老舗ワイナリーがひしめくイタリア・ピエモンテで30年ほど前にゼロからスタートしたバローロ、ラ・モッラ村の偉大な造り手、ロベルト・ヴォエルツィオ。非常に革新的な独自の栽培法から生み出される極上のバローロは、世界中の愛好家を魅了しています。
今年11月下旬、オーナー兼ワインメーカーであるロベルト・ヴォエルツィオ氏と、醸造担当者のチェザーレ・ブッソーロ氏のお二人が来日しました。海外でのプロモーションの機会はほとんどなかったため、お二人が日本を訪れるのは今回が初めて。その際にワインショップ・エノテカ銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレにて開催された貴重なテイスティングイベントの模様をレポートします。
目次
ラ・モッラ村の偉大な造り手ロベルト・ヴォエルツィオ
オーナー兼ワインメーカーであるロベルト・ヴォエルツィオ氏
バローロ、ラ・モッラ村の小さなワイン生産者の3代目として生まれたロベルト・ヴォエルツィオ氏。若い頃からワインへの関心が高く、10代ですでに他の生産者が造るラ・セッラ、チェレクイオといったラ・モッラ村の偉大な畑のワインを飲んでいたそうです。
「ラ・モッラ村に生まれたことが幸運であった」と語るヴォエルツィオ氏は、自分自身でもこのような素晴らしいワイン、自分の好きなワインを造りたいと思い1986年に独立。自らの名を冠したワイナリー、ロベルト・ヴォエルツィオを設立し、わずか30年ほどで、世界中のワインラヴァー垂涎の的となる造り手へと上り詰めました。
四つのキーワードで知るワイン造りの哲学
ロベルト・ヴォエルツィオ氏と醸造担当者のチェザーレ・ブッソーロ氏によるトークショーの様子
ロベルト・ヴォエルツィオ氏と醸造担当者のチェザーレ・ブッソーロ氏は、ワイン造りの哲学・思想として、四つのキーワードを挙げていました。
1.オーガニック
まず一つ目は「オーガニック」。ロベルト・ヴォエルツィオは自然に忠実なブドウをモットーとしており、「オーガニック」という言葉が今ほど使われていなかった設立当初から、ナチュラルなブドウ栽培を実践。畑では自然に敬意を払うため、化学肥料や除草剤、殺菌剤、防カビ剤など、植生サイクルの干渉となる物質は一切使用されません。
2.テロワール
次に挙げたキーワードは「テロワール」。良いクリュから良いワインが生まれるという考えのもと、ブドウを育てるのに良い場所を見つけることが最も重要であると語ります。
設立当初に所有していた畑の面積はわずか2.5haでしたが、その後ラ・セッラ、チェレクイオといった歴史的にも名声を得ているクリュを取得。現在は計32haもの畑を所有していますが、現地の人に「ラ・モッラ村で一番良いネッビオーロ、バルベラ、ドルチェットはどこにあるか」と聞くと、必ずヴォエルツィオの畑に行き着くというほど、優れたテロワールの畑を有しているそうです。
3.密植
三つ目のキーワードは「密植」。雨が少なく太陽に恵まれたイタリアでは、ヘクタール当たり5,000~6,000本の密度で栽培する生産者が多い中、ロベルト・ヴォエルツィオではブドウの凝縮感を高めるため、ヘクタール当たり約8,000~9,000本の密植を実践しています。この植密度はなんとブルゴーニュのグラン・クリュに匹敵するそうです。
4.低収量
そして最後のキーワードは「低収量」です。1本の樹にブドウを5~8房しか残さず、収穫前には1房の半分以上を切り捨ててしまうという、極限までに推し進めた摘房を実践しています。その結果、1本の樹から取れるブドウは500~700gのみ。こうして健康で糖度が高く、香りの豊かなブドウが生み出されるのです。
豪華ラインナップの飲み比べで分かるヴォエルツィオの魅力
今回テイスティングで供されたのは、バローロ5種とバルベラ1種の計6銘柄。1500mlのマグナムボトルや3000mlのダブル・マグナムボトル、そして未販売のバックヴィンテージボトルを含む超豪華ラインナップとなりました。
テイスティングで感じたロベルト・ヴォエルツィオのバローロの魅力はなんと言っても、クリュごとの個性、そしてヴィンテージごとの個性の違いを味わえること。チェザーレ・ブッソーロ氏が「クリュやヴィンテージの違いをワインに表現するのが造り手の仕事」と語るように、これらのクリュやヴィンテージの違いを如実に感じることができました。
例えば「バローロ ラ・セッラ」は、畑が斜面上部に位置し標高が高く冷涼な場所のため、フレッシュさとクリスプなキャラクターが特徴となっています。一方、ラ・セッラに隣接する「バローロ チェレクイオ」の畑はわずかに低い場所に位置しており、生み出されるワインは甘いタンニンと優れた凝縮感が特徴です。
また、暖かい年だった2006年ヴィンテージの「バローロ ロッケ・デッラヌンチャータ・トリリオーネ」は、凝縮感やストラクチャーがあり男性的な印象。一方、冷涼な年だった2012年ヴィンテージの「バローロ チェレクイオ」は、色も淡くエレガントでピノ・ノワールに近い女性的な味わいが印象的でした。
まとめ
今回は、ロベルト・ヴォエルツィオ氏とチェザーレ・ブッソーロ氏の説明を受けながら、6銘柄のワインをテイスティングし、改めてバローロの奥深さとその魅力を実感することができました。
その魅力を存分に味わうには、15度くらいの低い温度で飲み始め、時間の経過とともにフレッシュな印象から複雑な印象となる変化を愉しむのがオススメだそうです。
また、彼らのワインはもちろん今飲んでも素晴らしい味わいを堪能できますが、10年の熟成を経てやっと真価を発揮し、30~50年の熟成も余裕で愉しめるとのこと。現在はワイナリーのセラーで熟成させたバックヴィンテージボトルを、将来的にリリースするといったプロジェクトも進めているそうです。
今後の活躍にも目が離せない、ロベルト・ヴォエルツィオ。是非この機会に試してみてはいかがでしょうか。
今回イベントが行われたワインショップ・エノテカ銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレ
カフェ&バー 11:00~22:00
ロベルト・ヴォエルツィオ 特集
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