1796年に創業し、バルバレスコの黎明期を牽引する生産者の一つとして活躍したパイティン。バルバレスコの生産者の中でも早期にバルバレスコとしてワインの販売を開始し、8世代続けて優良クリュのワインを造っています。ワイン・アドヴォケイト誌にて、「彼らのすべてのワインは何かしらのマジックを持っている」と高く評価されており、力強さを備えながらも、滑らかなと口当たりと洗練されたフィネスを持ち合わせた仕上がりです。

パイティンは、1796年にベネデット・エリア氏が、バルバレスコのネイヴェ村の東側に位置する優良クリュの1つ、セッラボエッラを購入したことで始まった歴史あるワイナリー。1893年には、当時ワイナリーを率いていたファミリーのジュゼッペ・エリア氏がバルバレスコの生産者の中でも早期にバルバレスコとしてワインの瓶詰と販売を行い始め、同産地の黎明期を牽引する生産者の一つとして活躍しました。

その勢いはフィロキセラや第一次世界大戦にも止められることはなく、20世紀に入るとロンドンやニューヨーク、ブエノスアイレスへの輸出を開始しました。しかし、1938年にジュゼッペ氏と跡を継ぐことを期待されていた娘婿が同時に他界。さらに第二次世界大戦の混乱があり、畑の多くを失います。

そんな窮地を救ったのが、1948年にワイナリーを引き継いだセコンド・パスクエロ・エリア氏です。戦後の混乱の中、畑の整備に努め、1953年にはそのほとんどを回復。さらに畑の買い足しも行い、ワイナリーの立て直しに成功しました。現在はセコンド・パスクエロ・エリア氏の息子にあたる、ジョヴァンニ氏とシルヴァーノ氏、甥にあたるルカ氏の3名で、ワインを造り続けています。

パイティンが生み出すワインは、各評価誌から高い評価を獲得しています。ワイン・アドヴォケイト誌の評価を担当するモニカ・ラーナー氏が「点数の高い生産者は彼ら以外にもいるが、彼らのすべてのワインは何かしらのマジックを持っている」とコメント。また、トップ・キュヴェであるソリ・パイティン・ヴィッキエ・ヴィーニェは、2016年版のガンベロ・ロッソにて「努力して探してみる価値がある」と高く評価されています。

バルバレスコには3つの村が存在しており、パイティンがワイナリーを構えるのは、その中の1つであるネイヴェ村。フルボディのしっかりとしたものから親しみやすいものまで多様なバルバレスコが造られており、特に村の西側から生み出されるのは活力を備えたワインです。パイティンはそんなネイヴェ村の南東に位置する優良クリュの1つである、セッラボエッラを所有しています。

セッラボエッラは、南に向かって緩やかに湾曲する急勾配な気温の暖かい丘陵地帯。土壌は2つの地層が混ざる珍しい組み合わせです。石灰岩と砂質土壌を多く含んだ、バルバレスコの南部やバローロのセッラルンガ村の南部などにも見られるサーラバリアン地層と、青い泥灰土に砂も混ざり、マグネシウム、マンガンが豊富な、バローロの西側でも見られるトートニアン地層が組み合わさっています。

畑は3つの区画に分けることができ、中央のソリ・パイティンを挟むように、エルネスティンとトゥールンが両隣に位置します。エルネスティンは果実味とスムーズなタンニンを、トゥールンはアグレッシブさとスパイスのニュアンスをワインに与えます。この2区画をブレンドすることで造られるバルバレスコ・セッラボエッラは、力強さとエレガンスを持ち合わせた独特の味わいのワインです。

そして、セッラボエッラの中で特に優良とされているのが、彼らが創業当時から所有し、古くからネッビオーロに適した土地と言い伝えられている特別な区画、ソリ・パイティンです。名前のソリは「一番最初に太陽が差し込み、雪が解け始める場所」という意味を持っており、このエリアにおいて標高が高く、日当たりが良いのが特徴。生み出される単一区画のキュヴェのソリ・パイティンは、力強い骨格を備えながらも、滑らかなタンニンとフィネスが際立つ仕上がりです。

パイティンが、ワイン造りで一番大切だと考えているのは畑での作業です。「いかに健康で質のいいブドウを育てるか」ということにこだわりを持っており、2000年代初頭から、病害対策には硫黄と銅の天然化合物のみを使用する有機栽培を実践。2015年からヴァロリタリアのオーガニック認証を取得しています。

ネッビオーロの果皮に含まれる個性がテロワールの全てを表すという醸造哲学を持っており、除梗したブドウを横長ステンレスタンクで野生酵母とともにアルコール発酵を実施。ネッビオーロを約1カ月かけて昔ながらの手法でマセラシオンすることで、テロワールの個性をゆっくりと引き出していきます。

バルバレスコはスラヴォニア産とオーストリア産の木樽にて18カ月間以上熟成。その後、清澄とフィルターをせずに瓶詰めさせます。こうして生み出されるのは、パイティンのスタイルである、エレガントなテクスチャーに、パワーとボリューム感が折り重なった魅力的なワインです。