【解消!ツレヅレハナコのワインもやもや Vol.9】最近よく聞くナチュラルワインってなに?
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お酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家のツレヅレハナコさん。日々、ワインもたっぷり飲んでいます。ただし、品種、産地、ヴィンテージなどが複雑に絡む独自の世界にはお手上げのよう。
Vol.8ではワインショップで「用途」「予算」「好み」を伝えてお目当ての1本を購入しました。おかげでちょっと敷居が高いと感じていたお店の存在がぐっと身近になったそうです。今回は話題のナチュラルワインについて河先生に教わります。
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酒と食と旅を愛する文筆家・料理研究家。著書にサクッと作れる&ちょっとヘルシーな酒の肴のレシピ『47歳、ゆる晩酌はじめました』(KADOKAWA)や、おばあちゃんになっても元気に楽しく飲むために腸をぐるぐる動かす惣菜を仕込んだ記録『ツレヅレハナコのからだ整え丼』(Gakken)などがあり。 ナチュラルワインは約10年前から味わう機会も多かったそう。
J.S.A.ソムリエ、J.S.A.SAKE DIPLOMA。京都府出身。ワイン好きが高じて2018年にIT企業からエノテカへ転職。都内2カ所で販売職を経験後、マーケティング部にてコンテンツの作成に携わる。 ナチュラルワインの魅力はもちろん、今後もあらゆる側面からワインの魅力を発信していく。
河
ハナコさんとワインのもやもやを解消していく連載も、そろそろ佳境に差し掛かってきました。そこで今日はトレンドでもあるナチュラルワインの扉を開けてみたいと思います。ハナコさんは日頃、ナチュラルワインを飲みますか?
ハナコさん
はい。同世代の飲み会ではナチュラルワインを持参することもあります。
河
さすがです。ちなみにどんな印象でしょう?
ハナコさん
10年くらい前に「飲んだ翌朝でも頭が痛くならないし、二日酔いになりづらい」という触れ込みと共に知りました。それを鵜呑みにして目いっぱい堪能したところ、次の日のカラダのダメージはいつもとそんなに変わらなかった(笑)
河
その噂は僕もよく耳にします(笑)たしかに二日酔いしづらいと言われることもありますけれど、科学的な根拠ははっきりしていません。そしてお酒であることには変わりがないのでほどほどに楽しみましょうね。
ハナコさん
おっしゃる通りです。個人的にナチュラルワインは飲んでいてワクワクする感じもあります。口当たりも軽やかで、知らないブドウの味にも出合えるし、ラベルもかわいい。これまでワインと距離の遠かった人も親しんでいるイメージです。かつては珍しい存在でしたけれど、今ではあちこちで見かけるようになりましたよね。
河
日本ではここ10年ほどで広がりました。そもそもの発信源はどこだったかというと、ワインの本場であるヨーロッパになります。今から20〜30年くらい前の話だそうです。
ハナコさん
なんで、ブームになったんですか?
河
この時期くらいから世界的に持続可能な社会への取り組みが行われるようになり、ワイン造りも例外ではありませんでした。次の世代へと土地やブドウ畑を受け継ぐために自然環境に配慮した栽培と醸造をするという生産者が増えてきたんです。また、消費者としては比較的ライトな飲み口も受け入れやすく、造り手の個性が滲むポップなラベルはSNSでも映える。かしこまらずに楽しめるワインとして世界的な流行となったと思われます。
ハナコさん
たしかに、個性的なラベルと味は誰かにおすすめしたくなるかも。あのー、私は上陸当初から飲んでいるとはいえ、いまいちその実態を分かっていないです。そもそもナチュラルワインってどんなものなのでしょう?
河
実は、明確な定義があるわけではないんです。でも、それだとハナコさんのもやもやは解消されませんよね。造り方にスポットを当てると、二つの観点からお話することができるので説明してまいりますね。
ハナコさん
よ!待ってました!
河
まずもっとも重要なのは栽培です。ブドウは基本的にオーガニック栽培をしたものを用いています。
ハナコさん
栽培の方が重要なんですね!
河
そしてもう一つが醸造の観点。できるだけ自然な造り方を尊重しています。
ハナコさん
醸造面で自然ってどういうことですか?
河
大きく二つあって、一つ目は酸化防止剤(※)をはじめとした化学的な添加物の介入をできるだけ抑えている点。二つ目はワインが発酵する時の酵母もブドウの果皮や空気中にある自然酵母を使います。
※ワインの酸化を防いだり、品質を保つために添加される物質のこと。具体的には亜硫酸塩やビタミンCなど。
ハナコさん
なるほど!栽培においても、醸造においてもできるだけ自然な造りをしているのがナチュラルワインなんですね。
河
そうなんです。ナチュラルワインはトレンドとなっているので、新しいジャンルのイメージがあるかと思います。ですが、今のように化学技術が発展する前(19世紀中頃以前)は、ブドウもワインも自然に造られるのが当たり前だったので、その観点からナチュラルなワイン造りは原点回帰と言えるかもしれません。自然な造りをする背景には、土地を大切にしたいという生産者の想いが込められているのです。
ハナコさん
なんと!最近広まったものだと思っていました。
河
たしかにここ数年、新しい造り手がナチュラルワインを手掛けることも多いですが、フランスのボルドーやブルゴーニュなどの伝統的な産地では、ブームになる前からずっとナチュラルな造りを続けている生産者もいます。ポップなラベルのワインだけがナチュラルワインではないんです!エノテカでもナチュラルワインの取り扱いはありますし、畑でのナチュラルな取り組みをしている生産者もたくさんいます!
