カルメネールというブドウ品種をご存知ですか?
聞き慣れない名前かもしれませんが、現在は主にチリで栽培されている、濃厚な赤ワインを生むブドウです。
しかし、実はチリではカルメネールは長年メルロと勘違いされ、混植、混同されていました。
そんなカルメネールとはどんなブドウなのでしょうか?このブドウの歴史とともに紹介致します。
カルメネール一覧
特徴
種類 | 黒ブドウ |
香り | ブラックベリー、コーヒー、黒コショウ |
味わい | 酸味は控えめで程よいタンニン、滑らかな口あたり |
代表産地 | チリ |
カルメネールは、フランスのボルドー地方原産の赤ワイン用ブドウ品種です。
しかしながら、現在フランスではカルメネールの栽培はあまり見られず、世界で最大の栽培面積を誇る国はチリです。
元来、カルメネールはボルドーのメドック地区で多く栽培されており、プティ・ヴェルドと同じようにカベルネ・ソーヴィニヨンにブレンドする目的で栽培されていたのです。
しかし、受粉の時期が低温になるとすぐに花振るいを起こしてしまうこと、成熟がとても遅いことなどからボルドーでは次第に生産量が減少。
さらに1860年代以降のフィロキセラ禍によって姿を消し、現在に至っています。
カルメネールの語源であるカルミネ(Carmine)が「真紅色の」という意味である通り、このブドウの一番の特徴は色素の濃さにあります。
また、しっかり熟すまでにとても時間がかかる品種のため早いうちに収穫するとピーマンのような青い香りが残ってしまいますが、成熟してから収穫すると非常に凝縮したブドウとなり、果実味のあるワインが造られます。
気候の良いチリで太陽の光を十分に浴びて育ったカルメネールからは、色合いも風味も濃厚なワインが生まれます。
濃厚なブラックベリー系の香りと、チョコレートやコーヒーのような香り、そして黒胡椒のようなスパイスのニュアンスを感じられます。
酸味は控えめで、タンニンはカベルネ・ソーヴィニヨンに比べると穏やかで柔らかく、口当たりがなめらかなので、渋みの強い赤ワインが苦手という方でも飲みやすいでしょう。
相性の良い料理
カルメネールで造られるワインは程良いタンニンと凝縮した果実味のため、ローストビーフや塩・胡椒だけで味付けしたステーキなど 、赤身肉を使った料理とよく合います。
また牛肉とピーマンを炒めたチンジャオロースとも相性抜群なのでおすすめです。
カルメネールのワインは比較的手頃な価格帯のものが多いので、デイリーワインとしてストックしておくと普段の食卓をより美味しく楽しめること間違いなしです。
代表的な産地
主な産地はチリです。と言うより、チリ以外の国ではカルメネールはほとんど栽培されていません。
チリには19世紀半ばヨーロッパにフィロキセラが広がる以前に、ボルドーからカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどと一緒に持ち込まれました。
チリは典型的な地中海性気候なので、冬場に集中して雨が降り、ブドウの生育期間である夏の終わりから晩秋の間は非常に乾燥しているためブドウの病害が少ないのが特徴です。
そのため、フランスでは生き延びられなかったカルメネールも、気候の良いチリでは順調に栽培されてきました。
しかし、チリではカルメネールはフランスから苗木が持ち込まれてから約150年近くもメルロと勘違いされていたため、混植されていました。
DNA鑑定によってチリのメルロの一部がカルメネールと識別されたのは1994年。そして、1996年にチリの農業省農牧庁SAGがカルメネールを認証しラベル表示を許可しました。
南北に細長い国であるチリは、東側をアンデス山脈、太平洋岸に海岸山脈が走り、その中間部の広い平野でブドウが栽培されています。
栽培地域の長さは南北に1,400kmにも及び、カルメネールはその中央部のアコンカグア・ヴァレーとセントラル・ヴァレーで主に栽培されています。
アコンカグア・ヴァレー
この地は、アンデス山脈の麓から海岸に向かうアコンカグア川沿いの平地で、穏やかな地中海性気候。
夏の昼夜の温度差が15〜20度と大きく、ブドウの成熟に最適な土地です。
また、日照量も多いことから、果皮の厚いしっかりとしたブドウができます。カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー等とともにカルメネールが多く栽培されています。
セントラル・ヴァレー
首都のサンティアゴから南に広がる広大なブドウ産地です。
西側に大きなラペル湖があるカチャポアル・ヴァレーは海風の影響が少なく、カルメネールなど赤ワインの産地として知られています。
また、コルチャグア・ヴァレーにも有名なワイナリーが集まっており、上質なカルメネールのワインが造られています。
おすすめワイン
カルメネールのおすすめワインをご紹介します。
フランスの技術を取り入れたカジュアルワイン
こちらはボルドーの名門がチリで手掛ける、カルメネール100%で造られた赤ワイン。
最先端の技術にボルドーの伝統的な方法を取り入れることでパワフルかつエレガントな仕上がりとなっています。
フランスで培われた技術で生み出されるカルメネールの味わいをお楽しみください。
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熟成ポテンシャルを持った上質なカルメネール
カルメネール本来の味わいを存分に楽しみたいのならこちらのワインがおすすめです。
オバマ元大統領がチリを訪れた際の公式晩餐会で提供されたワインとして一躍話題となりました。
滑らかな口当たりに凝縮感のあるリッチな果実味を味わえ、熟成ポテンシャルも兼ね備えた逸品です。
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まとめ
一説には、ワイン用のブドウ品種は世界に何千種もあると言われています。
ワイン造りの長い歴史の中で自然に淘汰されたり、新しい交配品種が生まれたり、カルメネールのように時には海を越えて原産地から遠く離れた場所で花開くブドウもあります。
カルメネールはチリでメルロと勘違いされて育てられていたからこそ、現存するブドウなのかもしれません。
参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2018
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