店舗情報
ワインショップ・エノテカ 船橋東武店
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このショップのスタッフレビュー
川島彩
こんにちは、母へのプレゼントに迷ったら、ちゃっかりおこぼれに与ろうと、自分も飲みたいワインを買っちゃう船橋東武店の川島です!
さて、今回のスタッフブログ11話は、毎年母の日が近くなる度に思い出す、とあるお客様とのエピソードを語らせていただきます。
お母さまへのギフト選びに必要なリサーチポイントもご紹介いたしますので、ぜひ最後までお付き合いくださいませ。
(こちらのエピソードはお客様個人が特定されないよう脚色を加え、実際にご紹介したワインと異なるワインを挙げて書かせていただきます)
もう10年以上前になるでしょうか。あれは私がエノテカへ入社する前、近所の飲食店さんへの卸しも行っている街の酒屋さんで、一般のお客様への小売りを行っていた頃のお話です。
商店街の春祭りも終わり、祭り出展の片付けをしつつ、一人で店番をしていたときのこと。初夏を思わせる強い日差しに、春の心地よいそよ風が吹いていた昼下がり。来客を告げるベルの音に作業の手を止めて顔を上げると、逆行でお顔が見えないものの、20代くらいとおぼしきスタイルの男性が店内へ入ってきました。
ワックスで立てられたやや黒髪に戻りつつある金色の短髪、健康的に焼けた肌、黒い革ジャンに白いタンクトップとダメージジーンズ。そして、首とベルトに下がる大ぶりのチェーンに、ズボンの後ろポケットから飛び出る黒い長財布。
“いかにも”な風貌に、失礼ながらやや怯んでしまったものの、私のかけた「いらっしゃいませ」の声に、軽く会釈をしてくれた様子から、お声かけしても大丈夫だと判断した私は、お邪魔にならない位置で待機姿勢を取りました。
当時勤めていた酒屋では、日本酒やウィスキーなど幅広いジャンルのお酒を扱っていましたが、その青年はワインコーナーで右往左往するばかり。何か特定の銘柄を探しているワケではなさそうだと判断した私は、何かお探しものですかと、青年へ声を掛けました。
私を見た青年があからさまに硬直し、視線を上へ、左へ。しばし逡巡し、やがて意を決したように唇を戦慄かせますが、声は小さく、イマイチよく聞き取れません。すみません、もう一度お願いしますと促す気持ちで、首を傾げ、一歩踏み出した私に、青年は大きく咳払いをしました。
「ーー……は、母の日! 近いじゃ! ないッスか!!」
ギャップ効果。通称ギャップ萌え。
一昔前の少女漫画で、不良少年が自分が濡れるのもいとわず、雨に降られる捨て猫へ傘を譲るところを見かけて、ヒロインがキュンとなっちゃうあれです。
肩を怒らせ、不機嫌そうに言い放った青年の姿に、学生時代の心理学知識が、私の脳裏を走馬灯のように駆け巡りました。
いけない、これはいけないぞ。動揺を表に出してはいけない!
まさか“いかにも”なやんちゃ姿をする青年の口から、「母の日」という言葉が飛び出るとはこれっぽっちも想像していなかった私は、競り上がるキュートアグレッションに頬の内側を噛み、拳を握り掌へ爪を立てて耐えました。
あの躊躇う様子から、この青年がこのお店へやってくるまでには、恥ずかしさなど、様々な葛藤があったに違いありません。その勇気を(当時)同世代の私が囃し立ててしまったら、もうこの青年がお母様へプレゼントを贈る機会は絶たれてしまうかもしれません。
それはいけない、いけないぞ。この気持ちを尊重しなければ!!
返事をするまでの約2秒間。「かわいいいいいい!!!!!」という子猫を見つけた時のような絶叫を堪え、私は至極落ち着いた表情と声色で(あったと思いたい)、青年に先を促しました。
お話を伺うに、どうやら普段お母様はスーパーでペットボトルに入った大容量白ワインで晩酌をしているらしく、その姿を見た青年は、「そんな安酒で美味しそうにしているなら、もっと良いワインを飲んだら、一体どんな反応をするのか」と思ったのだとか。
そういえば母の日が近いと気付き、それを口実に白ワインのプレゼントすることにしたそうです。
「ここで一丁、良いワイン飲ませてやろうと思って」
青年曰く、お母様は産地やブドウ品種などにこだわりはなさそうで、昔飲んだシャブリというワインが凄く美味しかったと話していたことがあり、今回の予算は5,000円ほど。
そうとなれば、販売員としての腕が鳴ります。お母さんをびっくりさせましょうね!と意気込む私に、お話をするうちに緊張が溶けてきたのか、ようやく青年は柔らかい笑顔を見せてくれました。
エノテカでも名指しでお探しになる方は多く、飲食店などでも提供していることが多いシャブリは、フランスを代表する辛口白ワインの代名詞的存在。シャルドネという国際品種を使用していて、お母様が普段飲んでいる大容量ワインにも使用されている可能性が高いとご説明すると、青年の目は輝きを増します。
当時取り扱っていたシャブリをカウンターへ全て並べると、その中から一番良いシャブリ(丁度ご予算くらい)をご購入になりました。
今思い返すと、母の日の包装紙で包みましょう!専用のリボンとシールも用意していますよ!と、ラッピングを勧める私の熱量にやや引かれていたような気もしますが……。
無事にお会計を終えた青年はほっと肩の力を抜き、ラッピングに取り掛かる私から少し距離を取って、携帯電話を取り出しました。
「あ? オカン? 今、家いる? ああ、ちょっとこれから行くわ。うん、じゃ」
なんということでしょう、その場でお母様にアポを取り始めたのです。
包装の手は止めずに、私は再び頬の内側を噛んで、萌えの衝動を耐えました。盗み聞きではありません。狭い店内で否応なしに会話(というか青年の発言)が聞こえてしまったのです。そう仕方がない、仕方がないのです。なにより奇声を挙げて地団駄を踏まなかった私は偉い!
