長い歴史と伝統をもち、世界最高峰のワイン産地と称されるフランス・ボルドー。ワインの産地といえば、真っ先にその名を挙げる方も多いでしょう。
ボルドーは世界最高レベルと名高い醸造方法や設備など常に最先端の技術を取り入れながら、種類・価格も様々なワインが数多く造られている銘醸地です。
今回はそんな王道のワイン産地であるボルドーについて、ソムリエの解説付きで詳しくご説明します。
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解説してくれるのは、田邉公一さん
J.S.A認定ソムリエ 飲と食の様々な可能性を拡げていく活動をしています。 2003年:J.S.A認定ソムリエ資格取得 2007年:ルイーズ・ポメリー ソムリエコンクール優勝 2018年:SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL資格取得 Twitter:@tanabe_duvin Instagram:@koichi_wine
気候と風土
フランス南西部に位置し、大西洋とそこに流れ込むジロンド川の支流に囲まれたボルドー地方。その名は「水のほとり(Au bord de l’eau)」という古語から付いたと言われています。
海洋性気候と呼ばれる海の影響を強く受ける気候で、年間を通して温暖かつ降雨量が多い土地となっており、ワイン用ブドウの栽培地として最適な土地です。
ブドウ畑は、ピレネー山脈から流れるガロンヌ川と、中央高地から流れるドルドーニュ川がボルドー市のすぐ北で合流し、ジロンド川となって大西洋に流れ込む、この三つの河川の流域に広がっています。
川の上流から下流方向を見た際に右手側の岸を右岸、左手側の岸を左岸と言い、右岸と左岸どちらで造られたかによってボルドーワインの味わいは大きく異なります。
恵まれた土壌と環境で生産されるボルドーワインの特徴は、長期熟成が可能であることですが、特に気候と日照時間の条件が良く、完熟したブドウが収穫された年に生産されたワインは「当たり年(グレートヴィンテージ)」と呼ばれ、人気があります。
ソムリエ解説!ボルドーワインの「当たり年」って?
近年では2015年、2016年、2018年がボルドーにおけるグレートヴィンテージと言われています。 ワインにおけるヴィンテージの良し悪しは、気候に大きく左右されますが、晴天によるブドウの成熟としっかりとした寒暖差による風味の発展、酸の生成等が上手く進んだ年は、ワインにとって良いブドウが収穫できます。 そしてもう一つ重要なことは、ブドウの成熟がピークに達する秋の収穫期のタイミングで雨が降らないことです。 ここが重なってしまった場合、ブドウが水分を吸い上げることで風味が一気に薄まってしまうことになるため、収穫期が晴天に恵まれることはとても重要です。
栽培されている主なブドウ品種
赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、スパークリングワイン、甘口から辛口と様々なタイプのワインが生み出されているボルドー。
その大きな特徴はほとんどのワインが数種類のブドウ品種をブレンド(アッサンブラージュ)して造られていることです。
同じくフランスの銘醸地、ブルゴーニュ地方では単一品種で造られるのと対称的です。
ソムリエ解説!どうして「アッサンブラージュ」するの?
