「ワイン発祥の地」として、近年注目度が急上昇しているジョージアワイン。今回はそのジョージアワインについて徹底解説!
独自の醸造法やその味わい、代表的な品種などをご紹介します。
ジョージアのワイン一覧
歴史
ジョージアは、古来シルクロードの要所として栄えた東欧の南コーカサス地方に位置する国。北はロシア、南はトルコとアルメニア、東はアゼルヴァイジャン、西は黒海と接しています。
1991年にソビエト連邦から独立し、日本では2015年にロシア語読みの「グルジア」から、英語読みの「ジョージア」に変更になりました。
ワイン造りが始まったのは紀元前6000年頃。ジョージアのコーカサス山脈から黒海にかけての地域でワインが造られていたことが、様々な考古学者の研究によって裏付けられています。
また「wine」の語源はジョージア語の「ghvivili(グヴィヴイリ)」にあるという説も有力視されており、ジョージアはまさに「ワイン発祥の地」と言えるのです。
独自の製法
そんなジョージアワインが、近年世界的に大きな注目を集めている理由の一つが「クヴェヴリ」による独自の醸造法です。
クヴェヴリは、上記のような粘土でできた素焼きの卵型の壺のことを指し、多くの場合、綺麗に保ちやすくするために内側は蜜蝋でコーティングされています。
大きさは造り手や用途により200〜3,500ℓまでと様々。また、クヴェヴリは先端が尖っており安定しないため、一般に「マラニ」と呼ばれるセラー内の地中に埋められて使用されています。
ジョージア最大のワイン産地カヘティ地方の伝統的製法は、まずブドウを「サツナヘリ」と呼ばれる木製の桶の中で踏み潰し、果皮、果肉、果梗、種と共に果汁をクヴェヴリの中に投入します。その後、土の中にあるクヴェヴリは自然と低温に保たれるため、発酵と熟成がゆっくりと進行。5〜6ヶ月後、ワインを別のクヴェヴリに移すことで自然濾過を施します。その後、ワインをさらに熟成させるか、場合によってはそのまま瓶詰めします。
この醸造方法はあまりにも手間暇がかかることから、19世紀には減少していたそうです。実際には、ジョージアワインの生産量の90%程は「ヨーロピアンスタイル」と呼ばれるモダンな醸造方法で造られています。
しかし、このクヴェヴリによるワイン造りが、2013年にユネスコの「無形文化遺産」に登録されたことで、独自の文化が再度見直され、徐々にクヴェヴリによる生産は増えてきています。
ワインの特徴
クヴェヴリでは、白ワインと赤ワインの両方が造られますが、特に有名なのがクヴェヴリで造られる白ワイン。
通常の白ワインとは異なり、白ブドウを赤ワインのように果皮や種と共に発酵するいわゆる「オレンジワイン」となりますが、ジョージアでは「アンバーワイン」と呼ばれています。
その名の通り、琥珀色がかった色調の濃い外観が特徴ドライアプリコットやクルミ、茶葉やスイートスパイスなどの独特のアロマを備えています。また、ブドウの果皮や種から抽出されるタンニンなどのポリフェノールが多く含まれているのも特徴です。
アンバーワインは、ジョージアで広く食されている牛の煮込み料理やラム肉から、ワインを合わせることが難しいとされている香辛料を使ったインド料理や韓国料理、ダシを使った和食まで、合わせる料理の幅が広いのも大きな魅力。
これに目を付けた世界のトップソムリエたちがレストランで提供することで、アンバーワインの魅力が消費者に広まり、近年ますます脚光を浴びるようになっています。
ブドウ品種
クヴェヴリやアンバーワインと共にジョージアワインを知るための重要なキーワードになるのが、少なくとも525もの数があるジョージア固有の土着品種。
ワイン用ブドウであるヴィティス・ヴィニフェラ種の起源もジョージアにあることが分かっており、ジョージアの土着品種の遺伝子が、世界中の全ての品種に関連性があるということも判明しています。
この525の土着品種のうち、商業用に栽培されているのは40〜45種類ほど。中でも有名なのが、白ブドウ品種の「ルカツィテリ」と「ムツヴァネ」、そして黒ブドウ品種の「サペラヴィ」です。
ルカツィテリ
ジョージアで最も広く栽培されているブドウ品種。「梗が赤い」という意味を持ち、香りは控えめで、タイトでストラクチャーがある力強いワインが生み出されるのが特徴です。
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ムツヴァネ
ムツヴァネは、白い花や桃などの黄色い果実のアロマが特徴的なアロマティック品種。綺麗な酸を備えたワインが造られ、ルカツィテリとよくブレンドされます。
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サペラヴィ
ジョージアの赤ワイン用品種の中で最も栽培面積が広い品種。「染料」という意味があり、果肉まで赤いのが特徴です。
強いタンニンと酸味を備えた熟成能力があるワインを生み出し、著名なワインジャーナリストであるジャンシス・ロビンソン女史も、「偉大なブドウである」と称賛しています。
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ワイン産地
山岳地帯が国土の80%を占めるジョージアには、10の栽培地域があり、18のアペラシオンが登録されています。その中でも重要なのは最大産地である東部の「カヘティ」地方と、西部の「イメレティ」地方です。
カヘティ
ジョージアのブドウ栽培面積55,000haのうちの70%を占める最大産地が、東部に位置するカヘティ地方。登録されている18のアペラシオンのうち14がこのカヘティ地方にあり、白ワインで有名な「ツィナンダリ」や、サペラヴィのセミスイートワインが造られる「キンズマラウリ」などのアペラシオンを擁します。
牛や豚のグリルなどのお肉料理やシチューなど、重厚な食文化があるため、長期間果皮や種と共に発酵した力強いアンバーワインや赤ワインが多く造られています。
イメレティ
西部を代表する産地。カヘティとは対照的に、ハーブや野菜、鶏肉やクルミなど、軽めの料理が有名です。
イメレティではクヴェヴリは「チュリ」と呼ばれ、地上に設置して地上の開けた空間で使われることが多いのが特徴。また、果皮や種の熟度が低いためマセラシオン(醸し)の時間を短くするため、軽やかでタンニンが柔らかく飲みやすいワインが造られています。
まとめ
ワイン発祥の地というオリジナリティ、独自の製法や多様な土着品種、そして料理との相性の良さから近年ますます注目を集めているジョージアワイン。
ワイン好きの方はもちろん、これからワインを飲み始める方も、ジョージアワインを通して、ワインのルーツとその奥深さを味わってみてはいかがでしょうか。
ジョージアのワイン一覧
<参考>『2018ソムリエ協会教本』一般社団法人日本ソムリエ協会 GEORGIA The Cradle of Wine, LEPL National Wine Agency