イタリアを代表するワインの一つである、キャンティ。レストランなどで、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
実は、このワインには波乱に満ちた歴史があり、さまざまな変革を経て現在の地位を築いてきました。
今回は、そんなキャンティの魅力をソムリエの解説とともに、詳しくご紹介します。
キャンティエリアのワイン一覧
解説してくれるのは、田邉公一さん
J.S.A認定ソムリエ 飲と食の様々な可能性を拡げていく活動をしています。 2003年 J.S.A認定ソムリエ資格取得 2007年 第6回 キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエコンテスト優勝 2018年 SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL資格取得 著書『ワインを楽しむ 人気ソムリエが教えるワインセレクト法』(マイナビ出版)2023年12月発売 X(旧Twitter):@tanabe_duvin Instagram:@koichi_wine
キャンティとは?
キャンティはイタリア全土で栽培が盛んなブドウ品種・サンジョヴェーゼを主体に造られる、フレッシュな酸と果実味のバランスに優れた世界中で愛されるワインの一つです。
そしてそのワインが造られる地区をキャンティと呼び、イタリア中部トスカーナ地方の内陸部の幅広い地域にまたがって生産されています。
キャンティのワイン造りの歴史は古く、700年代という中世の頃から多くの醸造家たちが手掛けてきた記録が残っています。
以降品質は進化を続け、20世紀初頭にDOCGに認定されたことでイタリアを代表するワインのひとつとしての地位を確立しました。
キャンティ・クラシコ とは?
キャンティ・クラシコ とはキャンティの中の特に歴史と伝統のある地域で生産される、より厳しい基準を満たした高品質なワインと生産地域を指します。
サンジョヴェーゼ主体で造られ、他のブドウ品種を少量ブレンドされることがあります。
キャンティよりも複雑性を持った味わいで、しっかりとしたタンニンとより豊かな果実味を楽しむことができるワインです。
ソムリエ解説!キャンティとキャンティ・クラシコ の違い
トスカーナを代表する赤ワインとして今や世界的な知名度と人気を誇るキャンティですが、正式な原産地呼称としては「キャンティ」と「キャンティ・クラシコ 」の二つが存在しています。 両者は同じブドウ品種サンジョヴェーゼを主体として造られていますが、違うエリアのブドウ畑から、異なる規定のもと、それぞれ違ったスタイルの赤ワインを生み出しています。 現在のキャンティ・クラシコ は、かつてキャンティと呼ばれていましたが、その世界的な需要に応えるために、20世紀初頭に境界線の拡大が認められ、爆発的にその面積が広がっていきます。 元来キャンティとして生産がされていなかった土地でブドウが栽培され、多くの生産者がワインを造り始めたことにより、品質の差が生まれ始めました。 それによって期待されたクオリティに達していないものが多く出回り始め、次第に評判が落ちていく結果となります。 そこで、キャンティのブランド崩壊に警鐘を鳴らしたのがフィレンツェとシエナの間で伝統的にキャンティを産出し続けていた優良生産者達でした。 1924年に有志が立ち上がり、品質を保護するために「キャンティ・クラシコ 協会」を設立。その後、1984年にキャンティがD.O.C.G.に認定されると、フィレンツェとシエナの間に位置する歴史的なエリアに限り「クラシコ」の表記が可能になりました。 一つの目印として、キアンティ・クラシコ協会に加盟している生産者のワインのボトルには、黒い雄鶏のトレードマークが付けられています。 ワインのスタイルとしては、キャンティは比較的軽やかなタイプが多く生産されていますが、キャンティ・クラシコ は、より凝縮感のある長期熟成も可能なタイプが造られています。
キャンティの格付け
キャンティの格付けは、最も歴史が古い伝統産地キャンティ・クラシコ と、そのエリアを囲むように広がる広域エリアで造られるキャンティ。
さらに、近年キャンティ・クラシコ のうち最高峰格付けとして、グラン・セレツィオーネの三つに分類され、それぞれ使用できるブドウ品種や熟成期間など細かい規定が定められています。
キャンティにピッタリの料理
キャンティにピッタリな、田邉さんおすすめの料理をご紹介します。
ソムリエ解説!キャンティに合う料理は?
キャンティが生産されるトスカーナ州は、郷土料理であるビステッカ・ア・ラ・フィオレンティーナ(厚切りTボーンステーキ)を代表とする牛肉を使った料理で有名で、こちらは特にキャンティ・クラシコとの相性が抜群です。 樽熟成したサンジョヴェーゼの赤ワインがもつスパイスの風味と豊かなタンニンと酸味が、牛肉のステーキの香ばしい風味に同調しながら肉の旨味を引き出してくれます。 そして、キャンティに感じられるアロマと風味、豊かな酸味がトマトを使った料理と非常に相性が良く、トマトソースのパスタとのペアリングはとてもおすすめです。 その他に、軽やかなタイプのキャンティは、ツナやトマトのブルスケッタとよく合います。
キャンティの楽しみ方
幅広い地域で造られ、生産者ごとに異なるスタイルを持つキャンティ。そんなキャンティの楽しみ方を田邉さんに聞きました。
ソムリエ解説!どんな飲み方がおすすめ?
