ナパ・ヴァレーに拠を構えるダナ・エステーツ。創業からわずか3年目のヴィンテージでワイン・アドヴォケイトにて100点を獲得するという快挙を達成したワイナリーです。ナパ・ヴァレー屈指の醸造家フィリップ・メルカ氏が創業より監修を務めており、韓国では国賓をもてなす公式晩餐会で供されるなどの華やかな実績を誇ります。また、2012年のプルミエ・ナパ・ヴァレー・オークションでは2009年ヴィンテージの5ケースが７万ドルの最高価格で落札されるなど、その少量生産かつ高品質な仕上がりから新星カルトワインとして認知されています。

ナパ・ヴァレーのラザフォードとセントヘレナの間に拠を構えるダナ・エステーツ。単一畑にこだわり、その品質の高さから、創業して間もなくスター生産者の名声を博したワイナリーです。”Dana”はサンスクリット語で「寛容の精神」の意。この地でワイン造りの礎を築いてきた先人たちへの深い感謝がワイナリー名に込められています。ワイン造りにはナパの歴史や伝統への敬意と、現代的な新しい技術が織り交ぜられており、過去と未来をつなぐワインが生み出されています。

ワイナリーの歴史は古く、ドイツ出身のブドウ栽培家H.W.ヘルムズ氏が設立した1883年まで遡ります。アメリカにおける禁酒法により、ワイナリーは一度閉鎖。1976年にリヴィングストン夫妻が買い取り、リヴィングストン・モフェット・ワイナリーとしてワイン造りを再開しました。そして2005年、韓国で食品流通の一大グループを経営するヒサン・リー氏の手に渡り、ダナ・エステーツが創業されたのです。

ハーラン・エステートやコルギンなどカルトワインの輸入業も営み、ナパワインへ深い情熱を持っていたリー氏は、ワイナリーを買い取った後、約4年の歳月をかけて世界クラスのワインを醸造できるモダンな仕様に再建築。栽培方法も一新し、2008年にはカリフォルニア・サーティファイド・オーガニック・ファーマーズのオーガニック認証（CCOF）を取得します。そして2009年、創業からわずか2年後に仕立てた2007年ヴィンテージにおいて、ロータス・ヴィンヤード・カベルネ・ソーヴィニヨンが、ワイン・アドヴォケイトにて100点を獲得するという快挙を達成しました。

2012年には、同銘柄の2010年ヴィンテージが再度同誌にて100点を獲得。同年のプルミエ・ナパ・ヴァレー・オークションでは2009年ヴィンテージの5ケースが7万ドルの最高価格で落札され、スターとしての認知が拡がりました。また、ヴァソ・カベルネ・ソーヴィニヨンが2010年に韓国で行われたG20の公式晩餐会で、2022年にはバイデン米大統領訪韓時の晩餐会で、国賓をもてなすワインとして振舞われるなど、韓国においてもトップクラスのワイナリーのひとつとして知られています。

さらに、ワイン専門誌『ソムリエ・ジャーナル』では2012年に、「カルト的な地位を獲得する可能性が最も高い新しいワイナリー」としてダナ・エステーツが紹介されました。また『フード＆ワイン』では、2015年に"America's 500 Best Wine Producers"にダナ・エステーツを選出。コンサルタントであるフィリップ・メルカ氏と当時のワインメーカー、キャメロン・ヴァウター氏について「アメリカのカベルネ・ソーヴィニヨンの中でも目を見張るような、驚異的かつ優雅なワインを生み出している」と称賛しています。

ダナ・エステーツはナパ・ヴァレーのラザフォードとハウエル・マウンテンの2地域に4つの畑、計24haを所有。ラザフォードには、なだらかな斜面に位置する比較的冷涼なヘルムズ・ヴィンヤードが、ハウエル・マウンテンには、冷涼な気候に由来する溌剌とした酸を内包した果実が生み出されるハーシー・ヴィンヤード、ワイナリーが所有する中で最高樹齢の西向きのクリスタル・スプリングス・ヴィンヤード、そしてダナ・エステーツを世界に知らしめるきっかけとなった温暖な畑、ロータス・ヴィンヤードが位置しています。