アッサンブラージュとは、日本語に置き換えると「調合」、つまりブレンドを意味する言葉ですが、ボルドーのワインは基本的に、いろいろなブドウ品種のワインをブレンドしてバランスをとりながら個性を生み出します。 一方さまざまな品種をブレンドするスタイルは、その年の各ブドウ品種の出来に合わせてブレンドの比率を変えることで、一つの品種への依存を避けることができるという、リスクヘッジの役割も果たすことができます。 これは毎年の気候変動が激しいボルドー地方において、とても重要なことなのです。
カベルネ・ソーヴィニヨン
ボルドー原産で赤ワインを代表する王道ブドウ品種。
果粒が小さく、果肉に対して種子が大きく、さらに果皮が黒く厚いブドウなので、豊かなタンニンと深い色調を生みます。また、その豊かなタンニンがワインとなった時に長期熟成を可能にします。
比較的温暖な気候で水はけの良い土地でよく生育するため、ボルドーでは砂利質土壌のメドック地区でカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインが造られています。ただ、発芽と成熟が遅いやや晩熟型のブドウのため、収穫の早いメルロやカベルネ・フランとブレンドすることで収穫期のリスクを回避しています。
また、カベルネ・ソーヴィニヨンから造られるワインは非常にはっきりとした個性を持っており、若いうちは特にカシスやブルーベリーのような果実の香りと、ピーマンや杉のような青っぽい香りが特徴的ですが、メルロ等とブレンドし熟成させることで香りや味わいにより複雑性が生まれ、ボリューム感のあるふくよかな味わいとなります。
メルロ
メルロはボルドーで最も広い栽培面積を持つブドウ品種で、カベルネ・ソーヴィニヨン同様ボルドーの赤ワインを代表するブドウ品種です。
果皮が薄く果粒が大きいブドウなので、一般的にはタンニンが少なく、ふくよかで若いうちから飲みやすいワインになります。
生育においてはカベルネ・ソーヴィニヨンより冷たい土壌を好むため、粘土質土壌のサン・テミリオンやポムロールなど主にボルドー右岸の地域でメルロ主体のワインが造られています。
カベルネ・ソーヴィニヨンより成熟させるのが容易な上に早熟で多産のため、ボルドーではカベルネ・ソーヴィニヨンと混植することでバランスをとっています。
メルロは赤ワインの深い色合いを出すうえで欠かせない存在であり、プラムのようなフルーティな香りとやわらかいタンニン、ロースト香が飲みやすさを演出します。
熟成させるとイチジクのような香りを感じさせる鮮やかな変化もメルロの醍醐味と言えるでしょう。
カベルネ・フラン
カベルネ・フランは、房が小さく青みを帯びた黒い果粒で、ブドウの外見はカベルネ・ソーヴィニヨンによく似ていますが、カベルネ・ソーヴィニヨンに比べるとブドウの発芽、成熟ともに1週間程度早く、涼しい環境下でも完熟させることが容易なブドウです。
カベルネ・フランから造られるワインは、おおむねカベルネ・ソーヴィニヨンから造られるワインよりも色調が薄く、香りも控えめでタンニンも少ないのが特徴です。
よって、カベルネ・ソーヴィニヨンのワインより幾分早く熟成するため、ブレンドすることで飲み頃を調整する役割も果たしています。
ボルドーではメインとして使われることは少ないものの、木苺やすみれの花のような可憐な香りや、滑らかで程良い酸味のある上品な味わいに整えるなど、個性の強い品種同士をブレンドする際の優秀なまとめ役を担っています。
ソーヴィニヨン・ブラン
ボルドーの辛口ワインでは欠かすことのできない品種です。
ソーヴィニヨン・ブランから造られるワインは一般的に青みがかった淡い黄色で、豊富な酸を持ち、柑橘類の香りとグリーンやハーブのニュアンスを漂わせた清涼感に溢れた味わいとなります。
単体では比較的早めに飲むタイプのワインとして造られることが多いのですが、ボルドーではセミヨンとブレンドすることで、骨格のしっかりとしたワインとなり、特に甘口に仕上げられた場合は長期熟成も可能なワインとなります。
セミヨン
セミヨンは中甘口と甘口ワインでは主要品種として、また辛口ワインでは一般的にソーヴィニヨン・ブランを補助する目的でブレンドされます。