ハナコさん
なるほど〜。ざっくりと、おしゃれなラベルをしているのがナチュラルワインって考えちゃっていました!ナチュラルワインのイメージがぐっと膨らみました。ちなみにオーガニックワインという呼び方も聞いたことがあります。これって、何が違うんですか?
河
栽培と醸造で自然な造りをしているのがナチュラルワインです。一方、オーガニックワインは基本的にオーガニック栽培のブドウで造られるワインの総称となります。
ハナコさん
なるほど!違いがよく分かりました。ナチュラルワインの味わいにはどんな特徴があるのでしょう?
河
複雑味と旨味が挙げられます。酸化防止剤の使用を控えることで若いワインでも風味豊かで深みが感じられます。また、できるだけ自然に醸造することで旨味も生まれます。
ハナコさん
そういえばナチュラルワインって濁っているものも多いですよね?
河
そうなんです、ナチュラルワインの特徴の一つが、ボトリングする際にろ過しない、いわゆるノンフィルターでの仕上げとなります。それによって濁りの成分が残るのですが、それが旨味を感じる理由の一つなんです!
ハナコさん
ナチュラルワインと一括りにしてもいろんなテイストがありますし、ポップなラベルは文字情報が少ないので一般的なものと比べて読み解くのが難しいですよね。おいしい1本を見分けるテクニックはあるのでしょうか?
河
身も蓋もなくて恐縮なのですが、こればっかりはスタッフやソムリエに聞くのが一番です。これまでお伝えしてきた品種や産地をラベルから読み取ることである程度の傾向は把握できるとは思います。ただ、ナチュラルワインは造り手の個性が色濃く反映されているケースが多く、一概に言い切れないのも実情です。そこがナチュラルワインの面白さで醍醐味でもあります。
ハナコさん
なんだかわからないままに飲んでいたナチュラルワインについて、もやもやが解決されました。引き続き、一期一会を楽しむことにします!
文=松岡真子 イラスト=鈴木七代
ハナココラム:取材を終えて
ここ10年ほど前から徐々に飲む機会が増えたナチュラルワイン。レストランはもちろん、人が集まるときの手土産や、自宅用にも購入しています。
まず惹かれるのは、そのかわいらしくポップなラベル。つい手に取ってみたくなりますよね。それこそワインビギナーさんは、重厚でクラシックなラベルの前ではひるんでしまいがちなもの。ちょっと楽しそうなイラストラベルは、「ハードルが低そう!」と親近感を抱く人も多いのでは。
私もレストランでは、ナチュラルワインに詳しいソムリエさんからすすめられたものを飲むことがほとんど。印象的なのは、味や香りについてはもちろん、造り手のライフスタイルや思想にいたるまで説明してもらえること。その人がどんな想いで、どのようなこだわりを持ってブドウを育て、ワインを造っているのか……。中には、想像を絶するストイックさだったり、家族で動物や野菜も育てて自給自足のような生活をしていたり。その解説を聞くのも楽しみのひとつだったりします。
そんなわけで、飲む機会は多いものの「では、ナチュラルワインとは?」と改めて聞かれると、「自然な造り方をしている生産者のワイン」くらいしか正直言って答えられません。もっと奥深そうだし、まさにもやもや……。でも河先生から「実は明確な定義はない」と聞いてびっくり。それだけ、生産者によってワイン造りはさまざまということなのかしら。
でも、そこはさすが河先生。「栽培」と「醸造」という二つの柱を建てていただいたことで、少しだけ理解が深まりました。確かに、これってつながっている要素でも分けられる要素でもある。このテーマだけで1時間以上、授業を受けられてしまいそう……まだまだ少しずつ勉強しながら、もっとナチュラルワインと仲良くなっていきたいですね。
今回は、できる限りナチュラルな造りをしているパスカル・ジョリヴェの「ピノ・ノワール・アティテュード」に合わせたおつまみを。きれいなルビー色と、ピュアな味わいが印象的です。こんなワインには、アンチョビ風味のキノコソテーをのせたオープンオムレツなんていかがでしょう。ぜひアツアツを召し上がってみてください!
レシピ:アンチョビきのこのオープンオムレツ
【材料 1人分】
卵 2個
A牛乳 大さじ1
A塩 少々
エリンギ 1本
しいたけ 2個
アンチョビ(フィレ) 1枚
にんにく 1かけ
ローズマリー(あれば) 1本
オリーブオイル 大さじ1/2
バター 5g
粗びき黒こしょう 少々
【作り方】
1.エリンギは3等分して縦薄切り、しいたけは薄切りにする。にんにくは包丁の腹でつぶす。卵をボールに入れてよく溶きほぐし、Aを加える。
2.小さ目のフライパンにオリーブオイル、にんにく、ローズマリーを入れて中火にかけ、香りが出たらアンチョビを加えて溶かす。きのこ類を加え、しんなりするまで炒めて取り出す。
3.フライパンをきれいにして中火にかけ、バターを入れて溶けたら一度に卵液を加える。ゴムベラでゆっくりと混ぜ、半熟状になったら火からおろし、きのこソテーをのせて粗びき黒こしょうをふる。
文=ツレヅレハナコ 写真=福田喜一
今回のコラムのワインはこちら
ピノ・ノワール・アティテュード
赤
チャーミング&パフュームド
ソーヴィニヨン・ブランの魔術師と呼ばれるロワールを代表する自然派の名手。ピュアな味わいが魅力のピノ・ノワール。 詳細を見る
4.0
(63件)2023年
3,300 円
(税込)