ドキドキしながらワインをグラスに注ぎ、魅惑の液体を口から流し込んだ瞬間。「あれ、なんだか渋くて美味しくない……」なんて経験、ありませんか?
多くの人がこのワインはハズレだったと残念がり、そのワインを二度と購入しないなんてことが起こっているようですが、ちょっと待って!
実はそのワイン、デキャンタに入れると美味しくなるかもしれません。
今回はそんなワインが美味しくなるテクニックについて、解説したいと思います。
動画で見る デキャンタージュの方法
目次
デキャンタの効果
デキャンタとは、ワインを入れるガラス容器のこと。このデキャンタにワインを移す作業をデキャンタージュといいます。
この作業によって、下記の三つの効果がもたらされるためワインは美味しくなります。
- 味わいをまろやかにする
- 香りを良くする
- ワイン中の澱(オリ)を除く
①味わいをまろやかにする
抜栓後に渋味を強く感じた場合、デキャンタージュが効果的です。空気に触れ酸化が進むので、味わいをまろやかにすることができます。
以前中国では、赤ワインのデキャンタージュに関する研究が行われました。この研究結果によると、デキャンタージュ後の赤ワインに含まれる酸とポリフェノールの量が時間の経過とともに減少していくことが確認されました。
このことから、デキャンタージュにより赤ワインの味わいがまろやかになることが裏付けされたのです。
参考文献 Cui, Y. et al. : Simultaneous determination of 20 components in red wine by LC-MS: Application to variations of red wine components in decanting.(2012)
②香りを良くする
瓶詰めされたワインの中には、ある程度の酸素が溶けていますが、長く保管されると少しずつ減っていきます。酸素の量が減ると、香りの成分自体が化学変化を起こし、ワインの持つ果実の香りが減少します。
また、ワインの中で化学変化が起こったことにより、還元臭(注1)を発することもあります。
このようなワインをデキャンタージュすることで空気に触れさせると、不快な臭いが消え、本来の香りが戻ることがあります。
(注1)ゆで卵の黄身や硫黄のような臭い
③ワイン中の澱(オリ)を除く
赤ワインの中には、液中に澱が浮遊しているものがあります。この正体は、酒石酸やタンニンなどの結晶です。
澱を飲んでも人体に害はありませんが、ざらついた口当たりになるので、美味しく飲むためには取り除いたほうが良いでしょう。
数日ボトルを立てて澱を瓶底に沈殿させておき、液体の上澄みだけをデキャンタに移し替えると上手く取り除くことができます。
澱について詳しくはこちら
デキャンタージュが有効なワインと有効でないワイン
ワインが美味しくなるデキャンタージュは魔法のようですが、どんなワインにも効果的かというと、そうではありません。
デキャンタージュが有効なワインとそうでないワインをまとめてみました。
デキャンタージュが有効なワイン
・渋みが強いワイン
ポリフェノールが豊富で渋みが強いワインはデキャンタージュすることで味わいがまろやかになります。
・香りが閉じているワイン
瓶詰めからあまり時間が経過していない赤ワインでも、本来持ちうる香りを充分に発することができず“閉じている状態”のワインにデキャンタージュの効果があります。
・熟成したワイン
ボルドーワインやポートワインなど長期熟成を経たワインは、澱が溜まっていることが多く、デキャンタージュが有効です。
・不快な臭いがするワイン
抜栓後のテイスティングで還元臭を感じた場合も、デキャンタージュすると美味しいワインに戻ってくれる可能性が高いです。
デキャンタージュしないほうが良いワイン
・繊細な香りと味わいが特徴のワイン
ピノ・ノワールなどのワインは、デキャンタージュすることによって香りが飛んでしまったり、繊細なストラクチャーが崩れてしまったりすることもあります。
こういったワインで還元臭が気になった場合は、デキャンタージュではなくグラスに注いだ後にスワリングするようにしましょう。
・白ワインやスパークリングワイン
白ワインやスパークリングワインは酸味が味わいに深く関係しているため、デキャンタージュには向かないとされています。
しかし、もう少しまろやかさがほしいという場合や強い還元臭が気になるとき、酒石酸や澱などの沈殿物が気になる場合はデキャンタージュが有効です。
デキャンタージュの方法
デキャンタージュする場合は、ちょっとしたコツが必要です。手順にそってご紹介します。
①飲む数日前から垂直に立てておく
澱を瓶底に沈めておきましょう!
②静かに抜栓
澱が液中に舞わないように注意が必要です。
③瓶の首元に下からライトなどの光を当てながら傾けたデキャンタに注ぐ
澱が入らないよう注意深く行ってください。
様々なデキャンタのタイプ
デキャンタには様々な形があり、デキャンタージュの目的に応じて使い分けましょう。
細身で縦長のタイプ
澱を取り除きたいときはこの形がおすすめ!空気と触れ合う面積が最小限になるため、酸化を目的としないデキャンタージュの際に使いましょう。
熟成したデリケートなワインをデキャンタージュすることで、澱を取り除くことができますよ。
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ワインを入れる部分が広いタイプ
空気に触れる面積が多いため、若いワインに向いたタイプになります。
まだ飲み頃まで時間がかかるワインが「どうしても今飲みたい!」というときに、ワイン全体に空気を触れさすことで本来の美味しさが開花します。
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まとめ
ワインを美味しく飲む上で知っておくと、とても便利なデキャンタージュ。
もし開けたワインが美味しくない……と残念な気持ちになってしまっても、デキャンタージュで驚くほど美味しくなる可能性があることを覚えておいてくださいね!
熟練のソムリエのように、細く長い絹糸のように液体を注ぐ……なんていう曲芸レベルのテクニックで臨まなくても充分ワインは美味しくなりますので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。
参考:ジェイミー・グッド『新しいワインの化学』河出書房新社 堀賢一『ワインの自由』集英社
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