セミヨンから造られるワインは熟成に耐え得るしっかりとしたボディになりますが、若いうちはあまり特徴がなく香りも乏しいため、強いアロマと高い酸を持つソーヴィニヨン・ブランとブレンドしてバランスを保っています。
また、ソーヴィニヨン・ブランを使用した辛口白ワインにブレンドすることで、味わいにボディを補う役目も果たしています。
そして、セミヨンと言えばボルドーの世界最高峰の甘口ワイン、ソーテルヌに使用されている品種で、皮が薄く、貴腐菌がつきやすいという特徴があります。
セミヨンは熟成した甘口ワインでその真価を最大限に発揮し、ドライフルーツや蜂蜜など無類の素晴らしいブーケと華やかさをワインに与えます。
代表的な産地
ボルドーはエリアを大きく「右岸」に「左岸」分けることができ、同じボルドー産のワインでもその違いによって味わいやスタイルが異なります。
右岸・左岸の有名産地と、各産地の田邉さんおすすめワインをご紹介いたします。
メドック地区
ジロンド河左岸、ボルドー市の北側位置するボルドーを代表する銘醸地です。
全長120kmのワイン生産地域のうち、ジロンド河口一帯をメドック地区と呼びますが、AOCとしては上流の「オー・メドック」と下流の「メドック」で二つに分けられています。
オー・メドックでは砂利質が強いため、水はけが良く暖かい土壌を好むカベルネ・ソーヴィニヨンが主に栽培されており、メドックでは粘土質が強くなるため、オー・メドックと比べてメルロの栽培比率が高くなっています。
また、オー・メドックは、1855年にナポレオン3世による有名な格付けが行われた地域。
格付けされたシャトーはグラン・クリュを名乗ることを許され、さらにその中で1級から5級までにランク分けされており、「ボルドーの5大シャトー」とは、この地区の格付け1級に属する五つのシャトーのことを指します。
田邉さんおすすめワイン ル・メドック・ド・コス / シャトー・コス・デストゥルネル
ボルドー地方のメドック格付けシャトーの中でも、長年に渡って第1級に迫るクオリティを持つと評価され、近年ますます人気が高まっている「シャトー・コス・デストゥルネル」が手がける秀逸な赤ワイン。こちらをお飲みいただくことで、メドック地区のワインのスタイルとクオリティの高さを実感できます。
ル・メドック・ド・コス
赤
パワフル&ストラクチャー
格付け第一級に迫る品質で異彩を放つ、スーパーセカンドの筆頭が手掛ける「手の届くコス・デストゥルネル」。 フレッシュながらも深みとエレガンスを感じる仕上 詳細を見る
4.2
(16件)2016年
5,500 円
(税込)
NEW
サン・テミリオン地区
ポムロールに隣接するグラーヴ(砂利)エリアと、街の周囲に拡がるプラトー(台地)エリア、二つの土壌を持つのが特徴。
グラーヴエリアでは砂礫質に向いたカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンが多く栽培されており、右岸の中でも独特なスタイルのワインを生産しています。シャトー・シュヴァル・ブランがこのエリアの代表的なワインです。
一方、サン・テミリオンの街周辺の台地では、粘土石灰質土壌から優美な味わいのメルロ主体のワインが造られています。サン・テミリオンを代表するシャトー・オーゾンヌはこちらに属します。
田邉さんおすすめワイン クラレンドル・ルージュ サン・テミリオン / クラレンドル (クラレンス・ディロン)
メドック格付け1級に輝く「シャトー・オー・ブリオン」の血統を引く、高貴なボルドーワイン「クラレンドル」。メルロを主体に、カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンを絶妙にブレンドするスタイルは、この産地ならでは。世界遺産でもあるサン・テミリオン地区のエレガントなワインをお楽しみください。
クラレンドル・ルージュ サン・テミリオン
赤
パワフル&ストラクチャー
オー・ブリオンの血統を引く、高貴なボルドーワイン「クラレンドル」。リッチでありながら優美さを兼ね備えた格調高い味わい。 詳細を見る
4.1
(70件)2020年
5,500 円
3,850 円
(税込)
※この商品を含むご注文は11月29日以降に出荷いたします。
グラーヴ地区
