フランス ボルドー地方には、メドックをはじめ、グラーヴ、サン・テミリオン、ソーテルヌ&バルサックなど、数多くの格付けが存在します。
そんな中、近年改めて注目が高まってきているボルドーのワインがあります。それが、「クリュ・ブルジョワ」です。ここでは、ボルドーの「クリュ・ブルジョワ」について紹介していきます。
クリュ・ブルジョワとは?
ボルドーの「クリュ・ブルジョワ」とは、1855年に制定されたメドックの格付けの結果に対抗するかたちで、ボルドー商工会議所とジロンド農業会議所が1932年に444シャトーを選び、発表したことに始まった格付けです。当時は省庁の認可を受けた格付けではありませんでした。
メドック、オー・メドック、リストラック、ムーリ、マルゴー、サン・ジュリアン、ポイヤック、サン・テステフの八つのアペラシオンの赤ワインが対象となっており、メドック格付けである「グラン・クリュ」の次に位置するワインとして親しまれてきました。
しかし「クリュ・ブルジョワ」の場合、メドックの格付けのように不動の地位を獲得(一部例外あり)できているわけではなく流動的です。「クリュ・ブルジョワ」の歴史の中で、その在り方は常に問題提議され続けており、紆余曲折を繰り返している格付けであることでも有名なのです。
ちなみに、最新の動きとしては、2018年1月に制度変更を認める政令が出され、同年ヴィンテージから新しいクラス分けが適応されることになっています。なんとなく実態が掴みにくい、「クリュ・ブルジョワ」ですが、その歴史を追っていきましょう。
クリュ・ブルジョワのスタート
ボルドーがイギリス領だった12世紀頃「ブルジョワ」という概念が誕生しました。ボルドーがフランス領に戻った後、当時の富裕層がメドック地区に点在する良質な土地を手に入れたことが「クリュ・ブルジョワ」のスタートと言われています。
その後、前述したように、1855年のメドック格付けに対抗するように、格付けとしての「クリュ・ブルジョワ」は1932年にボルドー商工会議所とジロンド農業会議所が444シャトーを選んだのが始まりです。
しかし、戦争などに影響を受けシャトー数は激減。さらに格付けなどに法的な根拠が無かったため、クリュ・ブルジョワ組合が、再興のために公式格付けに向けて運動を始めます。
その結果、2000年11月30日付で「クリュ・ブルジョワ」の詳細の規定が農務省の省令で定められます。
「クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル」、「クリュ・ブルジョワ・シュペリウール」、「クリュ・ブルジョワ」という三つのカテゴリーが設けられることになり、2003年に省庁が認めた公式格付けとして新しい「クリュ・ブルジョワ」が誕生することになりました。当時、三つのカテゴリーに選ばれたシャトーを含め、計247の生産者が「クリュ・ブルジョワ」として認定されています。
格付けから「認証」へ
公式格付けとして、新たなスタートを切った「クリュ・ブルジョワ」。
しかし、この格付けに認定されるために、500近くのシャトーから正式申込があったことが背景にあり、認定から漏れた生産者たちが猛反発します。当時のリストには、シャトーオーナーや仲買人、ワイン商などが加わっていたことなどから、審査団の公正性に疑問が呈されたのです。結果、不満を持つ生産者たちは訴訟を起こし、2007年にボルドー行政控訴院によって、2003年に決定された「クリュ・ブルジョワ」とそれを承認した省令を無効とする判断が下されたのです。これにより、またも公式格付けでは無くなった「クリュ・ブルジョワ」。
その後、「クリュ・ブルジョワ」の火を消すまいと、組合員によってクリュ・ブルジョワ連盟が結成されます。結果、格付けではなく、「クリュ・ブルジョワ認証」というかたちの、新しい「クリュ・ブルジョワ」がスタートします。
メドックの八つのA.O.Cの生産者を対象に、仕様書を遵守すること、毎年開催される第三者機関の官能検査に合格すること、第三者機関の訪問機関を受け入れるなど、諸条件を満たしたワインのみに「クリュ・ブルジョワ認証」が与えられるようになりました。この制度は、2010年9月に発表された2008年ヴィンテージから適用されており、現在も続けられています。
認証制度の弊害が問題視される
新しく認証制度となった、「クリュ・ブルジョワ」。収穫の2年後に前述した審査が行われ、結果は同年9月に発表されるということで、今度は毎年変動するかたちとなりました。
しかし、「認証」という分かりにくく、ブランド性が打ち出しにくい状況になってしまったため、シャトー・フェラン・セギュールをはじめとした、有名シャトーが軒並み脱退。「クリュ・ブルジョワ」自体の存在意義すら、問題視されるようになってきてしまったのです。
また、もともと認証を受けていた有名シャトーが脱退するだけでなく、新しく実力と名声のあるシャトーがクリュ・ブルジョワ認証に興味を持たなくなることから、将来の独立性に暗雲が立ち込める問題も指摘されるように。この現状を打破し、格付けを復活させるため、クリュ・ブルジョワ連盟は、「2020年までに3段階からなる新たな格付制度を導入する」と、2016年に発表。
そして2018年1月、ついに2018年ヴィンテージから、加盟するシャトーを三つのカテゴリーに格付けすることを発表するに至ったのです。
新たなカテゴリとは?
2018年ヴィンテージから導入される、「クリュ・ブルジョワ」の新たな格付けは、「クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル」、「クリュ・ブルジョワ・シュペリウール」、「クリュ・ブルジョワ」の3種類。
実際に、これら新しい格付けの「クリュ・ブルジョワ」が店頭に並ぶのは2020年になりますが、その時にはぜひ、手に取って飲んで見てはいかがでしょうか。
おすすめのクリュ・ブルジョワ
最後に、これまで紹介してきた「クリュ・ブルジョワ」でおすすめのワインをご紹介します。
こちらのワインは、ボルドーのメドック地区に位置するフランス国内で評価が高いシャトーの一本。
果実味と滑らかなタンニンのバランスが良く、今すぐ開けて楽しめる赤ワインです。
航空会社ANAのビジネスクラスでも採用されたこともある実力派!是非お試しください。
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まとめ
ここでは、「クリュ・ブルジョワ」について紹介してきました。ワインについて知り始めたばかりの方だけでなく、ボルドーワイン好き、ワイン愛好家の方の中にも、「クリュ・ブルジョワ」は少々マニアックなワインと思われている方も少なくないかもしれません。
しかし、「クリュ・ブルジョワ」の2016年公式セレクションで発表によると、270シャトーが選ばれており、約3300万本が「クリュ・ブルジョワ認証」を受けることになりました。この生産本数は、メドック地区全体の約3割を占めているということで、比較的私たちにとって身近なワインでもあります。
まだまだ、日本では多く知られていない「クリュ・ブルジョワ」ですが、品質が高いワインであることは間違いありませんので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。