南アフリカワインは、ニューワールドの中でもコストパフォーマンスに長けたワインが多いことで、近年日本でもブームの兆しが見えつつあります。
一筋縄ではいかなかった歴史を経て、生産者たちの努力が実を結びました。今回はそんな南アフリカワインの歴史やワインの特徴についてご紹介します。
南アフリカの歴史
南アフリカで初めてブドウが栽培されたのは1655年。大航海時代にオランダ東インド会社が食品供給地としてケープタウンを寄港地にするようになり、同社の初代現地法人代表であったヤン・ファン・リーベックがケープタウンの地にブドウを植えたことが最初です。それから4年後の1659年2月2日、南アフリカ初のワインが造られました。
1761年にはコンスタンシア産の甘口ワインがヨーロッパ諸国へ輸出されるようになり、イギリスやフランスの王族に人気を博すようになります。19世紀のフランスと英国の戦争を機に生産量が増加しますが、人種隔離政策であるアパルトヘイトが問題視され、20世紀後半から国際的な経済制裁を受け輸出が滞りました。
その後、1994年にアパルトヘイトが廃止されると再び輸出が盛んになり、それまでは質より量が重視されていたワインの品質向上が進んでいきました。現在では国際的に評価されるワインも多く登場し、高品質なワインがお手頃な価格で手に入ることから日本でも人気が高まっています。
南アフリカの気候風土
ワイン産地は国内五つの州で生産されていますが、その9割が西ケープ州に集中しています。
南アフリカは乾燥した温暖な地中海性気候です。西ケープ州は南極から流れ込む冷たいベンゲラ海流の影響で低緯度の割に冷涼であるために、質の高いブドウを収穫することができます。
春から夏にかけては乾燥したケープドクターという風が南東から吹き込みブドウを乾燥させてカビや虫から守ります。このため、化学物質の使用も最小限に抑えることができています。
栽培されている品種
南アフリカと言えば、かつてはスティーンと呼ばれていたシュナン・ブランが有名で、最も栽培されています。約20年前は白ワイン用品種が8割を占めていましたが、現在ではカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズ、ピノ・ノワールとサンソーの交配品種で南アフリカ独自のブドウであるピノタージュなどの赤ワイン用品種も多く栽培されるようになりました。
ワインは一つの品種だけで造られるものだけでなく、ブレンドワインも多く造られています。赤ワインではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、カベルネ・フランのブレンド、白ワインではソーヴィニヨン・ブランやセミヨンをブレンドしたボルドーブレンドが主流です。
他にもシラーズをメインにグルナッシュやムールヴェードルなどを混ぜたローヌブレンド、シュナン・ブランを主体にした地中海ブレンドも人気があります。
また、10年ほど前からは赤ならピノタージュ、白ならシュナン・ブランを主体としたケープブレンドのスタイルも確立し始め、高い人気を誇っています。
南アフリカの主なワイン産地
ステレンボッシュ
多様なテロワールを持ち、降水量に恵まれ、水はけも良いことから高級品種の栽培に適しています。ブドウ栽培面積は南アフリカ最大で、カベルネ・ソーヴィニヨンを筆頭に赤ワイン用品種が6割以上を占めています。
ワイン造りだけでなく、ワイン産業に携わる人材を育てる地でもあります。ステレンボッシュ大学ではブドウ栽培と醸造学の学位を受けることができ、他にもワインの研究を行っているエルセンバーグ農学校やニットフォルベイ研究所などもあります。1971年には南アフリカで初のワインルートが設立され、現在では西ケープ州最大の観光スポットになっています。
フランシュフック
フランス移民が多く、フランスに強く影響された町並みやレストランが美しいグルメタウンです。ソーヴィニヨン・ブランやセミヨンなどの国際品種が多く栽培されています。特にセミヨンは古樹が多く残っていることからワインファンに注目されています。
赤ワイン用品種ではカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズ、メルロが多く、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造られるキャップ・クラシックの産地としても有名です。
ウォーカーベイ
ホエールウォッチングで有名なハーマナスやスタンフォードの街を含む地区です。冷たい海風が影響しているため南アフリカで最も冷涼な気候であり、シュナン・ブランやピノタージュ、ローヌ品種が多く栽培されています。南アフリカに珍しく土壌には粘土質が多く含まれていることから、高品質なシャルドネやピノ・ノワールも栽培されています。
南アフリカワインの今
南アフリカでは、「自然環境保護とワイン産業の共栄」をコンセプトにワイン造りが行われています。1998年に減農薬や減酸化防止剤、リサイクルの徹底や水源などの維持を盛り込んだガイドラインである「環境と調和したワイン生産」(IPW)が制定され、現在では南アフリカのブドウ栽培農家やワイナリーの95%以上がこれに従ってワイン造りを行っています。
2010年ヴィンテージからはワインの品質保証や追跡を可能にした、世界初のサステイナビリティ(持続可能性)を保証する認定保証シールが採用され、該当するワインボトルには淡いグリーンを基調とした植物のイラストが描かれたシールが貼られています。
また、発展途上国で生産された農作物や製品を適正な価格で取引することにより、生産者を持続的に支える「フェアトレード」も盛んに実施されています。労働者環境の整備も進み、2013年には世界で販売されたフェアトレードワインのうち65%が南アフリカ産という実績を残しています。
おすすめの南アフリカワイン
最後に、ぜひ一度お試しいただきたい南アフリカワインをご紹介します。
こちらは南アフリカの上質なピノタージュとシラーズをブレンドした赤ワイン。
しっかりとした骨格を持ち、濃厚な果実味と共に心地の良い余韻が長く続きます。
ピノタージュのキャラクターをしっかりと味わえるので。ピノタージュを試したことがないという方にオススメです。
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まとめ
自然に優しいワイン造りを実施し、さらに生産者を守るフェアトレードも盛んに行っている南アフリカ。ワイン生産の環境を整えながら発展し、現在では素晴らしい高品質ワインがオールドワールドに比べて比較的手の届きやすい価格で手に入れることができます。
アフリカの暑いイメージからワインにも大味なイメージを持つ人が少なくありませんが、実際には上品で繊細な味わいを兼ね揃えたワインが多く生産されています。ぜひ一度、南アフリカワインの素晴らしさに驚いてみてくださいね。
参考『2018 ソムリエ協会教本』一般社団法人日本ソムリエ協会
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