シュナン・ブランは主にフランスのロワール地方や南アフリカで栽培されている白ブドウ品種。
極辛口から甘口の貴腐ワイン、スパークリングワイン、酒精強化ワイン、ブランデーと多彩なワインを生み出します。
そんなシュナン・ブランとはどんなブドウ品種なのでしょうか?詳しく紹介したいと思います。
シュナン・ブラン一覧
シュナン・ブランとは
種類 | 白ブドウ |
香り | レモン、桃、白い花 |
味わい | しっかりとした酸味が特徴 |
代表産地 | フランス・ロワール地方、南アフリカ |
シュナン・ブランは、フランスのロワール地方を原産とする白ワイン用ブドウ品種です。
酸が豊富なブドウのため、辛口ワインはもちろん甘口のワインを造ってもバランスが非常に良く、またスパークリングワインの原料にも適しているため世界中で栽培されています。
単一品種ワインとしては長期熟成にも耐えうる優れたワインが生産されていますが、収穫量が多いため日常消費用のテーブルワインの原料や酒精強化ワインの原料としても多く栽培されています。
ブドウの生育に関しては、早期に発芽し成熟が遅いため冷涼な気候のもとでは育てにくくなります。
また、樹木の生長する勢いが良いので栽培管理を行わなければ収量が過剰になりブドウ本来の個性が乏しくなってしまいます。
なお、灰色カビ病(注1)に弱いことも挙げられますが、これが貴腐ワインになると素晴らしい味わいとなります。
シュナン・ブランを原料とするロワールのベーシックなワインや南アフリカをはじめとするニューワールドのテーブルワインは、シュナン・ブラン特有の白い花の香りと、爽やかでしっかりとした酸味があります。
本来、シュナン・ブランは豊富な酸を持つという特徴を除いてブドウ自体がニュートラルな性質のため、気候条件、テロワール、生産者の意向によって造られるワインの味わいは随分変わります。
例えば、もともと冷涼な気候のロワール地方で日照時間が少なかったヴィンテージでは、酸味の強いドライなワインが造られ、未熟なブドウはスパークリングワインの原料に回します。
一方、日照時間が長くブドウがしっかりと完熟した作柄の良いヴィンテージでは、生き生きとした酸とともに凝縮した蜂蜜の香味を有したワインが造られます。
また作柄の良い年に収穫を遅らせて造られた甘口ワインは、黄金色の色合いやカリンや桃のような香りが特徴で、数十年以上も熟成させることができる素晴らしいワインとなります。
(注1)茎、葉、花が褐色に腐敗したのち、灰色のカビに覆われる植物の病害
相性の良い料理
シュナン・ブランのワインに共通するのは酸味ですから、すっきりとした酸味のある白ワインの場合はサラダなどの前菜と、酸味がおだやかでボリュームのある白ワインの場合はムニエルなどしっかりと味付けした魚料理と合うでしょう。
生クリームを使った酸味とコクのあるソースの鶏肉や豚肉料理ともよく合います。
また、カジュアルなシュナン・ブランの白ワインやスパークリングワインには、酸味のあるシェーブルチーズもオススメです。
春はシェーブルチーズの旬でもありますから、少し暖かくなって冷たい白ワインが飲みたくなってくる春先には特にオススメのマリアージュです。
代表的な産地
主な産地はフランスのロワール地方と南アフリカです。それぞれの産地について詳しく紹介します。
ロワール地方(フランス)
ロワール地方ではシュナン・ブランはピノー・ド・ラ・ロワールと呼ばれています。ピノー(pineau)とは松ぼっくりを指すフランス語で、ピノ・ノワールなどと同様にブドウが松ぼっくりに似ていることから、フランスではブドウと同義語として使われています。つまり直訳すると「ロワールのブドウ」という意味になります。
ロワール地方は全長1,000km以上に及ぶフランス最長の河川ロワール川流域に広がるワイン産地です。非常に広域なため、同じロワール地方でも気候、土壌、伝統が大きく異なり、地域によって栽培されているブドウも全く違います。
シュナン・ブランは主にロワール川中流域のアンジュー・ソミュール地区とトゥーレーヌ地区で栽培されています。
アンジュー・ソミュール地区は海洋性気候および半海洋性気候で、夏は暑く冬も温暖で日照に恵まれており、シュナン・ブラン主体の瓶内二次発酵のスパークリングワイン「クレマン・ド・ロワール」が大量に生産されています。また、過熟もしくは貴腐化したシュナン・ブランから甘口の白ワインも多く造られています。
特に、ロワール川支流のレイヨン川流域のコトー・デュ・レイヨン地区は、日当たりが良く風も吹き抜けるので、貴腐化したブドウを収穫することができます。
トゥーレーヌ地区は海洋性と大陸性の影響が交差する気候で、東側はシュナン・ブラン100%で造られる白ワインの産地です。
ロワール川右岸に広がる有名なヴーヴレイ村では、辛口から甘口の白ワインやスパークリングワインが造られており、天候によっては半辛口や半甘口の白ワインも造られます。
南アフリカ
シュナン・ブランは南アフリカを代表する白ワイン品種で、栽培面積は世界一を誇ります。
1655年にオランダ東インド会社のヤン・ファン・リーベックが南アフリカに持ち込んだ品種の一つで、かつてはスティーンと呼ばれていました。
現在、南アフリカの冷涼な気候に適応したソーヴィニヨン・ブランや国際競争性の高いシャルドネへの改植も進んでいますが、シュナン・ブランからスパークリングワイン、甘口から辛口の白ワイン、酒精強化ワインなど様々なスタイルのワインが造られており、その品質は年々向上しています。
南アフリカの主な産地は、西部の西ケープ州にあるブレード・リヴァー・ヴァレー地域で、肥沃なブレード川沿いにシュナン・ブランをはじめとする白ブドウ品種の栽培が盛んです。
降水量が少なく、夏には川が干上がるほど乾燥した気候ですが、灌漑施設の整備と低温発酵技術の進化、ブランデー産業の成長により、商業的成功を収めました。
おすすめワイン
シュナン・ブランのおすすめワインをご紹介します。
こちらは南アフリカの名門が造る、シュナン・ブラン100%のワイン。
フレッシュでキレのある酸味と果実味が余韻まで長く、心地よい飲み口が魅力的です。
毎日の食事にも合わせやすい万能タイプなので、是非お試しください。
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まとめ
ロワール地方の伝統的な産地においては、生産者はシュナン・ブランからどのようなスタイルのワインを造るか、甘口と辛口のどちらを造るか、さらには複数のタイプのワインを造るなら、どのブドウからどんなワインを造るかを日々の状況を見ながら決めていくと言います。
農産物であるワインは本来そうやって造るお酒なのかもしれませんね。シュナン・ブランから造られる様々なスタイルのワインを是非お楽しみ下さい。
参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2018
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