に成功しています。

カベルネ・フランのワインの特徴

カベルネ・フランから造られるワインは、概ねカベルネ・ソーヴィニヨンから造られるワインよりも色調が薄く、タンニンも少ないのが特徴です。そのため、カベルネ・ソーヴィニヨンのワインより幾分早く熟成します。

先述した「シャトー・シュバル・ブラン」のようなボルドーの上級ワインはさておき、一般的なカベルネ・フランのワインは、中程度のボディで木苺やすみれの花のような可憐な香りがし、口当たりが滑らかで程よい酸味のある上品な味わいです。

なお、カベルネ・フランのワインによくある独特の青い草やピーマンのような香りは、ブドウがしっかりと熟さなかった寒い年に造られたワインによく感じられます。それほどカベルネ・フランは原料ブドウそのものの味わいがワインに反映しやすい、大変デリケートなブドウ品種なのです。

カベルネ・フランのワインと料理

ワインとハム

カベルネ・フラン主体もしくは100%で造られたワインは、脂身の少ない赤身の肉料理やハム、ハーブを効かせたクセのないパテ等とよく合います。また、家庭でも簡単にできるチンジャオロースーのような野菜と肉の炒め物にもぴったりです。意外なところでは、生姜や香菜を使ったベトナム料理や、ちょっとスパイシーなタイ料理にもよく合うのでぜひお試し下さい。

果実味もあり、酸味と渋みのバランスが良いミディアムボディのカベルネ・フランの赤ワインは、濃厚な肉料理よりも比較的さっぱりとした味付けの肉料理と合わせると良いでしょう。

おすすめのカベルネ・フランのワイン

最後に、カベルネ・フランのおすすめワインをご紹介します。

先ほど少しだけご紹介した、イタリアの造り手ガヤが手掛ける赤ワイン「マガーリ」です。

以前はメルロ品種を主体に造られていましたが、2015年ヴィンテージからカベルネ・フラン主体のブレンドに生まれ変わりました。

しっかりとした骨格に加え、カベルネ・フランらしい酸味やまろやかさも兼ね備えたエレガントな味わいです。

まとめ

近年、世界中のワイン産地でカベルネ・フランの栽培面積が増えている理由の一つに、アメリカ等ワイン消費国の食生活の変化が挙げられます。

健康志向で人々がボリュームのある肉料理を控えたり、オーガニックの食材を使用したシンプルな料理を好む傾向が高まったり、食事に合わせるワインもパワフルさより、飲み心地の良さやエレガントさが求められるようになってきたからです。そこで、改めてカベルネ・フランが注目されているというわけです。

最近は主要産地以外でも質の高いカベルネ・フランのワインが生産されるようになってきていますので、まだ飲んだことのない新しいカベルネ・フランのワインを探してみてはいかがでしょうか?

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2018     ・ワイン用葡萄ガイド / ジャンシス・ロビンソン(ウォンズ パブリシング リミテッド)

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