現在、チリワインは日本の輸入量がフランスを抜きNo.1となり、広く親しまれています。
今回の研修レポートでは、今や日本の食卓には欠かせないチリワインの歴史をはじめ、チリの人々の食文化をご紹介します。
パイス復活への取り組み
初日に訪れたミゲル・トーレス・チリでは、チリワインのルーツとも言えるブドウ品種「パイス」をもう一度復活させようと様々な取り組みを行っています。
今から500年前、パイスはイエズス会によってスペインのカナリア諸島から持ち込まれました。その後、チリで初めてブドウ栽培が行われた場所と言われるイタタ・ヴァレーに植えられ、チリワインの歴史が始まります。
パイスは手間が掛からない上、収穫量が多いため、当時はカサ増しのために多く栽培されていました。しかし、農家にとっては利益が少ないため、その後は衰退の一途をたどっていきました。これを復活させようとしたのがミゲル・トーレス・チリです。
チリワインの歴史を語る上でパイスは欠かすことができず「大切にすべき」との考えから、タルカ大学(チリ)と共同で研究を開始し、2011年にエステラード・シリーズが誕生しました。前述のとおり、パイスは利益が少ないため、ミゲル・トーレス・チリでは、フェアトレード(公正取引)を実施し、生産者を守っています。
パイス100%でワインを造りたい生産者には、これまで培ってきた技術を伝えて醸造の委託まで行っています。また、エステラードの名前も使用可能という、チリに根差したワイン造りを行っています。
チリの食文化
チリの人々の生活になくてはならないのが、チリ流バーベキュー「アサード」です。週末には家族や友人たちが集まり、アサードを楽しむそうです。食材は巨大な牛肉やラム肉が中心で、低温でじっくりと火を通し、シンプルに塩のみで味付けされていました。
どの家も大きなグリル台を1台は持っているそうで、いかにアサードが愛されているかが良くわかります。この日は、牛肉が3時間、ラム肉は4時間もグリルしたものをいただきました。
ここまではアサードについて紹介しましたが、チリではシーフードも絶品です。
レストラン「Chiringuito」
今回ランチで訪れたのは、サパヤール湾にあるレストラン「Chiringuito」。近海で獲れた鮮度抜群の魚介を活かした素材重視の料理を存分に楽しむことができました。
今回私たちがいただいたのは、チリで好まれている白身魚「コングリオ」のフライです。日本では見たことがないサイズのフライは、繊細な肉質で脂がのっていてジューシーな味わいでした。
蒸しアワビは、日本で食べる歯ごたえのあるアワビとは違い、とても淡泊で鶏肉のような柔らかい食感で、マヨネーズをつけていただきました。
個性的な土壌
現地で見ることができた山の断面がこちらです。写真の通り、一定の長さで地層が変わり、短いスパンでボーダー模様になっています。これは氷河期のアンデス噴火によるものだそうです。
写真はチリのトップワイナリー、モンテスのトップキュヴェが造られている畑です。地表から70cm下に丸い石と土が混じる珍しい土壌です。こちらはアンデス山頂付近の万年雪から麓の部分までの氷や大きな岩が、水とともに流れてきて形成されています。その後、また長い時間をかけて砂などが堆積し地層を作り上げたことで、唯一無二のワイン生育に理想的な地形になりました。フランス・ボルドーを代表する産地、ポムロルにもみられる非常に稀有な土壌、ブルークレイも含まれているとのことでした。
最後に
現在、温暖化の影響もあり、徐々に畑が南下しているチリは、今後新たな銘醸地が生まれる可能性がある楽しみな産地でもあります。
フランスやイタリアワインに引けを取らない畑も多くあるので、ぜひお気に入りのチリワインを見つけてみてください。
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