アルプスの秘宝、スイスワインの魅力

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公開日 : 2019.5.24
更新日 : 2022.5.23
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スイス風景

マッターホルンやモンブランなど雄大なアルプスが広がるスイス。

造られるワインのほとんどは国内で消費されているため、日本で見かけることは滅多にないかもしれませんが、実は隠れたワイン大国として近年注目を集め始めています。

今回はそんなスイスワインの歴史やワインの特徴についてご紹介します。

目次

スイスワインの歴史

スイスのブドウ畑

スイスワインの始まりは紀元前58年に遡ります。ジュリアス・シーザーがローマ軍を率いてスイスの地に侵攻したときにブドウ栽培とワイン造りがスイス各地に広められました。

その後ワイン造りは衰退しますが、812年、カール大帝の農業振興政策によりワイン造りの技術が進歩し、畑の面積も拡大。この時期から12世紀頃にかけて、聖職権力者を始めとする領主たちが条件の良いブドウ畑を支配し、今日のスイスワインの基礎が築かれます。

現在ローザンヌ市が管理する著名なクロ・デ・モアン、クロ・デ・アベイといった畑も、12世紀に修道士たちが築いたもののひとつです。

その後、20世紀に入ると新品種の開発や古い品種の保護、自然環境に配慮したワイン造りが進められました。少量ながら高品質のワインを生み出す隠れたワイン産地として、海外でも広く知られるようになりました。

スイスの気候風土

スイスの風景

東はオーストリア、西はブルゴーニュ、南はピエモンテやロンバルディア、北はドイツと、東西南北ワインの銘醸地に囲まれているスイス。

その気候は多様性に満ちており、産地ごとに豊かな個性が表現されています。

土壌はジュラ紀・白亜紀の地層が中心。ブドウ畑は標高375〜1100m、アルプスの山々に守られるように広がり、河川や湖が太陽の恵みとなり、良質なブドウが生み出されています。

栽培されている品種

ブドウ

スイスワインと言えば、白ブドウ品種のシャスラが有名。

栽培面積の約60%を占め、フランス語圏を中心に栽培されていますが、ヴァレー州ではファンダン、ジュネーヴ州ではペルランと呼ばれるなど、スイス国内でも呼び方が異なります。

シャスラの特徴はフルーティーな香りと軽やかな酸味。湧き水のように清らかで、柑橘類の淡い風味とじんわりと広がる旨味を備えており、「食通が最後に辿り着くワイン」とも称されています。

一方で、黒ブドウで広く栽培されているのはピノ・ノワール。ドイツ語圏では個性豊かな赤ワインが、フランス語圏では「ウイユ・ドゥ・ペルドリ」などのロゼワインが造られます。

ピノ・ノワールに次ぐ栽培面積を誇るのが、ボジョレーで有名なガメイで、この品種からは、ガマレやガラノワールといった交配品種がスイスで生み出され、フランス語圏を中心に徐々に栽培が増えています。

スイスの主なワイン産地

スイスの風景

スイスのワイン産地は、フランス語圏スイス・ロマンド、イタリア語圏スイス・イタリエンヌ、ドイツ語圏のスイス・アルマンドの三つに大別できます。

中でもワイン造りが盛んなのがフランス語圏のスイス・ロマンドで、ヴァレー州やヴォー州、ヌーシャテル州(三湖地方)といった有名なワイン産地が広がっています。

スイス最大のワイン産地「ヴァレー州」

スイスワインの約50%を生産しているスイス最大のワイン産地、ヴァレー州。

ブドウ畑は標高650〜800mの傾斜地に広がっており、ヨーロッパの中でも標高の高い産地として知られています。

代表的なブドウ品種は白ブドウ品種のシャスラ。ヴァレー州ではファンダンと呼ばれ、昼夜の寒暖差や渓谷を吹き抜ける風によって、アルプスの空気そのままに清らか、上品でありながらもミネラル感に溢れ、メリハリの効いたワインが生み出されています。

また、ピノ・ノワールやガメイも有名で、二つの品種を85%以上使用した「ドール」も名産品として知られています。

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シャスラの故郷「ヴォー州」

ジュネーヴ湖の北側にあり、シャスラが生産量の60%以上を占めるヴォー州。

研究によってシャスラの故郷であることが明らかになっています。また、ブドウ畑の美しい景観とワイン造りの長い歴史を持つラヴォー地区は、2007年に世界遺産に認定されたことでも有名です。

年間の日照時間は1800時間、降水量は1100mm。多様な土壌と湖の影響を受けて、多彩な味わいのシャスラが生み出されています。また、品種改良も盛んに行われており、ガマレやガラノワール(注1)といった品質の高い交配品種も生み出されています。

(注1)ガマレ種とガラノワール種は、ガメイとドイツの固有品種ライシェンシュタイネールとの交配で作られたスイス生まれのブドウ

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多様なワインを生む「ヌーシャテル州」

スイス西部、フランスとの国境線沿いに位置するヌーシャテル州。

430〜600mの標高に位置し、ジュラ紀の石灰粘土質土壌が特徴。フレッシュで微発泡のシャスラや、瓶内二次発酵のスパークリングワイン、ヴァン・ムスー、ブドウを陰干しにして造る甘口のヴァン・ドゥーが造られます。

そしてヌーシャテル州のワインの中でも有名なのが、ピノ・ノワールから造られる美しい色調のロゼワイン、ウイユ・ド・ペルドゥリ。スイスワイン独特のゆったりとした雰囲気が漂う、わずかな甘みと柔らかな酸味のバランスが心地良いロゼワインです。

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まとめ

生産量のほとんどが国内で消費され、輸出はわずか1%という幻のスイスワイン。日本で見かける機会は多くありませんが、2000年以上のワイン造りの歴史があり、スイスが誇るシャスラから、交配品種などの新しい品種まで、多様な魅力が広がっています。

また、高標高で生み出される繊細な味わいは、日本食との相性も抜群。寿司屋の銘店などでも採用が増えているそうです。機会があればぜひ「アルプスの秘宝」スイスワインの魅力を味わってみてください。

<参考>『2018 ソムリエ協会教本』一般社団法人日本ソムリエ協会

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