衣類やカーペットにワインをこぼしてしまった場合、その「染み」を落とすのは簡単ではありません。
ワインを気軽に楽しめるようになってきた今、ワイン初心者の方はもちろん、愛好家の方もワインの正しい「染み抜き」の方法を知っておく必要があるでしょう。
ここでは、ワインの染み抜きについて解説していきます。
動画で見る ワインの汚れを落とす染み抜きの方法
ワインの染みとは?
一般的に、ワインの染みと言われているのは「赤ワインの染み」であることがほとんどです。
染みには「タンパク系の汚れ」と「タンニン系の汚れ」の2種類がありますが、ワインの場合は、「タンニン系の汚れ」に分類されています。
タンニン系の汚れは、紅茶やビール、お茶などの汚れも含まれていますが、クリーニングのプロの現場でも特に厄介と言われているのが、前述した「赤ワインの染み」です。
その理由は、赤ワインにはポリフェノールの1種である「アントシアニン」が豊富に含まれており、これが赤色色素として機能しているため、衣類などに付着すると濃い染みが残ってしまうのです。
白ワインの場合、アントシアニンやタンニンが多く含まれる果皮と種子を取り除いてから醸造されているため、染みが目立たず、一般的な洗濯方法で容易に落とすことができます。
一方、赤ワインの場合はアントシアニンだけではなくタンニンも豊富なため、一般的な洗濯方法ではキレイに落とすことが困難なのです。
ワインの染みを落とす方法
衣類などに付着してしまうと、簡単に落とすことができない頑固な赤ワインの染み。この染みを落とすには、どうすれば良いのでしょうか。
赤ワインの染みを落とすためには、下記の方法があります。
・酸素系漂白剤
・塩素系漂白剤
・重曹
・洗剤(台所用、弱アルカリ性)
・白ワイン
しかし、中には赤ワインの染みが残ってしまったり、繊維を傷めてしまったり、利用したがため、最悪の結果を招いてしまうものもあるようです。
ここからは、これらの方法をまとめて紹介していきましょう。
酸素系漂白剤
赤ワインの染みを落とす方法として、多く用いられているのが「酸素系漂白剤」での染み抜きです。
酸素系漂白剤として売られている製品の主成分は「過炭酸ナトリウム」というものですが、アルカリの力に酸化力が付加された成分であり、環境にも優しいことで様々な用途で使用されています。
酸素系漂白剤で赤ワインの染みを落とすポイントは「アルカリと加熱」。酸素系漂白剤に限らず、後述する方法も同様ですが、どの方法でも必ず「高めの温度の水」を用意しておきましょう。
では早速、酸素系漂白剤を利用して赤ワインの染みを落としていきます。
まず、赤ワインが染みになって時間があまり経過していない場合です。
衣類に付着した赤ワインの染み部分に酸素系漂白剤をかけ、40~50℃ほどのお湯をゆっくりと注ぎ、10分ほど放置してください。過炭酸ナトリウムが温まったお湯と化学反応を起こし、その力で汚れを剥がすように落とすため、この方法である程度染みがキレイになります。
一方、数日経過するなど、時間が経った赤ワインの染みは酸化してしまい、簡単にそれを落とせなくなります。
そんな時は、中性洗剤で数回濯ぎ前述した方法で酸素系漂白剤を使用してみてください。1度ではなく何度か行うことで、ワインの染みをキレイに落とすことができるでしょう。
ただし、ウールやシルク、動物性繊維を長時間、酸素系漂白剤に漬け込みすると傷んでしまう可能性があるため、避けた方が無難です。
塩素系漂白剤
塩素系漂白剤は、主成分が「次亜塩素酸塩」の強力な漂白剤です。殺菌作用も強く、キッチンなどで利用されることが多いハイターなどもこれにあたります。
ただし注意しなければいけないのが、塩素系漂白剤はかなり漂白力が強いため、色柄物に使用することはできず、素材自体を傷める可能性がある、ということです。
厚手の白地のコットン、白地のポリエステル、白地のレーヨンぐらいまでで、その他の素材では使用を避けることをおすすめします。
使用方法は、歯ブラシに塩素系漂白剤の原液をつけ、トントンと叩くようにワインの染み部分につけていきます。これだけである程度、ワインの染みは落とすことができますが、重曹が漂白への触媒効果を持っているため、あらかじめ染み部分に振りかけておくとより高い効果が期待できます。
ちなみに、色物、シルクやウールなどの素材に使用した場合、変色してしまう恐れがあります。仮に間違って使用してしまった場合、金魚鉢に入れるカルキ抜きなどの中和剤をすぐに使用すると塩素を無力化してくれ、変色部分が元に戻る可能性があります。
