フランス、ロワール川河口付近に広がるペイ・ナンテ地区最大の産地、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ。産地の名前にもなっているミュスカデから、清涼感のある白ワインが生み出されています。その中でも多様なテロワールを巧みに表現したワインで、レストランや評論家から人気を集めるのがファミーユ・リューボーです。

フランス・ロワール地方は古城が点在し風光明媚な避暑地としても知られながら、爽やかな白ワインを生むフランス屈指の銘醸地。その中でもロワール川最下流の大西洋に近いペイ・ナンテ地区では、清涼感のある香りとフレッシュで軽やかな味わいのミュスカデが造られています。

その中でも単一区画で古樹を栽培し、テロワールを巧みに表現したワインで人気を集めるのがファミーユ・リューボーです。彼らが手掛けるシャトー・テボー2017年ヴィンテージは、2020年のワイン・エンスージアストTOP100において、ミュスカデのうち最高得点を獲得するなど高評価を受けています。また、星付きレストランからの信頼も厚く、世界中の名だたるレストランにオンリストされています。

ファミーユ・リューボーの歴史は古く、1816年に孤児であったジョセフ・グレゴワール氏がナントの病院に迎えられたことから歴史が始まります。彼はワイン生産者の養子となったことで、ワイナリーを後継しワイン造りを始めました。

以降そのワイン造りは家族代々受け継がれ、現在は5代目にあたるピエール氏とその妻シャンタル氏が、彼らの子供たちとともに家族でワイナリーを運営。長い歴史のなかで培われてきた、栽培、醸造の技術を生かしながら、オーガニック農法を採用し、環境に配慮したワイン造りを行っているのです。

ワイナリーのロゴには帽子をかぶった子供が描かれており、これは孤児であったジョセフ氏から始まった家族の歴史や、ナントとの深いつながり、自然への敬意を表すシンボルとなっています。

ファミーユ・リューボーが拠点とするのはペイ・ナンテ地区の中でも、最も有名かつ最大の産地であるミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌ。川や湖に囲まれ、その影響で温和な気候が保たれるため、酸度の高いブドウが育ちます。さらに、土壌は花崗岩や片岩の丘陵地から粘土質まで多様なテロワールを備えているのが特徴です。

ミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌには、性質の異なるテロワールごとに分類された10のクリュ・コミューンがあり、2011年からクリュの地理的表示が可能になりました。ファミーユ・リューボーはその中でもシャトー・テボー、クリッソン、グーレーヌという3つのクリュに畑を所有しており、素晴らしいワインを手掛けています。

シャトー・テボーは「洗練された」、クリッソンは「力強い」、グーレーヌは「バランス」など造られるワインのスタイルもそれぞれの特徴があり、それらクリュの違いを明確に表現できるブドウ品種こそ、ミュスカデであるとオーナーのピエール氏は語り、次のように述べています。

「ミュスカデにはソーヴィニヨン・ブランやミュスカのような華やかな第一アロマはありませんが、テロワールを良く表すブドウと言われています。最も良い出来のミュスカデは、酸がワインにストラクチャーをもたらし、素晴らしい熟成能力があることも魅力です。」

「クリッソン、グーレーヌ、シャトー・テボーのような素晴らしい区画により、ミュスカデの個性とテロワールの自然が上手く表現されています。どの単一区画もミュスカデだけでできていて、同じ醸造を経ているので、それぞれのワインの違いはどの母岩で育ったかによるだけ。それを知ると、ソムリエもジャーナリストも、ワインを知る人皆が驚くでしょう。」

ファミーユ・リューボーは、「素晴らしいワインは素晴らしいブドウから始まる」という哲学のもと、自然を尊重したワイン造りを大切にしています。2015年からオーガニック農法による栽培の採用を開始し、2019年にはフランスのサステナビリティ認証機関、テラ・ヴィティスから認証を取得。また、テロワールとヴィンテージを深く理解するために、ワイナリー独自で開発した気象観測、畑の分析システムを導入するなど、非常に精密なワイン造りが行われています。

収穫では丁寧に選果を実施。圧搾は、シャンパーニュの手法に影響を受け、複数回に分けて行っている点が特徴です。果汁を冷却保管して落ち着かせた後、それぞれの畑の個性を表現するために、野生酵母を使用して発酵させます。

醸造において最も大切にしているのは、ワインを澱と共に熟成させること。これは古くからこの地域で行われてきた伝統的な熟成方法ですが、ファミーユ・リューボーでは熟練の技ともいえるバトナージュ（櫂入れ）技術をもって、独自の手法で熟成させています。

スモーキーさやハチミツの香りなど酸化熟成がどれくらい進んでいるか、またふくよかさやミネラル感等のバランス感などをテイスティングで確かめながら、どれくらいの頻度でバトナージュを行うかを検討。ボトリングするタイミングもヴィンテージとテロワールによって調整することで、キュヴェの個性を見事に表現しているのです。

単一区画の古樹、オーガニック農法、野生酵母を用いた醸造、バトナージュをしながら澱と共に熟成など様々な要素によって生まれる、彼らのミュスカデはキュヴェによって印象が全く異なります。それぞれのテロワールの個性が表現されたキュヴェは一貫して高い品質を誇っており、世界中のソムリエや評論家から高い評価を獲得しています。