世界最高峰のピノ・ノワールとシャルドネのワインを生産することを使命とし創業された、コスタ・ブラウン。彼らが手掛けたソノマ・コースト・ピノ・ノワールの2009年ヴィンテージが、ワイン・スペクテーターの「2011年ワイン・オブ・ザ・イヤー」に選出され、カリフォルニア・ピノ・ノワールを代表するカルトワインとして名声を確立しました。

近年ではデリケートなバランスと果実味を備えた洗練されたスタイルへと変貌を遂げ、各アペレーションや単一畑の個性を表現したワインを生み出しています。

コスタ・ブラウンの始まりは、1997年にカリフォルニア州ソノマ群、サンタ・ローザの人気レストラン「ジョン・アッシュ＆カンパニー」で同僚だったダン・コスタ氏とマイケル・ブラウン氏がワイン事業を計画し、栽培農家との関係を築き始めたことからスタートします。

ダン氏とマイケル氏はワイン造り未経験者でしたが、1998年には貯金と寄付で1,400ドル（日本円で約20万円）を調達し、設備とブドウ樹を購入。2001年から2004年にかけては投資家を集め、ピノ・ノワールの増産と販売網の拡大を目標に事業計画を図りました。

その後2005年には、ワイン造りにおいてハングタイムと樽熟成期間を長くとり、ブドウに付着する僅かな酵母や粒子などを除去できるマイクロフィルターを使用するという、今までとは異なるアプローチを導入。この頃からワイン評論家たちの間でコスタ・ブラウンの存在が話題となり始め、彼らが手掛けたワインがたちまち高評価に。小さなワイナリーとしては前例のない点数を獲得し、需要が急増しました。

2007年には、カルト的な人気となったコスタ・ブラウンに興味を持つコレクターやワイン愛好家が増え、ダン氏とマイケル氏は満を持してコスタ・ブラウン専用のワイナリー設備を建設。2011年には、ソノマ・コースト・ピノ・ノワールの2009年ヴィンテージがワイン・スペクテーターの「ワイン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、年間No.1ワインとして輝きました。

現在ではソノマ・コーストやサンタ・ルシア・ハイランズの他に、アンダーソン・ヴァレーやサンタ・リタ・ヒルズ、オレゴン州にも進出。また、2020年にはフランスのブルゴーニュにも畑を購入し、世界中でコスタ・ブラウンのスピリットを受け継いでいます。

コスタ・ブラウンが手掛けるワインは、5つの異なる地域から誕生します。

アンダーソン・ヴァレー

コスタ・ブラウンの中では最北に位置する産地。急斜面かつ岩が多くブドウの樹を限界まで押し上げるような露出した地形が特徴です。

ロシアン・リヴァー・ヴァレー

西側に峡谷であるペタルマ・ギャップがあり、海からの冷たい空気が流れ込むため冷涼な気候。他の地域よりもブドウの生育期間が長く、良い酸を保持することができます。

ソノマ・コースト

ソノマ最大のAVA であり、起伏が多く、多様性に富む広域産地。海が近く霧が多いのが特徴。2つのプレートが交差する場所に位置しており、地質は複雑に絡み合っています。

サンタ・ルシア・ハイランズ

モントレー湾から吹き込む海風と霧によって冷涼ですが、標高が高く日照量にも恵まれていることが特徴です。

サンタ・リタ・ヒルズ

ヴァレー内の冷涼な気候と石灰質を含む土壌から特に高品質なピノ・ノワールとシャルドネが生まれます。

コスタ・ブラウンのワインは、オーガニック栽培や持続可能な栽培を行っている畑のブドウを使用。ブドウ樹の平均樹齢は20～25年ほどです。自社畑の比率は年によって変わりますが、全体の生産量のおよそ3分の1。また、ピノ・ノワールには毎年15種類ほどのクローンをセレクトしており、その年らしい完璧さを表現するため、クローンのセレクションや樽などは畑やヴィンテージ毎に調整しています。

醸造面では、ブドウの産地を尊重するための常に新しく最良な方法を模索。2012年に満を持してカリフォルニア・セバストポルの街中に、ワイナリーを移転しました。これまで他社のワイナリーを間借りし、様々な場所でワインを造ってきた経験を生かして、ゼロから理想のワイナリーをデザインし新築。2016年にはシングル・ヴィンヤード用の醸造スペースも完成しました。

また、ピノ・ノワールの発酵・熟成では、複雑味を出すためステンレスとコンクリート、そして木製の、3種類の容器を使用。キュヴェやヴィンテージによって全房比率を変えています。

コスタ・ブラウンが手掛けるワインは、生産地の真髄を表現する「アペレーション・シリーズ」と少量生産の限定キュヴェ「シングル・ヴィンヤード・シリーズ」という2つのシリーズがあります。

アペレーション・シリーズは、アメリカの西海岸で最高のピノ・ノワールとシャルドネを目指して生み出されるシリーズ。カリフォルニア州のアンダーソン・ヴァレー、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、ソノマ・コースト、サンタ・リタ・ヒルズ、そしてオレゴン州のウィラメット・ヴァレーまで、広範囲にわたって生産。それぞれのアペレーションの個性を最もよく反映する畑や、区画のブドウをブレンドすることで、各生産地の真髄を表現しています。

シングル・ヴィンヤード・シリーズは、ソノマ・コーストの有名なギャップス・クラウン・ヴィンヤードなど、それぞれの単一畑の土壌、方角、微気候を深く理解することにより生み出される少量生産の限定シリーズ。ピノ・ノワールを用い、それぞれの土地の個性と「センス・オブ・プレイス」が最も輝く方法でワイン造りを行っています。

彼らのワイン造りにおいて、過去も今も核となっているのは「世界の偉大なクール・クライメート産地を、ピノ・ノワールとシャルドネで表現する」ということです。2000年代は、若々しく、リッチでエネルギッシュなスタイルで愛好家に熱狂的に支持されていたコスタ・ブラウン。当時のアメリカ産ピノ・ノワールのブームを牽引していましたが、そんな濃厚で力強いスタイルから、現在はエレガントなスタイルに変貌しています。

畑の多様化や樹齢の変化、各地でより多く経験を積んできたことにより、自然と洗練されたスタイルに変化。デリケートなバランスと果実味を備えた透明感のあるエレガントな味わいへと変貌を遂げ、華やかさと力強さを兼備した、正確で熟成ポテンシャルに優れたワインを生み出しています。