皆様、いかがお過ごしでしょうか。

佐野店の寺内でございます。

今回は私がプライベートで購入したエノテカのワインを、なんとなく合うのではないかと思って揃えたおつまみを添えて、その美味しさを検証していく謎の箸休め企画を書かせていただこうと思います。

さて、第6回目となる今回は、イタリア・フリウリの生産者イエルマンが造る「アフィックス・リースリング」をお送りいたします。

エノテカで働く私のプライベートなワインの楽しみ方、是非とも肩の力を抜いて覗いてみてください！

この時の私は、悩んでいました。

今晩のお供の生春巻に併せる白ワインを選んでいた最中、彗星のごとく現れた（？）2本の白ワイン。どちらも生春巻と併せたら絶対に美味しい、しかしどちらか一方を選ばなければならないという状況にいたのです。

★トラミネール・アロマティコ / イエルマン

イタリアのゲヴェルツトラミネールを使用した1本。ゲヴェルツのボリュームある果実感は、エスニック料理の味をより引き立ててくれそうです。

★アフィックス・リースリング / イエルマン

イタリアのリースリングってあんまりメジャーじゃないよね。と思いつつ前々からトカゲのエチケットが気になっていた1本。有名産地と比べてどんな味わいなのか、この機に深めてみるのもありですね。

悩んでいたのはイタリア北東部フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の開拓者イエルマンが造る2本。

フリウリは現代イタリア白ワインの聖地というだけあり、州で造られるその殆どが白ワイン。伝統品種から国際品種まで幅広いラインナップが魅力の地域です。

どちらも捨てがたいと悩んでいたところで、アフィックスのトカゲから「あたしと生春巻でデュエットしちゃいなよ」とアプローチされた気がしました。

であれば私の答えはひとつ。トカゲからの熱烈なアプローチを受けることにしました。

水のトンネルをくぐるような雨中の帰路、靴がぐっしょりと濡れてしまいましたが足取りは軽やかです。

なにせ生春巻と白ワインは、以前からずっと試してみたかったペアリングだったのですから。これからの素敵な晩酌を想像すると、高揚感が止まりません。

家に帰り身支度を整えて、そして生春巻を用意して、早速抜栓！

グラスに注ぐとやや緑がかったレモンカラーの彩り。香りはパイナップルやライチ、白桃のような果実に、ホワイトスパイスや石灰のようなニュアンスも感じます。

口当たりは南国フルーツのように穏やかな果実感が優しく広がり、熟れたように芳醇でとろみのある舌触りがなんともユニークで印象に残ります。最後は、白い花や青りんごを思わせるどこか爽やかな余韻で全体を綺麗にまとめ上げているようです。

アルザスのリースリングと比べると酸は穏やかで果実感は少し複雑。全体的にふくよかなスタイルでペトロール香はほぼ感じません。目を閉じて味わうと、癖も味も違うことがよく分かります。

次は念願の生春巻と一緒に。根菜とライスペーパーが織りなす独特な食感が楽しく、甘辛いチリソースと海鮮の旨味がたまりません。幾千とある料理の中で私を最も幸せにしてくれる素材の味です。

そこに今回の主役を投じると、更に際立つ味覚との黄金比。フローラルで芳醇な果実感は生春巻の繊細な味わいを邪魔しませんし、チリソースの風味で広がった口内を爽やかな余韻で満たしてくれます。これほどまでに両者が引き立ち、馴染み合うペアリングは他にありません。

しばらくは溢れ出る多幸感に浸り、そしてまたゆっくりと両者の味を堪能。素晴らしきかな、ワイン人生。

今回は私が以前から密かに実現させてみたかった、生春巻と白ワインとのペアリングを試してみました。生春巻と併せるならどの地域の白ワインがいいかと考え続けて、最終的に行き着いたのがフリウリ。今回は振ってしまいましたが、迷っていたトラミネール・アロマティコも、エスニックな料理と試してみたいですね。

フリウリに限らず、ピエモンテ州のランゲなどでも見かけるようになったイタリアのリースリング。イタリアへの国際品種の進出に改めて注目してみても面白いかもしれません。