みなさま、如何おすごしでしょうか。大名古屋ビルヂング店の鎌田でございます。

ジャズの流れるカフェで物思いにふけりながらこの原稿にむかっております。

ぼーっと視線を上げると楽しそうに談笑する声とともに食事を取る人たちの笑顔が目に飛び込みます。マスクを付けて出歩くことがなくなって久しいなとしばし昔日を思い返しながら今、時代の節目について考えているところです。

「パラダイムシフト」という言葉があります。

1962年、トーマス・クーンが「科学革命の構造」で提唱したこの概念はその時代の中で当然とされていた価値観や考え方が劇的に変化していく様を意味します。

歴史上においては産業革命やフランス革命、我が国における明治の御一新など先行する時代の生活様式すら一変させてしまったような出来事が一例でしょうか。

その意味において記憶に新しい2019年末からのコロナ・パンデミックは私たちの生活に大きな影響を与えました。マスク着用は半ば義務化され、今となっては懐かしい響きすらあるソーシャルディスタンスの徹底は、これまでの常識を書き換えてしまったかにも思えたものです。現在、日常生活においてはほとんど以前と変わらない毎日が戻ってきました。

当店のワインバーでも連日多くのお客様がワインを楽しまれ、私たちに素顔で笑いかけて下さいます。しかし、パンデミックを経たことによって変わった制度や物の見方までもが全てもとに戻ったわけではなく、この4年間は間違いなくひとつの時代の転換点として多くの人の心に刻まれたのではないでしょうか。

時代の転換点。ワインの世界においてもこれまでの価値観が一変することはしばしば起こってきました。古くはシャンパーニュ。今では比類なきスパークリングワインの産地として名高いこの地方も、かつては非発泡性ワインの産地としてフランス王家にワインを献上していました。また、人々の嗜好も移り変わるものです。今ではワインに限らずお酒の流行はキレのある辛口が主流ですが、昔は甘口のワインこそが至高であり、かつスタンダードでもありました。

ワインを飲みながら時代の節目を考える時、絶対に外すことのできないひとつの銘柄が思い浮かびます。

イタリアワインの至宝 「サッシカイア」

１本のワインがイタリアのワイン法を変えたあまりにも有名なシンデレラストーリーはエノテカ商品ページにも詳しいため差し控えますが、ひとことでまとめるならば

“自由を求めてはじめた法の規定に縛られないワイン造りが、その圧倒的品質ゆえに法の追認を受けた”とでも申せましょうか。この後に続いた数々の規定に捉われないワインたちが「スーパータスカン」と呼ばれるイタリアワインの一時代を築いたことも面白いエピソードではありますが、私が注目するのはサッシカイアが既存のワイン造りという無意識化の常識を飛び越えたことです。ここには多様な個性を尊重するという現代社会におけるワイン造りへと接続する考え方が確かに見てとれます。

正しく、サッシカイアは時代の転換点となる扉を開いたのです。

現在、当店には最新ヴィンテージである2021年 サッシカイアが入荷致しました。

世界的に影響力のある専門誌「ワイン・アドヴォケイト」において2016年以来５年ぶりとなる100点評価を獲得した素晴らしい1本です。

2021年は先にも述べたコロナ・パンデミックがまだまだ先行きの見えない状況下にあり、日本も世界も不安の只中にいました。

そのような中でもワインの生産者たちは手を止めず歴史に残る傑作を造り続けてくれました。奇しくも、ワインの一時代を築き、時代の転換点を演出してみせたサッシカイアがこの年に造ったワインで専門誌の最高評価を受けたということも歴史の偶然が用意した嬉しい贈り物かもしれません。

当月はワインバーにおいても21年サッシカイアを提供中。(本数に限りがあるため無くなり次第、予告なく終了いたします。あらかじめご了承下さいませ）

日常を取り戻した当店のバーで、辛かったあの日々が思い出となるような素敵なワイン体験はいかがでしょうか？

スタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。