【解消!ツレヅレハナコのワインもやもや Vol.8】ワインショップってちょっと行きづらい…?
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お酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家のツレヅレハナコさん。日々、ワインもたっぷり飲んでいます。ただし、品種、産地、ヴィンテージなどが複雑に絡む独自の世界にはお手上げのよう。
Vol.7ではシャンパンとスパークリングワインの違いを習得。今回はギフトを求めてワインショップへの扉を叩きます。
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酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家。著書にサクッと作れる&ちょっとヘルシーな酒の肴のレシピ『47歳、ゆる晩酌はじめました』(KADOKAWA)や、おばあちゃんになっても元気に楽しく飲むために腸をぐるぐる動かす惣菜を仕込んだ記録『ツレヅレハナコのからだ整え丼』(Gakken)などがあり。 自宅用のワインは取り寄せすることが多いそう。
J.S.A.ソムリエ、J.S.A.SAKE DIPLOMA。京都府出身。ワイン好きが高じて2018年にIT企業からエノテカへ転職。都内2カ所で販売職を経験後、マーケティング部にてコンテンツの作成に携わる。 店舗で勤務していた頃はお客さまとの会話も楽しみの一つだったそう。
河
ハナコさんはワインショップに足を運ばれることはありますか?
ハナコさん
はい、たまーに。ホームパーティーでの手土産を探すときに行きますね。 なぜかというと、ソムリエさんと相談をしたいからなんです。ただ、私もワインの知識を持っていないとダメかもって尻込みすることも。ワイナリーや品種の話題が出てきても広げられる自信がないので……。
河
専門店の扉を開けるのは、ちょっと勇気がいりますよね。 でも、そんなに構えなくて大丈夫ですよ。だって、ワインのことを知ってもらうために僕たちがいるのですから。何でも聞いてください。
ハナコさん
先生にそう言ってもらえると、安心します!
河
ありがとうございます。ワインショップにあるたくさんのワインの中からお目当てと出合うために、ソムリエに伝えると良いポイントを3つに絞ってお伝えしますね。
ハナコさん
さすが、ここも要点を絞ってくださるんですね。
河
はい(笑)まずは用途です。自宅用、ギフト、手土産といった目的があると思います。ハナコさんのケースだと「ホームパーティーへの持参品」とお伝えしたり、そこで並ぶ料理のジャンルやメニューを具体的に知らせるといいですよ。
ハナコさん
そこまで詳しく話していいんですか!?
河
もちろん、大まかな用途でもかまいませんが、より詳しくお話しいただくと、ドンピシャの提案をもらえる確率も上がります。 そして、次は予算です。ショップには幅広い価格帯のワインがあるので、目安として1000円台や3000円前後といった金額を教えていただけると選択肢を絞りやすくなります。
ハナコさん
あのー、本音では2000円台がよくてもその価格で相談するのは申し訳ないから、3000円台でなんて言ってしまいそうです。
河
そのお心遣いもよく分かります。ただ、価格については遠慮なさらないでください。エノテカのショップでは幅広いプライスのワインを揃えているので、予算とギャップのあるワインを勧められて困らないよう気にせずおっしゃってください。
ハナコさん
よかった〜。低予算で相談するのもはばかれるから、目についた1本をさっと手にしてそそくさと帰らなくてもいいんですね(笑)
河
もちろんですよ。 最後は好みです。ざっくりでもいいので、甘口や辛口といった好みのテイストや赤・白・ロゼ・オレンジ・泡など色やタイプの希望をお伝えしましょう。
ハナコさん
「用途」「予算」「好み」の3点で導き出してくれるなんて、頼もしい!プロが出迎えてくれる環境を活かさない手はないですね。
河
そうなんですよ。しかし、ここまでお話ししておいてなんですけれど、この3点すべてを絶対に伝えないといけないというわけではありません。スタッフにおすすめを聞いてみるという手もあります。そうすると自分ではチョイスしなさそうな1本と出合えることもあるので。
ハナコさん
わーそれもそれで楽しそう!それならすぐに試せますね!
河
ハナコさんが手土産としてワインを選んでいただいているように、種類が豊富なワインはギフトとしてもおすすめなんですよ。美しい箱に納められたものやストーリーのある1本など、味わい以外の語り口もあるため、いろんなシーンに対応できます。そして、贈り物を相談する際も先ほどの3点をソムリエに伝えるのがおすすめです。 というわけで、本日のレッスンは実践形式です。これまでの復習もかねてワインショップ・エノテカ 広尾本店でプレゼントを選んでいただきます。
ハナコさん
わーい!ちょうど今週末にワインを贈ろうと考えていました。河先生から独り立ちするのはちょっと緊張しますけれど、頑張ります!
