ブドウ品種を知ろう!シラー

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公開日 : 2024.3.12
更新日 : 2024.9.27
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シラー

果実味が凝縮した、飲みごたえのある濃厚な味わいとスパイシーな風味の赤ワインを生み出す黒ブドウ品種、シラー。


高級ワインに使用されるほどの高いポテンシャルを備えていますが、栽培が比較的容易であるため世界中で栽培され、コストパフォーマンスに優れたワインも多数生み出しています。


今回はそんなシラーについて、ソムリエの解説付きで詳しくご紹介します。

シラーのワイン一覧

解説してくれるのは、田邉公一さん


田邉公一さん

J.S.A認定ソムリエ 飲と食の様々な可能性を拡げていく活動をしています。 2003年 J.S.A認定ソムリエ資格取得 2007年 ルイーズ・ポメリー ソムリエコンクール優勝 2018年 SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL資格取得 著書『ワインを楽しむ 人気ソムリエが教えるワインセレクト法』(マイナビ出版)2023年12月発売 X(旧Twitter):@tanabe_duvin Instagram:@koichi_wine

目次

特徴

シラーの特徴

シラーはフランス、ローヌ地方原産の黒ブドウ品種で、強い個性を持ちながら産地の特色を色濃く反映したワインに仕上がることから、世界中で様々なワインが造られ人気を博しています。


フランスの他、オーストラリアで主に栽培されており、この地では「シラーズ」と呼ばれます。

シラーの特徴

実は小粒で果皮が厚く、青みがかった濃い紫色をしています。シラーから造られるワインは一般的に色が濃く、しっかりとしたボディでタンニンが豊富なため、長期熟成が可能なポテンシャルを持っています。


また、シラーの特徴と言えばスパイシーさ。その香りは黒コショウに例えられる、強い個性を持ったブドウです。

ソムリエ解説!熟成させるとどうなるの?

シラーから造られる赤ワインは一般的に、渋みは中程度で酸味が豊かであり、好立地にある畑のブドウから造られるワインは、長期熟成が可能です。 多くの場合は、リリース直後から果実味豊かで、渋みとのバランスがとれていることから、数年の内に飲むことが多いですが、先述のように長期熟成が可能なワインに関しては、熟成を経ていくことで、香りは複雑性が増し、凝縮した果実香に加えて、ドライフルーツやさまざまなスパイス、トリュフを想わせる香りが現れてきます。 渋みと酸味は果実味に溶け込んだ状態となり、テクスチャーはとてもなめらかで、複雑性のある風味が感じられるようになります。

ソムリエ解説!「スパイシー」な香りって?

シラーの品種個性として語られることの多い黒コショウの香りは、このブドウ品種に含まれる香気成分であるロタンドンに由来しています。 このロタンドンの香りは、より涼しい環境下で育ったシラーに、はっきりと現れやすいとされており、温暖なオーストラリアのシラーズと比較して、温和な大陸性の気候帯に位置する北ローヌのワインに、コショウをすった時のようなスパイシーな香りや風味を感じることが多くあります。 この風味があることによって、ペッパーステーキのようなスパイスを効かせたお肉料理との相性が高まり、フードフレンドリーな品種として人気が高まっています。

代表的な産地

代表的な産地

原産国であるフランスの他、代表的な産地であるオーストラリアについてご紹介します。

フランス・ローヌ

フランス・ローヌ

原産地であるフランスではローヌ川の渓谷沿いに広がるローヌ地方で主に栽培されており、造られるワインは北部と南部で異なる味わいです。


穏やかな大陸性気候の北部ローヌはローヌ川に沿って広がる花崗岩土壌の急斜面を持ち、南部ローヌよりはなだらかな平地や丘陵地にシラーの畑が広がっています。


この地で赤ワインはシラーのみで造られますが、ワインに気品を与えるための補助品種としてヴィオニエやマルサンヌ、ルーサンヌといった白ブドウ品種を加えて醸造することが認められています。


エルミタージュやコート・ロティは高品質なシラーのワインとして世界的に有名です。


一方、地中海性気候の影響の強い南部ローヌでは、北部よりも広い丘陵地帯にブドウ畑が広がっています。


シラーはグルナッシュを主体とした赤ワインのブレンドに主に用いられ、北部のシラー主体で造られるワインよりも落ち着いたタンニンと複雑味に富んだスタイルのワインに仕上がります。


ジゴンダスやシャトーヌフ・デュ・パプがシラーをブレンドに用いたワインとして有名です。

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南フランス

南フランス

フランス南部では、地中海沿岸のプロヴァンス地方からラングドック・ルーション地方の広い範囲で栽培されています。


典型的な地中海性気候で夏は暑く乾燥し、雨はほとんど降らない、もしくは降っても冬に集中するため、ブドウの生育期にカビ病も少なく、健康なブドウが育ちやすい環境にあります。


南部ローヌと同様、シラーはグルナッシュ、サンソー、ムールヴェードル等とブレンドされ、カジュアルなテーブルワインなどが多数造られています。

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オーストラリア

オーストラリア

オーストラリアではシラーはシラーズと呼ばれており、国内で最大の生産量を誇ります。


タスマニアを除くオーストラリアのほぼ全てのワイン産地で栽培されおり、濃厚で長期熟成可能な高級ワインからカジュアルなデイリーワインまで、様々なワインが造られています。


中でも南オーストラリア州の銘醸地バロッサ・ヴァレーは、日照時間が長くて昼夜の寒暖差も激しく乾燥した気候でシラーズの栽培に最適なため、オーストラリアを代表する高品質なワインが造られています。


また、オーストラリアではシラーズはカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされることも多く、通常どちらの品種が多く含まれているかによって多い順に「カベルネ・シラーズ」もしくは「シラーズ・カベルネ」とエチケットに表示されています。

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ソムリエ解説!産地による味わいの違いは?

