イタリアの赤ワインといえば、サンジョヴェーゼから造られたワインをイメージする人が多いのではないでしょうか？

パスタやピザに合わせて、気軽に飲むタイプの赤ワイン。サンジョヴェーゼからは確かにそんなワインがたくさん造られていますが、それはこのブドウの特徴の一面に過ぎません。

実はサンジョヴェーゼは同じ赤ワインでも多様なスタイルのワインを生み出します。

今回は、そんなサンジョヴェーゼというブドウについて詳しくご紹介します。

サンジョヴェーゼは、イタリア中部地方を原産とする赤ワイン用ブドウ品種です。

名前の直訳が「ジュピター（＝ローマ神話の主神）の血」であることが示唆する通り、古代から存在していたブドウと言われています。

世界全体の栽培量のほとんどがイタリアで生産されていますが、栽培土壌の選り好みが少ない多産品種なので、近年ではアメリカやオーストラリアでも栽培されており、イタリア起源のブドウ品種としては珍しい国際的な品種です。

サンジョヴェーゼは突然変異しやすいブドウで非常に多くのクローンが存在し、大きく分けてサンジョヴェーゼ・グロッソとサンジョヴェーゼ・ピッコロの二つに分類されます。

いずれもその名の通り、サンジョヴェーゼ・グロッソは粒が大きく果皮が厚いブドウで、サンジョヴェーゼ・ピッコロは粒の小さなブドウです。

しかしながら、あまりにもクローンが多いために生産者ですら房や果粒のサイズ、葉の形などの外見では質的判定はできないと言います。

生育においては、成熟が遅いため、暑い年には濃厚でアルコール分が高く長期熟成に耐えうるワインになり、冷涼な年には酸とタンニンが強くなる傾向があります。

またサンジョヴェーゼの主要な産地であるイタリア半島中部は、東西の幅が狭い上に真ん中にアペニン山脈が貫いており、地形は海から平野、丘陵地帯、山岳地帯と変化するためブドウ畑のテロワールも多彩。

さらにイタリアは栽培方法も多様でそれぞれの地方が独自の栽培文化を持つため、同じサンジョヴェーゼを使ったワインでもスタイルや味は産地によって異なります。

例えばサンジョヴェーゼ・ピッコロから造られる手頃な価格のキャンティは、スミレの花やチェリーのフレッシュな香りと果実味と酸味が豊富な味わいが特徴。

一方でブルネッロ・ディ・モンタルチーノのようにプラムのような香りがあり、タンニンが豊富で重厚な味わいのワインが生まれます。

またワイン法にとらわれず自由な発想で造られるスーパータスカンの生産者は、サンジョヴェーゼとフランス系の国際品種をブレンドし、より濃厚で凝縮感のあるワインに仕上げたりと造り手によってもその味わいは様々となっています。

やはりイタリア料理との相性は抜群です。軽めのサンジョヴェーゼのワインには、パテやハム、酸味のあるトマトソースを使ったあらゆる料理とよく合います。

また、トスカーナ地方の特産品である羊乳チーズ「ペコリーノ・トスカーノ」とも非常によく合います。

フルボディのサンジョヴェーゼのワインには、ハーブやニンニクを効かせた赤身肉のステーキや羊肉のロースト、すき焼きなど、洋風だけでなく和風の肉料理とも合わせることができます。

原産地であるイタリア中部のトスカーナ州が主要産地として有名ですが、トスカーナ周辺の州でも栽培されています。また、イタリアの影響が強いフランスのコルシカ島や、イタリア系移民の多いアメリカとアルゼンチンでも広く栽培されています。

トスカーナ州は、赤ワインの生産量が89％と際立って多く、キャンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノといった有名なD.O.C.G.（注1）をはじめとする高品質なワインが数多く生産されています。そして、その高品質な赤ワインのほとんどがサンジョヴェーゼを主体にして造られています。

キャンティはサンジョヴェーゼをベースにして造られるイタリアで最も有名なワインと言えるでしょう。

その生産地域はトスカーナ州内陸部の複数の県に及び非常に広範囲です。そのため、生産者によって同じキャンティでもスタイルが随分異なります。

また、フィレンツェとシエナの間に広がる丘陵地帯はキャンティ地方と呼ばれ、この地で造られるキャンティは独自のD.O.C.G.キャンティ・クラシコを名乗り、優れた生産者が多くいます。

また、シエナ県モンタルチーノ村周辺ではサンジョヴェーゼ100％でブルネッロ・ディ・モンタルチーノが造られています。

ブルネッロはサンジョヴェーゼのシノニム（別名）で、果粒の大きいサンジョヴェーゼ・グロッソに属します。長期熟成可能な赤ワインとして成功を収め、現在はイタリアを代表する赤ワインの産地となりました。

一方、トスカーナ州の海岸部では、土着品種と国際品種をブレンドして造られるスーパータスカンと呼ばれるワインの生産が盛んです。この地で栽培されているサンジョヴェーゼはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロとブレンドされます。

尚、エミリア・ロマーニャ州、ウンブリア州、マルケ州といったトスカーナ州に隣接する州でもサンジョヴェーゼは広く栽培されています。

サンジョヴェーゼのおすすめワインをご紹介します。

こちらは世界中で高い評価を獲得するイタリア屈指の名生産者、カステッロ・ディ・アマが手掛ける高品質なキャンティ・クラシコ。

ワイナリー名を冠し、収量を抑え本当に良いブドウだけを厳選して造られたこだわりの1本です。

サンジョヴェーゼにマルヴァジア・ネラやメルロをブレンドして造られ、サンジョヴェーゼの美しい酸とラズベリーを思わせるピュアな果実味を存分に味わうことができます。

キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ カステッロ・ディ・アマ / カステッロ・ディ・アマ

こちらはサンジョヴェーゼとカベルネ・ソーヴィニヨンなどの国際品種をブレンドした新しいスタイルのサンジョヴェーゼ。

程よいボリュームがあり、上品な余韻を楽しめます。

スーパータスカンを試してみたい！という方にオススメできる一本です。

ヴィラ・アンティノリ・ロッソ / ヴィラ・アンティノリ

サンジョヴェーゼは順応性と生産性の高さから、イタリアではかつて質より量を重視して栽培されていた時期がありました。

しかし、時代に応じて高品質を目指した生産に切り替わったことで、サンジョヴェーゼのワイン全体の品質向上につながりました。

最近サンジョヴェーゼのワインを飲んでいなかったな、という方は是非お試しください。