オー・メドックの上流、ガロンヌ川沿い左岸に広がる産地。メドックよりも深い砂礫質の土壌が拡がっているため排水性がさらに良く、雨の多かった年には他の地区に比べて品質が高くなる傾向があります。
ワインはカベルネ・ソーヴィニヨン主体で造られていますが、土壌の違いからオー・メドックと比べると軽やかで芳香性の高いワインが多いです。
5大シャトーの一角シャトー・オー・ブリオンは、この地域にありながらも例外的にメドックの格付けに選ばれたことで知られています。
田邉さんおすすめワイン クロ・フロリデーヌ・ブラン / クロ・フロリデーヌ
「白ワインの法王」と呼ばれる造り手が手掛けたボルドーの白ワイン。グレープフルーツやレモン、ハーブの豊かな香り、ジューシーな果実の味わいと生き生きとした酸味、奥行きを感じるミネラル感が特徴の白ワイン。スモークサーモンにグリーンサラダを添えて、レモンを絞って一緒に味わいたい。
ペサック・レオニャン地区
ボルドー市の南側に位置するエリア。
低い丘が連なった地形で、砂が少なく砂利が多い土壌であるため、タンニンと酸のしっかりとした芯の強さがありながら、優美な印象も兼ね備えた、長期熟成型のワインが生み出されます。
メドック地区以外から唯一格付けされたシャトー・オー・ブリオンが存在します。
田邉さんおすすめワイン シャトー・レスポール・マルティヤック / シャトー・レスポール・マルティヤック
このエリアのトップクラスの生産者として高い評価を受け続ける「ドメーヌ・ド・シュヴァリエ」が所有するワイナリーが手掛ける1本。カシスや森の香り、豊潤な果実味と緻密なタンニンのバランスが素晴らしく、料理の味わいを引き立てる。牛肉やラムのグリルにマッシュルームのバターソテーを添えて合わせたい。
2015年
5,280 円
(税込)
JS 93
格付け
ボルドーのAOCは下から地方名AOC、地区名AOC、村名AOCまでで、ブルゴーニュのように1級や特級などの畑ごとの格付けはありません。
その代わりボルドーには、四つの地区にそれぞれ独自の格付けがあります。
ソムリエ解説!ワインの「格付け」って?
1855年に発表された「メドックの格付け」を始め、ボルドーのワインは歴史的に生産者に対して格付けの実施が行われてきました。 メドック、グラーヴ、サン・テミリオン、ソーテルヌ等、地区ごとに独自の格付けが存在し、さまざまな波紋を起こしながらも、ボルドーワインの世界的な知名度の上昇、発展に寄与しています。 格付けにより知名度を確立してきたワインが存在する一方で、格付けに認定されていないワインであっても、世界のワインラヴァーを魅了する素晴らしいワインが数多く存在していることも事実です。
メドック格付け
1855年に開催されたパリ万国博覧会の展示品の一つとして、時の皇帝ナポレオン3世の要請を受け、ボルドー商工会議所によって作成されました。
赤ワインと白ワインの二つの格付けが発表されましたが、一般的に1855年の格付けと言えばメドックの赤ワインの格付けを指します。
建前的にはジロンド県内すべてのシャトーを対象としたものですが、作成したのがボルドー商工会議所のため、リブルヌ商工会議所が管轄するドルドーニュ川右岸のサン・テミリオンやポムロールのシャトーは顧みられず、赤ワインの格付けはメドックのシャトーに限定されました。
ただし、唯一の例外として、当時から名声の高かったシャトー・オー・ブリオンがグラーヴから選定されています。なお、格付けは試飲によって決められたものではなく、過去数十年にわたる取引価格をもとに決定されました。
メドックの格付けは第1級から第5級までの5等級あり、1855年4月18日に発表された当初は合計57のシャトーが選ばれました。その後相続による分割や他のシャトーへの吸収などを経て、現在、第1級に5シャトー、第2級に14シャトー、第3級に14シャトー、第4級に10シャトー、第5級に18シャトーの合計61シャトーが格付け表に名を連ねています。
特筆すべきは1855年の制定以来1度だけ見直しが行われ、1973年に第2級のシャトー・ムートン・ロスチャイルドが第1級に昇格したことです。しかし、それ以降見直しは一切行われず、今後も行われる様子はありません。
グラーヴ格付け