シラーはフランスのローヌ地方北部が原産とされていますが、もう一つの有名な産地として、オーストラリアが挙げられます。 オーストラリアでは、シラーのことをシラーズと呼ぶことが一般的で、現代においては、このシラーとシラーズは別の個性をもったワインとして広く認知されてきています。 原産地であるフランスのローヌ地方のシラーは、ミディアムボディで渋みは中程度、酸味は比較的豊かで綺麗に余韻まで続いていきます。香りはブルーベリーやスミレ、品種特有の香りである黒コショウ、やや動物的なニュアンスも感じます。 それに対してシラーズは、フルボディで果実味豊か、しっかりとしたタンニンとなめらかな酸味をもつタイプになる傾向があり、ブラックベリー等の黒系果実やメントール香、チョコレートのようなフレーヴァーを感じるスタイルが主流となっています。

相性の良い料理

相性の良い料理

シラーのワインの特徴はなんと言ってもスパイシーな味わいと豊富なタンニン。洋食、和食、中華それぞれどんな料理が合うのか、田邉さんに聞いてみました。

相性の良い料理

ソムリエ解説!洋食ならどんな料理が合う?

シラーの香りに感じられるスパイシーさと鉄分的なニュアンス、味わいに感じられる緻密なタンニンとなめらかな酸味に対しては、フランス料理のお店でも定番の組み合わせとして知られているジビエの料理がとてもよく合います。 鹿肉や小鳩のロースト、イノシシの煮込みの野生的なニュアンスと鉄分的要素、適度な脂質と深みのある味わいにしっかりと同調し、食材の風味をより引き出してくれます。 これらの料理はご家庭ではなかなか難しいため、ご自宅やホームパーティでペアリングを楽しむ場合は、鴨肉のブラックペッパー風味やローストビーフ等と合わせるのがおすすめです。

ソムリエ解説!和食ならどんな料理が合う?

シラーの香りに感じられるスパイシーさと紫の果実の風味、味わいに感じられる緻密なタンニンとなめらかな酸味、アフターに感じるスパイス感に対して、和食を合わせる場合は、焼き鳥のレバーのタレ焼きがおすすめです。 レバーの持つ野生味と鉄分的な要素は、まさにシラーの赤ワインの風味と類似しており、双方の香りと味わいがとてもよくマッチします。レバーの適度な脂質とタンパク質に、ワインのもつ緻密なタンニンとなめらかな酸味が重なり、料理の味わいをさらに引き出してくれます。 その他に、鰻のきも焼きにも同様の理由でよく合います。

ソムリエ解説!中華ならどんな料理が合う?

シラーの香りに感じられるスパイシーさと紫の果実の風味、味わいに感じられる緻密なタンニンとなめらかな酸味、アフターに感じるスパイスの風味と清涼感に対して、中華料理をペアリングする場合は、麻婆茄子がおすすめです。 豚ひき肉とナスの風味と色素にも同調しつつ、旨味を最大限に引き出し、豆板醤の風味にもしっかりと相乗し、ニンニクと生姜のほのかなスパイシーさと清涼感にもよくマッチします。 麻婆茄子のなめらかな舌触りにもワインのもつテクスチャーがよく合っています。

おすすめワイン

最後に、田邉さんおすすめのシラーを使ったワインを3本ご紹介します。

セラー・セレクション・シラー / シレーニ・エステーツ

日本でも絶大な人気を誇るニュージーランドのワイナリー。 ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、ピノ・ノワールのコストパフォーマンスの高さで特に知られていますが、個人的に、このホークス・ベイのシラーもとてもクオリティが高くおすすめしたい1本。 ニュージーランドワインの新たな一面を体感できます。

セラー・セレクション・シラー
750ml

セラー・セレクション・シラー

  • パワフル&ストラクチャー

  • 2021

    2,200

    (税込)

クローズ・エルミタージュ / シャトー・ド・サン・コム

フランスのローヌ地方南部の著名な生産者であり、日本のワインラヴァーの間でもその名が広く知られ、人気銘柄を生み出しています。 今回おすすめしたいのは、その南仏の実力派ワイナリーが造る、北ローヌのシラーから生まれた赤ワイン。 ペッパーステーキやコショウ風味のあらびきソーセージ等と合わせてお楽しみいただきたい1本です。

クローズ・エルミタージュ
750ml

クローズ・エルミタージュ

  • エレガント&クラシック

  • 2022

    5,060

    (税込)

ブーン・ブーン・シラー・コロンビア・ヴァレー / チャールズ・スミス・ワインズ

オーナー兼ワインメーカーであるチャールズ・スミス氏の経歴はとてもユニーク。かつてデンマークのロックバンドのマネージャーを務めながら、小さなワインショップを経営していました。 その後、ワイナリーを設立して現在に至ります。ユニークなネーミングとボトルデザイン、ワインのクオリティは非常に高く、多くのワインラヴァーを驚かせています。

ブーン・ブーン・シラー・コロンビア・ヴァレー
750ml

ブーン・ブーン・シラー・コロンビア・ヴァレー

  • リッチ&グラマー

  • 2019

    3,850

    (税込)

まとめ

ブドウ本来が持つ個性をしっかりと残しつつ、産地の特性も表現するシラーのワイン。ぜひ色々飲み比べてみて、シラーのワインの奥深さを堪能してください。

シラーのワイン一覧

文=岡本名央

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