ブドウを原料とするワインの他にも、果実を原料とするお酒はたくさんあります。
例えば、りんごを原料とするお酒がシードルやカルヴァドス。近年、シードルは日本でも見かけることが多くなってきました。
同じりんごを原料とするシードルとカルヴァドスは何が異なるのでしょうか?
今回はカルヴァドスというお酒について、その楽しみ方とともに紹介したいと思います。
カルヴァドスとは
カルヴァドスとは、フランス・ノルマンディー地方のカルヴァドス県とその近隣の県で造られるアップルブランデーのことを言います。
アップルブランデーとは、りんごを発酵して造るアップルワイン(=シードル)を蒸留して造るものです。主にフランス北部やイギリス、アメリカで造られており、フランスでは「オー・ド・ヴィー・ド・シードル」と呼ばれます。
カルヴァドスはA.O.C.(原産地名称保護)に認定されているため、カルヴァドス県とその近隣の県で造られた「オー・ド・ヴィー・ド・シードル」のみが名乗ることができるのです。アルコール度数は最低40度、最低2年以上の熟成期間が義務付けられています。
ノルマンディー地方には500種以上のりんごがあると言われていますが、カルヴァドスの原料としては230種のりんごと121種の梨が認められています。
なお、カルヴァドスは洋梨から造られる醸造酒であるポワレも30%まで原料としてブレンドすることが可能です。ポワレをブレンドすることで味わいのバランスが整います。
製法
ここでは、蒸留酒であるカルヴァドスがどのように造られているのか、詳しく解説したいと思います。
りんごの収穫は機械または手作業で行われます。木をゆすってりんごを落とし、拾い集め、そのまま風通しの良い場所で数週間追熟させます。
醸造所に運ばれたりんごは破砕、圧搾してジュースを取り出し、発酵させシードルを造ります。一般的なシードルは、発酵が完全に終わる前に瓶詰めされるので、瓶内で残りの発酵が起こって二酸化炭素が発生し微発泡となります。アルコール度数は4~5%程です。
次に、シードルを蒸留します。単式蒸留機の場合は2回、連続式蒸留機の使用も認められています。アルコール度数72度以下で蒸留。蒸留は10月1日に始まり、翌年9月30日をもって終了します。
そして、リムーザンやトロンセ産のオーク樽(古樽が適している)で最低2年間熟成させます。熟成表示は以下の通りです。
熟成期間 | 名称 |
---|---|
最低2年 | Trois Etoiles(トロワ・エトワール) |
Trois Pommes(トロワ・ポンム) | |
VS | |
最低3年 | Vieux Réserve(ヴュー) |
Réserve(レゼルヴ ) | |
最低4年 | V.O. |
V.S.O.P. | |
Vieille Réserve(ヴィエイユ・レゼルヴ) | |
最低6年 | Napoléon(ナポレオン) |
Hors d'Age(オー・ダージュ) | |
Extra(エクストラ) | |
Très Vielle Réserve(トレ・ヴィエイユ・レゼルヴ) | |
XO | |
Très Vieux(トレ・ヴュー) |
トロワ・エトワールのカルヴァドス
オー・ダージュのカルヴァドス
産地
前述の通り、カルヴァドスはフランス北部ノルマンディー地方のカルヴァドス県とその近隣の数県で造られるアップルブランデーで、以下三つのA.O.C.が認定されています。
- カルヴァドス
- カルヴァドス・ドンフロンテ
- カルヴァドス・ペイ・ドージュ
カルヴァドス
ノルマンディー地方広域のA.O.C.で、オーク樽で最低2年間熟成させなければなりません。蒸留法に規定はありませんが、主に連続式蒸留機で蒸留されています。
比較的手頃な価格のものが多いので、カルヴァドスを初めて飲むという方におすすめです。
カルヴァドス・ドンフロンテ
ノルマンディー地方中央南部に位置するドンフロンテ地区は三つのA.O.C.の中で最も面積が狭いため、生産量もカルヴァドス全生産量の1%程度となっています。
この地区はりんごと並んで洋梨が多く生産されており、ポワレは30%以上ブレンドされます。また、オーク樽で3年以上熟成させることが義務付けられています。
カルヴァドス・ペイ・ドージュ
ペイ・ドージュ地区はノルマンディー地方の中央から北東部に位置します。ポワレの使用は30%以下、単式蒸留器で2回蒸留して造ることが義務付けられています。
オーク樽での熟成期間は最低2年以上。カルヴァドスの三つのA.O.C.の中では最上級品と位置付けられており、有名ブランドのほとんどがこの地域で生産されています。
飲み方
カルヴァドスは食後酒として飲むのが一般的です。アルコール度数40度を超えるブランデーですが、りんごの甘酸っぱい香りと口当たりのよさから、同じブランデーのコニャック、アルマニャックに比べて飲みやすく感じるかもしれません。お酒に強い人なら、まずはストレートやロックで楽しむのが良いでしょう。
食後にカルヴァドスと合わせるおつまみは、チーズがおすすめです。カルヴァドスの産地のノルマンディー地方はフランス国内でも有数の乳製品の産地で、白カビチーズのカマンベール・ド・ノルマンディーはこの地方を代表するチーズです。
少し熟成が進んで風味の強くなったカマンベール・ド・ノルマンディーと、ストレートのカルヴァドスは最高の相性です。機会があったら、ぜひお試しください。
そうは言っても、アルコール度数の高いカルヴァドスにはなかなか手が出ないという方も多いでしょう。そんな場合は、カクテルで楽しんでみてはいかがでしょうか?
カルヴァドスの香りや味わいをそのまま楽しめるうえに飲みやすいのがブラー・トニックです。作り方はカルヴァドスをトニックウォーターで割るだけ。カクテルの雰囲気も楽しみたいなら、レモンやライムを浮かべても良いでしょう。
また、カルヴァドスはお菓子作りでも活躍します。焼き菓子の生地に染み込ませたり、フルーツのジャムやコンポートに数滴垂らせば、香りがぐんと良くなります。アップルパイやタルトタタンなど、りんごを使ったお菓子なら言わずもがなです。
まとめ
アルコール度数の高いカルヴァドスは保管に気を使う必要もないので、開栓後もゆっくりと飲むことができます。
アペロや食前酒にはカクテルで、食後酒にはロックやストレートで、自家製スイーツに合わせて。産地や熟成年数で飲み比べてみるのも面白いでしょう。