河
もちろん一人ではなくて、ソムリエの力を存分に借りてくださいね!広尾本店スタッフの山下が対応いたします。
~ワインショップ・エノテカ 広尾本店へ移動~
山下
いらっしゃいませ。今日はどんなワインをお探しでしょうか?
ハナコさん
「用途」としてはいつもお世話になっている50代女性の料理家さんへのギフトになります。「予算」は3000円台。 フランスとスイスに住まれていたこともあって、日頃からワインをよく飲まれてます。また、お仕事だけでなくプライベートでも肉じゃがや唐揚げといった家庭料理からフレンチまで幅広く作ってもいるようです。
山下
その方がお好きなテイストはおわかりになりますか?
ハナコさん
以前、その方からサンセール(※1)が好きというのを聞いたことがあります。また、アペロ(※2)も楽しまれているらしい。その時のおつまみはポテチだとおっしゃってたような。あくまでも主役はおしゃべりでそこにワインがあるといいと話されていましたね。なので、そういったシーンに合いそうなものがいいかもしれません。
※1 サンセールは、フランスのロワール地方の白ワイン。白ブドウのソーヴィニヨン・ブランを用いた、辛口で爽やかな白ワインです。 ※2 アペリティフの略称で、主に夕食前に楽しむ軽い飲み物とおつまみの時間を指します。
山下
かしこまりました。では、まずこちらはいかがでしょう?ワシントン州(アメリカ)で造られるマシューズのコロンビア・ヴァレー ソーヴィニヨン・ブランです。料理家の方がお好きなサンセールと同じソーヴィニヨン・ブラン100%です。 サンセールと比べると、酸味がややおだやかで、白桃のようなふくよかさがありしっかりとしたジューシーな味わいです。そのためワイン単体でもひっかかりがなく美味しく楽しめます。ポテチにも合いそうです。
ハナコさん
すごい!理想とする1本にもう出合えた気がします。これに決めたいところですけれど、他にもおすすめはありますか?
山下さん
もちろんです。では、オーストリアの人気ワイナリー、ドメーヌ・ヴァッハウの1本をご紹介いたします。 グリューナー・ヴェルトリーナー フェーダーシュピール・リード・コルミッツというもので、この地を代表するブドウ品種のグリューナー・ヴェルトリーナーというブドウを使った白ワインです。
ハナコさん
初めて聞く品種だ!ちなみに基本品種のシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングだとどれに味わいが似ていますか?
山下さん
基本品種だとリースリングに近い味わいです。リースリングと比べると酸味はややおだやかで洋梨や桃のような風味が感じられます。 なんといっても白コショウを思わせるスパイシーな香りが特徴で、アペロの後に始まる食事のいいアクセントにもなりそうです。
ハナコさん
白コショウのようなスパイシーさって、すごく魅力的。こちらでお願いします。
山下
ありがとうございます。
河
ハナコさん、ワインショップでのお買い物はどうでしたか?
ハナコさん
目的や予算などの要点はお伝えしつつも、専門的な話をしているわけではないのに、 私のプレゼントをしたいという気持ちに寄り添って言語化してくださる姿が印象的でした。場の雰囲気や料理を含めて相談していくのは、ワインならではですね。 そして、ソムリエさんから教わった情報はそのまま渡す時にネタとしても話せるなと。お店を訪れるなら会話をして選んだ方が思いがけない1本と出合えて、世界が広がりますね。この連載を通じて品種や地域が分かるようになっているからか、山下さんのお話もスルスル入ってきました。学んできたことが身に付いている実感もあって楽しかったな。
河
うれしいです!もし、プレゼントを贈る相手のワインの好みが分からなければ、第1回目にもお伝えしたように、その方の他に好きなお酒や料理などを言うだけでも、私たちソムリエにとっては選ぶヒントになるので助かります。
ハナコさん
ここでもこれまで習ってきたことが使えるとは!!
