フランスワインなら任せて!という人でも、少しマイナーな産地のワインになると手付かずなこともあるのではないでしょうか?
今回はヨーロッパ最高峰のモンブランを擁するサヴォワ地方のワインについてまとめてみました。
サヴォワワインの歴史
帝政ローマの文人であり政治家のガイウス・プリニウス・カエキリウス・セクンドゥス(小プリニウス)や、作家のコルメラが残した記述によると、紀元前1世紀にはサヴォワに畑では農業が行われていたとされています。
中世には修道士によって栽培や醸造の技術が向上し、ブドウ畑も拡大します。16世紀から18世紀にはさらにブドウ畑が増え平地から標高1,000mまで埋め尽くすようになり、サヴォワのワイン生産は全盛期を迎えます。
しかし1860年、サヴォワはフランスに併合。南フランスのワインと競争を余儀なくされ、フィロキセラ禍によって苦しい状況に立たされます。
20世紀に入ると世界大戦や経済危機があり、ワイン造りにも影響が及ぶことになりました。
その後、20世紀半ばに初のAOCが認められたことで全体的なワインの質も向上。2014年ヴィンテージからは、AOCヴァン・ド・サヴォワにおいて瓶内二次発酵で造られた発泡性の白ワインが「クレマン」と呼べるようになったことが話題になりました。
サヴォワの気候風土
サヴォワはスイスとイタリアの国境、アルプス山脈の麓に位置しています。ブドウ畑は谷間にある標高250m~500mの斜面に広がっています。
大陸性気候ですが、南風と西風によって大陸性特有の厳しい気温差はあまりありません。また、年間降雨量は1000m以上と多いです。
土壌は、白亜紀の石灰質土壌、氷河が運んだ沖積土、泥灰土などが混在した多様な土壌となっています。
主なワイン産地
ここではサヴォワの代表的な産地についてご紹介します。
AOCヴァン・ド・サヴォワ
サヴォワ地方全域を包括するAOC。赤、白、ロゼ、発泡性の白とロゼが造られていますが、生産量の4分の3が白ワインです。
赤ワインとロゼワインには、モンドゥーズ、ガメイ、ピノ・ノワールなどの品種が認められています。
味わいは果実味豊かで飲みやすいものが多い中で、モンドゥーズ主体のワインはスパイシーで骨太なワインとなっています。ロゼは淡く軽快な飲みやすいものが多く流通しています。
白品種は、ジャケール、アルテス、シャルドネ、などが認められています。
白ワインは軽快で辛口、微炭酸を感じるワインもあります。酸味がすっきりと伸びやかなものが多いです。
それぞれの品種は単一、または複数の品種をブレンドして使用されています。
セイセル
サヴォワ中西部にあり、ローヌ川の両側にブドウ畑がある産地です。アルテスから造られる白ワイン(非発泡、発泡性)が生産されており、モレットが使用されたものはセイセル・モレットを名乗ることができます。
サヴォワの中で最もコクや厚みがあり、長期熟成も可能。花やフルーティーな香りが特徴的で、フレッシュな飲み心地となっています。
発泡性のワイン、セイセル・ムスーはアルテス、シャスラ、モレットの3品種が認められており、辛口や、やや甘口のワインが生み出されています。
栽培されている主な品種
サヴォワでは多くの土着品種が栽培されています。代表的な三つのブドウについて説明します。
モンドゥー
サヴォワ独特の品種で、とても個性的な品種として知られています。フルーティーな一方でスパイスの風味も持ち、5~6年熟成されたものは「山のワイン」と呼ばれるにふさわしい癖のある味わいを楽しむことができます。
アルテス
上品で気品ある高級白ワインを生み出します。コクや香り高さに定評があります。
ジャケール
収穫量が多い品種で、サヴォワのワインには多く使用されています。フルーティーでキュート、シャープな味わいのワインを生み出し、シュール・リー(注1)で造られた場合はかすかに発泡したものも。
(注1)滓を残したまま数ヶ月保存する製造法で旨味を引き出します。
おすすめのサヴォワのワイン
最後に、サヴォワのおすすめワインをご紹介します。
こちらは先ほどご説明した土着品種のジャケール100%で造られた白ワイン。
辛口タイプの白ワインで、クリアで涼やかな余韻がお楽しみいただけます。
日本のワイン評価誌で旨安ワイン特集に掲載されたこともある実力派。サヴォアのワインを知るにはうってつけのワインです!
まとめ
土地独特の風味や味わいである“テロワール”を活かしたワインが多く生産されているサヴォワ。
すぐ近くに位置しているジュラ地方とセットで語られることも多く、他の地方に比べ目立たない存在ですが、生産者たちの土地への愛情を感じるワインも少なくありません。
少し変わったフランスワインを、と思い立った日にはサヴォワを思い出してみてくださいね。
<参考>『2019 ソムリエ協会教本』一般社団法人日本ソムリエ協会