1855年の格付けでシャトー・オー・ブリオンを唯一の例外としてグラーヴのワインが選ばれなかったことから、生産者組合の要請に応じ、I.N.A.O.(国立原産地および品質機関)が任命した審査委員会によって作成されました。
メドックの格付け制定から100年近く後の1953年に発表され、1959年に承認されています。
グラーヴの格付けに階級分けはなく、16のシャトー名がワインの色とともに列挙されています。具体的には赤ワインが選出されたのが7シャトー、白ワインが選出されたのが3シャトー、赤ワインと白ワインの両方が選出されたのが6シャトーの合計16シャトーです。
もちろん、メドックの格付けで第1級に選ばれた赤ワインのシャトー・オー・ブリオンもこの格付けに入っています。しかし、白ワインは生産量があまりにも少なくオーナーが辞退したため、格付けに入っていません。
なお、グラーヴの格付けシャトーは全て1987年に制定されたA.O.C.ペサック・レオニャンに属しています。
ソーテルヌ格付け
前述の通り一般的に1855年の格付けと言えばメドックの赤ワインの格付けを指すためあまり知られていませんが、同年のパリ万国博覧会では白ワインも格付けされています。
対象はソーテルヌとバルザック地区の甘口ワインとされました。
等級は三つに分かれており、別格扱いの最高クラスであるプルミエ・クリュ・シュペリュールにシャトー・ディケム、第1級のプルミエ・クリュに11シャトー、第2級のドゥージエム・クリュに15シャトーの合計27シャトーが格付けされています。
サン・テミリオン格付け
グラーヴの格付け同様、1855年のメドックの格付けの約100年後に制定されました。
そして、メドックの格付けが160年以上たった今でも一部の例外を除いてほとんど変わっていないのに対して、生産者主導で行われるサン・テミリオンの格付けは10年ごとに見直しが行われます。これまでに1969年、1986年、1996年、2006年、2012年、2022年の7回にわたって改訂されました。
格付けは第1特別級のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセと特別級のグラン・クリュ・クラッセからなりますが、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセは上級の「A」と下級の「B」に分かれるため、実際には3階級となります。
最高位のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセ「A」はこれまでシャトー・アンジェリュス、シャトー・オーゾンヌ、シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・パヴィの4シャトーとなっていましたが、2022年の最新の格付けでは辞退・撤退などにより、シャトー・パヴィだけが残る事態に。
しかし同時に、これまでプルミエ・グラン・クリュ・クラッセ「B」に格付けされていたシャトー・フィジャックが「A」に昇格したため、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ「A」に格付けされたシャトーは2つとなりました。
その他、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ「B」が12シャトー、グラン・クリュ・クラッセが71シャトーとなっています。
ソムリエ解説!ボルドーの生産者のことを、どうして「シャトー」というの?
シャトーを直訳すると「城」ということになりますが、ボルドーの生産者は歴史的に、ワイン生産により富を築いていく中で、ブドウ畑の近くに位置する醸造所に壮麗なお城を建て、ワイン造りを営んだ大規模な生産者も数多くいたことから、生産者自体のことをそのように呼ぶことになったと考えられます。 ただ実際には、シャトーと名乗る生産者の全てが豪華なお城を所有しているわけではありません。 「シャトー」は、買い入れたブドウからワインを造るのではなく、生産者が所有する畑で栽培されたブドウから造られたことも示しています。
ボルドーワイン豆知識
多種多様の味わいとスタイルがあるボルドーワインを、さらに楽しむための豆知識をご紹介いたします。
ソムリエ解説!ボルドー型のボトルはどうしてこの形をしているの?