河
僕もかつてショップで働いていたころ、何気ない会話からお相手に喜んでいただいた提案もありました。 詳しく話を伺ってみると同僚が転職するため、そのお見送り会で渡すワインを探しているということでした。そこでアルゼンチンの赤ワインをおすすめしたんです。というのも、そのワイナリーの名前が「渡り鳥」を冠したものになっており、これから転職される方に「次の場所でも頑張ってほしい」という意味合いを込めると素敵だなと思ったからです。
ハナコさん
すごい素敵な提案!点と点をつなげて教えてもらえるのはワインショップの醍醐味かもしれない。 プレゼント選びの時はもちろん、家飲み用でもソムリエさんと話ができるのは自分の好みを把握できる近道にもなりそうですね。
文=松岡真子 イラスト=鈴木七代
ハナココラム:取材を終えて
ワインショップに入ると、お店のスタッフがスッと近づいてきて「何かお探しですか?」などと声をかけてくれます。わかりますよー、ワインビギナーさんはこれが恐怖!「いえ、特に……」などと、目も合わせずコソコソと店の端っこに避難したりして。
実は私も、ワインを飲み始めた当初はずっとそんな感じでした。でもある日、「むしろ私みたいに詳しくないお客のためにこそ、スタッフさんがいるのでは?」と開き直ったら大正解。だって、お店で働く方々はスペシャリストであり、生粋のワインラヴァーでもあります。「いくらでも聞いてくださいっ」という気持ちでウズウズしながら(しかも無料のサービス!)、あなたを待っているのです。
いざ今回、河さんの解説を受けてから向かったのは「ワインショップ・エノテカ 広尾本店」。さすが本店、プライスカードを見るだけで震える商品も多数ありますが、デイリーに楽しめるものも豊富にそろっていました。担当してくれた山下さんもとてもおだやかな対応で、自然に会話をしていけばこちらに専門知識がなくても目的に合ったワインが導き出されていくのが印象的でした。そうそう、プレゼントする相手の情報は、あればあるほど良いというのも驚き。最終的に「コレだ!」と候補を挙げてくれる姿は、もはや名探偵!?
今回は、実際にホームパーティーへプレゼントのワインを持参。選ばれし「グリューナー・ヴェルトリーナー フェーダーシュピール・リード・コルミッツ」を開栓しました。お相手に感想をお聞きすると、「ミネラル感があって、とても好きなタイプのワイン!」と大好評。ショップで教えてもらったことを、お土産話にできるのも楽しいですね。
実はショップでもう1本、自分用に購入していたのが「クラレンドル・ロゼ」。気温もだいぶ下がってきたので、夕方からのアペロで飲みたいなあとご相談して選んだものでした。合わせるおつまみは、ナツメグやシナモンを効かせたかぼちゃのサモサ風揚げ餃子。「エスニックやスパイシーな料理にはロゼかオレンジ」という教え通り、ぴったりの組み合わせとなりました。
レシピ:スパイスかぼちゃのサモサ風揚げ餃子
【材料 4人分/16個分】
かぼちゃ 200g
牛ひき肉 100g
玉ねぎ 50g
塩 小さじ1/2
シナモン 小さじ1/2
ナツメグ 小さじ1/2
レーズン 大さじ2
クリームチーズ 50g
ぎょうざの皮 16枚
オリーブオイル 大さじ1/2
揚げ油 適宜
香菜、紫玉ねぎの薄切り お好みで
【作り方】
1.かぼちゃは皮と種をとり、3㎝角に切る。水にさっとくぐらせて耐熱ボウルに入れ、ラップをかけて4分ほど加熱する。竹串がすっと通るようになったら、フォークなどでつぶす。玉ねぎはみじん切りにする。
2.フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、玉ねぎを透明になるまで炒める。ひき肉、塩を加えて炒め、肉の色が変わったらシナモン、ナツメグを加える。バットにとり、粗熱がとれたらかぼちゃに加え混ぜ、レーズン、クリームチーズも加える。
3.餃子の皮に16等分して、好みの形に包む。揚げ油を180℃に熱し、餃子を入れて色よく揚げる。器に盛り、お好みで香菜、紫玉ねぎを添える。
文=ツレヅレハナコ 写真=福田喜一
ハナコさんが手土産に選んだワインはこちら
グリューナー・ヴェルトリーナー フェーダーシュピール・リード・コルミッツ
白
エレガント&ミネラリー
繊細なワインで評価を得る、オーストリアのトップワイナリー。熟した果実のアロマとエレガントな余韻が魅力の白ワイン。 詳細を見る
4.1
(8件)2021年
3,300 円
(税込)
WA 90