とはいえ、あまり染み抜きに慣れていない方などはリスクが高い塩素系漂白剤ではなく、酸素系漂白剤での染み抜きを選択した方が無難でしょう。
重曹
近年、様々な用途があることで注目されている重曹。重曹は、「炭酸水素ナトリウム」のことであり、酸性の汚れに利用することができる便利なアイテムです。
自宅で赤ワインを衣類にこぼしてしまった時、時間がほとんど経過していなければ、汚れの上に重曹をふりかけ、温めたお湯または熱湯をかけてしっかりともみ洗いすれば、重曹の化学反応により染みを落とすことが可能です。
しかし、外出先や数日経って酸化してしまった赤ワインの染みの場合、重曹だけで汚れを落とすのは難しくなります。
そんな時は、重曹に酸素系漂白剤を1:1の割合で混ぜた溶液の利用がおすすめです。
当て布を行い、汚れた部分に歯ブラシ、または割り箸の先に布を巻き付けた物などを使用して、前述した「重曹× 酸素系漂白剤」の溶液をつけていきます。しばらく放置した後、温かいお湯で濯ぐことで、ワインの染みをある程度落とすことができます。
ただし、色柄物であれば気にならないかもしれませんが、白い生地の場合は一度で完璧にキレイになるわけではないため、数回同作業を繰り返す必要があるでしょう。
洗剤(台所用、弱アルカリ性)
赤ワインの染み落としの対策として、どんなお宅にも必ずあるであろう、洗剤を使用する手段もあります。
洗剤と一言で言っても様々な種類がありますが、ワインの染み抜きであれば「台所用洗剤」、「弱アルカリ性洗剤」を利用してください。
台所用洗剤の多くは界面活性剤が含まれており、これらが油汚れなどを取り除いてくれるため、ワインの赤い染みにかけた後にお湯でもみ洗いすれば、多少は染みを薄くする効果が期待できます。
ただし、洗浄力を求めている方には「弱アルカリ性洗剤」がおすすめです。
弱アルカリ性洗剤で赤ワインの染みを落とす場合、まず赤ワインの染みに弱アルカリ性洗剤をつけ、当て布をしてから衣類を裏返し、当て布部分を歯ブラシなどで軽く叩きます。染みがある程度、薄くなってきたら、40~45℃のお湯で洗います。
汚れがなかなか落ちない場合、その後に一般的な洗濯洗剤を使用して洗濯機で洗っても良いですが、衣類の素材によっては生地を傷める可能性があるので注意して行います。赤ワインをこぼしてしまってからあまり時間が経過していなければ、この方法である程度は汚れを除去することができるでしょう。
白ワインを使う
「赤ワインの染みは、白ワインを使って落とすことができる」と、耳にしたことはないでしょうか。白ワインは、赤ワインと比較するとクエン酸が多く含まれているため、赤ワインの染みを分解するなど、そういったイメージがあったのかもしれません。
実際には、赤ワインの染みになった部分に白ワインをかけて放置したり、ぬるま湯でもみ洗いするなどした場合、色はやや薄くなるようですが「染みが除去できた」と言えるほどではありません。
白ワインにも、かなり少ないとはいえタンニンなどのポリフェノールが含まれていますし、香り成分も多く含まれています。
濃い色の衣類であれば気休めになるのかもしれませんが、結果的に正しい方法で染み抜きをすることになり、二度手間となるため、あまりおすすめできる染み抜き方法ではなさそうです。
赤ワインの染みを落とす際の注意点
赤ワインの染みを落とす方法としてこの他に、塩と炭酸水を混ぜたもの、セスキ炭酸ソーダ、クエン酸スプレーなど、数多くの方法が至る所で紹介されています。
しかし、洗剤などを扱うメーカーの多くが、赤ワインの染みをしっかり落とす方法として、「酸素系漂白剤」の使用を勧めています。
その効果や使い方は前述した通りですが、酸素系漂白剤をはじめ赤ワインの染みを落とす際に注意してほしい点を簡単にまとめたので、これらを必ず守るようにしましょう。
ワインの染み抜きの際の注意点
- 洗濯表示を必ず確認する
- 無理矢理擦ったり、高温過ぎる熱湯を使うと生地が傷む
- 金属を避ける
- 水で薄めた、溶かした物はその日のうちに使い切る
- 主成分が「次亜塩素酸塩」の漂白剤には、他の漂白剤を絶対混ぜて使わない
- 当て布をすること
まとめ
ここでは、赤ワインの染みの落とし方について解説しました。ワインを飲む機会が多い方はもちろん、たまにしか飲まない方であっても、いつどんなタイミングでワインをこぼし、それが染みとなってしまうかわかりません。
赤ワインをこぼした時、適当な処理をしたり、放置すればするほどその汚れは落ちにくくなっていきます。
今回の内容を参考にして、ワインの染みを正しい方法で落とすようにしましょう。