ダナ・エステーツは単一畑にこだわり、テロワールの違いを表現。山本昭彦氏執筆のワインレポートにて、「ナパ・ヴァレーの生産者は、カベルネ・ソーヴィニヨンのスタンダードとリザーヴを出すのが普通だが、我々は単一畑でテロワールの違いを表現する。ブルゴーニュ的なコンセプトを持つ例外的なワイナリーだ。」とワイナリー自身も語っています。ワイナリーでは各畑の約30％を単一畑としてリリース。残りはブレンドしてオンダやヴァソが造られ、年間の総生産量はわずか1万ケース程度にとどまります。リリースされたワインは、独自のプログラムで直接顧客に販売。長期的な関係構築へも配慮し、限られた数量を各国の輸入代理店に割り当てます。

ワイン造りにおいては、カルトワイン全盛期の牽引者として知られるブライアント・ファミリーや、評価誌100点を通算20回以上獲得するハンドレッド・エーカーを手掛けた、ボルドー出身のフィリップ・メルカ氏が監修。彼はロバート・パーカー氏より「世界で最も影響力があるワインコンサルタント」の1人として選出された実力派醸造家です。

90年代初頭以降のナパ・ヴァレーの歴史に対する深い知識と、卓越したブレンド能力を持つことで知られており、ボルドーとナパの両方を理解するパレットの持ち主として、ワイナリーに大きく貢献。ダナ・エステーツのワインはいずれも、一握りのトップ・カルトワインと共通するシルキーなタンニンとピュアな果実の抽出が顕著で、彼の技量が表れています。

ダナ・エステーツの目標は「伝統的で人の介入を最小限にしたワイン造りを通じて、場所と時間の感覚を体現するクラフトワインを造ること」。そのためワイナリーではオーガニック栽培を実施し、2008年にカリフォルニア・サーティファイド・オーガニック・ファーマーズのオーガニック認証（CCOF）を取得しています。また、土壌やブドウ樹の健全性を高めるため、大部分の畑では不耕起栽培を実施し土壌の微生物バランスを保持。これにより出来上がるワインは深みや複雑味を備えます。

さらに、炭素排出の削減や節水など、地球環境にも配慮。除草には羊を活用することでトラクター2台分にあたる炭素排出を削減し、ブドウ樹の樹液・蒸発散量・土壌の水分量をモニタリングすることで灌漑水量を管理し節水に繋げています。

畑の管理には特殊カメラを搭載した航空機を使用。精密な分析に特化したハイパースペクトルイメージングを年3～5回実施し、ブドウ樹の成長や葉の色付き、畑の水分量など、全体を解析することで管理を徹底しています。こうして畑の個性とヴィンテージの特徴をワインへ最大限に反映。調和の取れたワインを生み出しています。

収穫時は畑を何度も行き来し、最も純度の高い果実味と調和のとれたロットのみをダナ・エステーツのワインに使用。醸造では、畑の土壌やヴィンテージの多様性に応じて、直立型のオーク樽やシングルバレル、コンクリートタンクなど様々な発酵槽を使い分けます。発酵後は果汁を樽に移し、その際に果皮などを除去。自然なマロラクティック発酵が行われた後は、キュヴェにより新樽比率を調整したフレンチオークやパンチョン樽にて熟成し、瓶詰めを行います。

このようにダナ・エステーツでは現代的な新しい技術を駆使しながらも、自然の力を活かした伝統的で人の介入を最小限にしたワイン造りが行われています。仕立てられるワインは、カルトワインと称されるにふさわしい滑らかさとピュアさを兼備した、フルボディながら正確で洗練されたスタイルです。