ボルドーの主要品種として用いられるカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインは、タンニンが豊富で熟成に向いている分、瓶内で長期間熟成させてから飲むことで、その味わいはよりまろやかになり、風味の複雑性が増していきます。 それと同時に瓶内でオリが発生しやすく、ワインと一緒に飲んでしまうと苦さを感じたり、触覚的な刺激もあり、不快に感じる可能性があります。 そのオリがグラスの中に入らないようにボトル内に留めるためにも、この形状が理想的と言えます。 もう一つの理由として、歴史的にイギリスとの交流が盛んであったボルドーは、船でたくさんのワインを運搬する際に、この形状が有利だったと言えます。
ソムリエ解説!どんな飲み方がおすすめ?
赤ワインについては「ボルドー型」と一般的に呼ばれる口の部分が比較的広い形状のやや大きめのグラスが広く普及しており、そちらを使用するのがおすすめです。 より高価なものに関しては大ぶりにする等、ワインの格に合わせて大きさを調整するのが良いでしょう。 カベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインは渋みが豊かなものや、樽熟成によるスパイスやロースト香を感じるものも多く、飲用温度はやや高めの18〜20度程度が理想的。 よく「赤ワインは常温」と言われますが、室温は赤ワインであってもやや高いため、少し冷やした状態がおすすめです。 渋みが強く感じられる場合は、デキャンタに移すことで、口当たりはより柔らかくなります。
ソムリエ解説!熟成させるときに注意することは?
長く保存し、熟成させるときに最も注意したいのが保管温度です。 例えばワインセラーがない状態で1年間室温で放置すれば、冬は過度に冷やされ、夏は異常に高い温度での保管となり、ワインに大きなダメージを与えてしまいます。特に高温下での保管は絶対にNGです。 また、涼しいところから温かいところへ、そしてまた冷やすというように、保管温度が頻繁に上下するのも良くありません。 冷蔵庫は飲む前に冷やす目的かスクリュー栓の白ワインを一定期間保存しておく場合は問題ありませんが、庫内は非常に乾燥するため、乾燥すると収縮してしまうコルク栓を使用したワインの保存には望ましくないので、十分に注意しましょう。
ボルドーワインにぴったりの料理
格付けシャトーの高級赤ワインから親しみやすい赤ワインや白ワインも素晴らしいボルドー。ワインそのものを味わいだけではなく、料理とのペアリングも楽しみの一つですよね。
赤ワイン、白ワインそれぞれに合う料理や食材、ペアリングのコツを田邉さんにお聞きしました。
ソムリエ解説!赤ワインにあう料理は?
まず赤ワインと白ワインの大きな違いとして言えるのが、赤ワインには渋みの元となるタンニンが含まれていること。 タンニンは脂質と相性が良く、口の中でそれらが合わさることで、タンニンが溶け込んでいき、食材の味わいをさらに引き出してくれます。 その観点から見て、タンニンを比較的多く含むボルドーの赤ワインは、脂質やタンパク質を多く含む肉料理と相性が良くなる傾向があります。 もう一つ重要なこととして「色調」があり、ワインと同系色の食材がより相性が良くなりやすいことから、牛肉やラムは特によく合うと言うことができます。
ソムリエ解説!白ワインにあう料理は?
ボルドーの白ワインは基本的に、ブドウ品種ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのブレンドにより、柑橘フルーツやハーブのフレーヴァーを持つ爽やかな辛口タイプが造られています。 ボルドーはエリアとして海にも近く、シーフードとの相性も抜群。この土地で有名なオイスターやサーモンとはぜひ合わせていただきたい。 その他にもボルドーはホワイトアスパラの産地としても有名で、この土地と白ワインととてもよく合います。 樽熟成したタイプであれば、白身のソーセージのソテーとのペアリングもおすすめです。
まとめ
長い歴史と豊富な経験、恵まれた土壌で高品質なワインが数多く造られるボルドー。
魅力的なワイン一つ一つは知れば知るほど奥深く、様々な味わいを楽しめて、その都度新しい発見もあるはず。
ぜひ色々試して、お好みのボルドーワインを見つけてみてくださいね。
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文=岡本名央