ワインを熟成させるときの保存方法

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公開日 : 2022.5.20
更新日 : 2023.7.12
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ワインを熟成させるときの保存方法

長い歳月を経たワインを開ける時には期待値が高まるものです。保存状態が良ければ天国、その逆にコンディションが悪かった時のがっかり感はまるで地獄に落とされたようなものです。


そのため、常日頃の保管には細心の注意を払うというのは必然のことと言えるでしょう。


ここではワインを保管する際のポイントについてお伝えします。

目次

これまでの見解

みなさんはどんな場所でワインを保管していますか。テレビで映し出されるワインセラーと言えば、暗い洞窟でうっそうとカビが生い茂り、まるで魔女でも出てきそうな場所です。


実際、ワインは以下の6点を満たす場所で保管するのが良いとされています。

1.直射日光の当たらない場所

2.振動がない場所

3.異臭のない場所

4.14度前後の温度が一定に保たれる場所

5.湿度が70%前後の場所

6.ボトルを横に寝かして保管する

とりわけ、ボトルを横に寝かして保存する理由としては、立てて保存すると樫の木からつくられたコルクが乾燥し収縮してしまい、その収縮した隙間から酸素が混入し、酸化の速度が速くなったり、ワインの蒸発が盛んに起き、予期されていた年月よりも目減りが進んだりするためです。


逆に横に寝かしておけば瓶中のワインが常にコルクを湿った状態にあるので、コルクが縮みづらく、酸化と目減りを防げるという見解です。


オークションなどで古酒を売買するときには、下図のようなものを使って目減り分を確認するのは、ワインが良い環境下で保管されたか、目減りが自然なものかを調べるためでもあります。

ボルドータイプの瓶に入ったワインは、上図の左側のようにボトルの肩の位置で液面の高さを表します。

ボトムネック:10年以上経過しているワインの場合は理想的な液面

トップショルダー:15年程度経過したワインの標準的な液面

アッパー・ショルダー:20年以上経過したワインなら問題なし

ミッド・ショルダー:コルクが多少なりとも劣化しており、それなりのリスクがあるボトル。ただし、30~40年経過しているワインでは珍しくない液面の高さ

ロー・ショルダー:リスクの高いボトルで、一般には避けるべき

ブルゴーニュタイプの瓶に入ったワインは、コルクの底部から液面までの距離で液面の高さを表します。


ブルゴーニュタイプのボトルでは、目安となるのは「1年あたり1ミリまでの減りなら良い」というもので、例えば30年が経過しているワインの場合、コルク底部から液面までが35~40ミリ以内なら良好と判断できます(瓶詰めの時点で、コルク底部から液面までに5~10ミリ程度の空隙があります)。

参考:https://www.christies.com/Wine/Ullages_2013.pdf

「横に寝かす」が世界スタンダード!?

家電量販店や百貨店で購入できる家庭用セラーも、最初からワインは横に寝かして収納するように設計されていますし、有名ホテルや、星付きレストランのセラーを覗いても横向きにワインが保管されています。


また、ほとんどの教科書が横にして保存するよう記しているので、誰もが「ワインは寝かして保存するもの」と考え、これを疑ってみる人などほとんどいなかったのではないでしょうか。

一石を投じたアモリム社

ところが、この「ワインは横にして寝かすもの」という常識に一石を投じたのが、コルク製造会社アモリムの研究者Miguel Cabral博士でした。


アモリム社は2016年にはブショネの心配が完全にないスーパーコルク「NDテック」をリリースするなど、コルクの研究においては世界一といっても過言ではない、ポルトガルに本拠を構える世界最大のコルク会社です。


そこで研究を続けてきた博士が、2018年6月、「(未開封のコルク栓をした)ワインを横に寝かせても、コルクの乾燥を防ぐ効果はなく、ワインの状態を悪化させる可能性すらある」と発表したのです。


博士は「ワインを寝かして保存するのが良いというのは、根拠がないことで長年の言い伝えに過ぎない」と話し、その理由として「ワインの液面とコルクの間の空間(ヘッドスペース)の湿度は100%で、ワインを立てておいたからといってコルクが乾燥することはない」と述べています。


さらに、古いワインのコルクが縮んでしまっているのを見かけることがありますが、このことについても「長期に渡ってコルクがワインに浸かった状態だと、コルクの細胞構造の弱体化を加速させるからだ」とも指摘し、寝かして保存することによるリスクについても言及したのです。

Corklinsとは

最近ではCorklinsという化学物質についても徐々に研究が進んでいます。


このCorklinsは2017年9月に発表されたばかりのもので、コルクが持つフェノール類とワインが反応して生成され、この成分が原因でワインの色が淡くなったり、苦みを与えたりするのではないかと指摘されている化学物質です。


今後、このCorklinsについてより具体的なことが分かり始めれば、前述の見解と相乗効果を発揮し、「ワインは立てて寝かそう」という意見がますます高まっていくかもしれません。

まとめ

このアモリム社の発表はまさに急転直下、世界中のワインラバーを驚かせました。


しかし、いくら「立てて保存が良い」という風潮が強まっても、世界中のセラーのほとんどが横向きで保存して美しく見えるようにデザインされていることが現状。また、収納という実質的な観点でも買い替えや建て替えをしなければならないため、一気に普及することは難しく「寝かす派」も根強く残りそうです。


いずれにせよ、このようにワインの熟成に関する研究が深まることはワイン好きにはうれしいニュースです。あとは飲み手がワインを開けずに我慢できるか…ということだけが問題になりそうです。

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