サンジョヴェーゼ主体で造られるキャンティ・クラシコ は、熟成由来のアロマを感じ取るために、ボルドー型のやや大きめのグラスを使用するのがおすすめです。 一方で、比較的軽やかなタイプのキャンティであれば、ボウルの部分がさほど大きくない万能型グラスの方が、香りと味わいをしっかりと感じることができます。 キャンティ・クラシコ のように、渋みがややしっかりとしているタイプの飲用温度は高めの17〜20度程度、通常のキャンティであればやや低めの15〜18度程度が理想的です。 長期熟成タイプのキャンティ・クラシコ やグラン・セレツィオーネに関しては、デカンタージュをしてより香りを開かせるのもおすすめです。
ソムリエ解説!熟成させるときに注意することは?
キャンティは比較的軽やかで早めに消費するタイプが多く、キャンティ・クラシコ は渋みと酸味、風味がより豊かで、骨格のある赤ワインが造られる傾向があります。 渋みと酸味が豊富であるということは、長期熟成のポテンシャルを備えているということにもなります。 熟成することで、香りは複雑性が増し、干しプラムや乾燥イチジクのようなドライフルーツやマッシュルームのアロマが現れ、タンニンは次第に溶け込んだ印象になり、複雑性のある風味が感じられるようになります。 熟成させる際に最も注意したいのが温度で、特に高温下での保管は絶対にNGです。ワインセラーを用意して12〜15℃程度の一定に保ち、光や振動を避けるのが理想です。
おすすめのキャンティ
最後に田邉さんおすすめのキャンティを3本ご紹介します。
田邉さんおすすめワイン ヴィラ・アンティノリ・キャンティ・クラシコ ・リゼルヴァ / ヴィラ・アンティノリ
トスカーナ州フィレンツェの名門ワイナリーとして、広くその名を知られているアンティノリが造る長期熟成を経た赤ワイン。 サンジョヴェーゼと国際品種の絶妙なブレンドによって生み出され、複雑性のあるアロマ、豊かな果実味に溶け込んだ緻密なタンニンとしなやかな酸味のバランスが秀逸。
ヴィラ・アンティノリ・キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ
赤
パワフル&ストラクチャー
1385年より歴史を持つトスカーナワインの牽引者、アンティノリ。ワイナリーの本質とも言える、熟成可能な重厚な造りのキャンティ・クラシコ。 詳細を見る
4.6
(35件)2021年
5,170 円
4,136 円
(税込)
WA 92
田邉さんおすすめワイン ボッロ・ローザ / イル・ボッロ
サルヴァトーレ フェラガモ ファミリーが手掛けるロゼワイン。 赤い果実の香りとフローラルなアロマが魅力的で、生き生きとした酸味とほのかな苦味が料理の味わいを引き立ててくれます。 個人的にも近年注目しているサンジョヴェーゼのロゼ。アペリティフにもピッタリで、カプレーゼのようなトマトを使ったオードブルとの相性も抜群です。
田邉さんおすすめワイン キャンティ・クラシコ ・アマ / カステッロ・ディ・アマ
キャンティ・クラシコ の名だたる生産者の中でも、世界的に高い知名度を誇るワイナリーの一つで、私自身もこれまでにレストランやワインスクールの授業で何度もセレクトし、提供してきた経験のあるお気に入りのキャンティ・クラシコ の1本。 フラッグシップであるサン・ロレンツォの畑の若樹のブドウを使用して造られた秀逸な赤ワインです。
キャンティ・クラシコ・アマ
赤
エレガント&クラシック
巨匠の手腕をお手頃価格で楽しめる、高コスパのキャンティ・クラシコ。若樹から生まれる、生き生きとした果実味が魅力。 詳細を見る
4.2
(57件)2021年
4,730 円
(税込)
JS 93
まとめ
長い歴史を持つイタリアの名産地、キャンティ。
19世紀の改革によって一躍世界に名を馳せた後、品質の低下が懸念されましたが、キャンティ・クラシコ の誕生と共に再び高評価を得ることに成功しました。
今日では、フードフレンドリーでバラエティ豊かな味わいが世界中の食卓を彩っています。ぜひキャンティのワインを試してみてください。
キャンティエリアのワイン一覧
文=岡本名央