ピノ・ノワールの突然変異種(クローン)であるピノ・ブラン。「黒いピノ」という意味のピノ・ノワールに対して、ピノ・ブランは「白いピノ」という意味で、その名の通り白ブドウです。
ちなみにピノとは松という意味で、小粒な果実がびっしり付いた小さめの房が、松ぼっくりの形に似ていることからこう呼ばれています。
そんな黒ブドウから派生した白ブドウのピノ・ブランとはどんなブドウなのでしょうか?
今回はピノ・ブランについて詳しく紹介致します。
目次
ピノ・ブランとは
ピノ・ブランは白ワインやスパークリングワインの原料となる白ブドウ品種で、黒ブドウ品種であるピノ・ノワールのクローンの一種です。原産地はフランス北東部のアルザス地方とされています。
現在は本拠地であるアルザス地方をはじめ、イタリアやドイツで主に生産されています。イタリアではピノ・ビアンコ、ドイツやオーストリアではヴァイスブルグンダーと呼ばれています。
ブドウの実は小粒で果皮が薄く、外見がシャルドネと類似していることから、様々な産地でシャルドネとピノ・ブランが混同されていた時期がありました。
ピノ・ブランはいずれの産地でも早飲み用の辛口白ワインに仕上げられることが多く、スパークリングワインの原料としても使用されています。
ピノ・ブランの主な産地
主要な産地はフランスとドイツです。詳しく見ていきましょう。
フランス アルザス地方
フランス北東部のライン川を挟んでドイツと国境を接するアルザス地方がピノ・ブランの産地です。アルザスの土壌は花崗岩質から火山性堆積岩、泥灰岩質と複雑に織り成しており、そのテロワールの多様性が複数のブドウ品種の栽培を可能にしています。
ピノ・ブランはいわゆるアルザスの高貴品種(注1)ではありませんが、アルザスの耕地面積の約20%を占め、リースリングと並んでこの地の主要品種となっています。
アルザス地方のほぼ全域を包括するA.O.C.アルザスまたはヴァン・ダルザスは、多くの場合単一品種から醸造されエチケットには品種名が表記されます。しかし、ピノ・ブランの場合はオーセロワ(注2)とブレンドした場合もエチケットにピノ・ブランと表記することが可能です。
また、ピノ・ブランはリースリングやシャルドネ、ピノ・グリ等とブレンドして造られるアルザス地方の発泡性ワイン、クレマン・ダルザスの原料としても使用されています。
(注1)リースリング、ピノ・グリ、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネール
(注2)フランス南西部で多く生産されている黒ブドウのオーセロワ(=マルベック)とは異なる。
ドイツ バーデン地方
ライン川に沿って南北に約300kmに渡りブドウ畑が細長く続くバーデン地方は、ドイツでは最も日照に恵まれた暖かい産地。主にピノ・ノワールやピノ・ブランなど、ブルゴーニュ系のブドウが多く栽培されています。
ドイツではピノ・ノワールのことをシュペートブルグンダー、ピノ・ブランはヴァイスブルグンダーと呼んでいます。
このブルグンダーとはドイツ語でブルゴーニュを意味し、ブドウ品種の場合は「ピノ」に置き換えることができます。
ヴァイスはドイツ語で白色という意味ですから、ヴァイスブルグンダーはピノ・ブランとなります。
バーデン地方では、シュペートブルグンダーやグラウブルングダー(=ピノ・グリ)とともに、ヴァイスブルグンダーからも辛口の高品質なワインが造られています。
その他、ピノ・ブランの産地として特筆しておくべき地域はイタリア北部で、フランチャコルタなどスパークリングワインの原料として多く栽培されています。
また、古くからブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方でも栽培されており、シャンパーニュの原料としても使用が認められていますが、作付面積はシャンパーニュ地方全体の0.3%(注3)にも至りません。
(注3)www.champagne.fr シャンパーニュ委員会公式HPより
ピノ・ブランのワインの特徴
ピノ・ブランはブドウ自体に特徴的な香りがないため、テロワールや醸造技術を反映して様々なスタイルのワインが造られます。
アルザス地方では、微かなスパイスのニュアンスがあり、クリーミーでまろやかな味わいのワインになります。早飲みタイプに仕上げられることが多く、アルザスワインの中では求めやすい価格であるのが魅力です。
ドイツでは、しっかりとしたボディが新樽の風味を受け止めている高級シャルドネのようなスタイルが主流。
イタリアのピノ・ビアンコは、アルザスやドイツに比べると軽やかで、青りんごや洋ナシの香りにミネラル感のある味わいです。
いずれにせよピノ・ブランのワインは、シャルドネと比べると酸味が穏やかで、まろやかな味わいが特徴と言えます。
なお、ドイツやオーストリアでは遅積みや自然凍結させたブドウから造るアイスヴァイン等、甘口ワインもピノ・ブランから造られています。
ピノ・ブランのワインに合う料理
ピノ・ブランのワインは野菜や魚料理はもちろん、さっぱりとした肉料理や卵料理にも合わせられます。
特にアルザス地方やドイツでよく食されるハムやベーコンといった加工肉類をシンプルに調理したものとよく合います。酸味のあるマスタードとも相性が非常に良いので、お肉や魚料理のソースや、付け合わせ野菜のドレッシング、ディップなどに是非マスタードを活用してみてください。
また、アルザス地方のウォッシュチーズ「マンステール」もおすすめです。熟成の進んでいない若いマンステールなら、クセも少なく食べやすいでしょう。是非、ピノ・ブランのワインとのマリアージュをお試し下さい。
ウォッシュチーズについて
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最後に、ぜひ一度お試しいただきたいピノ・ブランのワインをご紹介します。
ピノ・ブラン / トリンバック
まず、おすすめするのがフランス・アルザス地方の生産者、トリンバックが手掛ける1本。
こちらのワインは、アルザスのピノ・ブランらしくフレッシュな果実味広がる、ふくよかな味わいが魅力です。
オーセロワがブレンドされていることにより、バランスのとれた味わいとなっています。
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ヴァイスブルグンダー・トラディション
こちらはドイツの名門家族経営ワイナリーが手掛けるヴァイスブルグンダー100%のワインです。
このワイナリーが構える場所はドイツでも最も温暖な気候であり、豊かな果実味の風味と酸味のバランスが絶妙なワインに仕上がります。
ハーブの爽やかな香りに旨味が凝縮した白ワインです。
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まとめ
ピノ・ノワールから派生したピノ・ブランの特徴、お分かりいただけましたでしょうか?
「ピノ・ブラン」と一括りに言っても味わいは産地によって大きく異なります。いろいろな産地を飲み比べてみるのも楽しいですよね。
また、ピノ・ブランは汎用性に富んだブドウなので、生産者の個性も反映されやすいブドウと言えます。
是非、生産者や産地ごとに飲み比べてみて、好みのピノ・ブランのワインを見つけてみてください。
参考文献
・日本ソムリエ協会 教本 2019
・森本育子「アルザスワイン街道」