「お母さん、喜んでくれると良いですね」
カーネーションがあしらわれた包装紙の上から上品な赤色リボンを巻き、紙袋へ「お母さん いつもありがとう」のメッセージシール貼れば、ラッピングは完成です。
そう言って見送る私に青年は一瞬照れ臭そうな笑顔を浮かべましたが、すぐに拗ねたような無表情を取り繕い、「ッス」と言葉少なく会釈をして去っていかれました。
※補足
こちらのラッピング方法は、当時勤めていた酒屋さんで行っていたサービスです。
エノテカでは、母の日専用の包装紙やリボンはご用意しておりませんので、ご注意ください。
それから数ヵ月後、真夏の盛りに、その青年は再び姿を現しました。
「この間の、あー(りがとうございま)した。なンか、スゲーうめぇって言ってて。こんなん飲んだことねーって。捨てりゃあいいのに、なんか空き瓶も飾ってて」
前回お会いした時よりも言葉数多く、お母様が喜んでくれたお話を聞かせてくれる青年に、私のテンションも上がります。
青年は私のチョイスが良かったと誉めてくださいますが、いやいや、お母様はあなたからの贈り物だから、そんなに喜んでくれたんですよ。だから空き瓶も捨てられないんですよ!
青年もお母様の気持ちは分かっているけど、気恥ずかしさからぶっきらぼうに、呆れた態度を装っているのかもしれないと、食い気味にそう伝えたい気持ちを私はグッと堪えました。
「で、今度は誕生日なンで、もっと良いヤツ飲まして、びっくりさせてやろーと思って」
なんと今回のご予算は1万円。
ならばと、前回のシャブリと同じブルゴーニュ地方の銘醸地で、キリッとシャープな飲み心地が魅力のピュリニー・モンラッシェの白ワインをご紹介しました。
「これ、うまいンすか?」
「うまいッス」
「マジッスか?」
「マジッス」
そんな会話があったりなかったり。
ラッピングの最中にお母様へアポを取る電話を漏れ聞いて、何度目かの衝動を押し止めながら、無事に青年を送り出しました。(前回同様、噛み締めた私の頬肉は無事ではありませんでしたが)
それから私が退職するまで、青年は不定期にお店を訪れては、お母様へのプレゼントを買って行かれるようになりました。もしかすると、帰省の度にワインを手土産にされるようになったのかもしれませんね。
初めてお会いした時の照れ臭そうな仕草が徐々に見られなくなってしまい、私としては少々寂しい気持ちもあったのですが、それだけ青年の中で「お母様へ感謝を伝えることが当たり前になった」ということ。
あれはお会いする最後の機会だったでしょうか。私も見習いたいと正面から伝えたとき、少し大人になった青年の笑顔は、とても無邪気で、まるで少年のようでした。
いかがでしたか?
文字ばかりの私語りに最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
ただいまエノテカでは、母の日フェアを開催中。
ワイン好きなお母さまへのプレゼントに悩まれたら、ぜひお近くのワインショップ・エノテカへ足を運んでみてくださいね。
エノテカスタッフ一同、お母さまへのギフト選びを全力でお手伝いいたします!
それでは最後に、お母さまのお好みを探るリサーチポイントをご紹介します。
■ご来店前のリサーチポイント
①お母さんは、赤、白、スパークリングワイン……どんなワインをよく飲まれていますか?
②赤ワインの場合 → 軽め、渋め、濃いめ、産地など、何かお好きな味わいを何か耳にしたことはありますか?
③白ワインの場合 → 辛口、甘口、さっぱり、産地など、何かお好きな味わいを何か耳にしたことはありますか?
④お好みの味わいを聞いた事がない場合 → 普段飲んでいるボトルは、ボルドータイプ(いかり肩)と、ブルゴーニュタイプ(なで肩)の、どちらをよく見かけますか?
⑤普段ワイン(または他のお酒)を飲まれるときは、お食事中が多いですか? それとも、「ワインとおつまみ」などお酒のみで楽しまれることが多いですか?
他にも、普段のお食事のお好みなどもワインセレクトに重要な情報となって参ります。
事前リサーチしていただけますと、よりお母さまのお好みに近いワインをご提案できるかと思いますので、ぜひサプライズプレゼントをお考えの方は、それとなーく、探ってみてくださいね。
母の日まであと5日!
プレゼントがまだお決まりでない皆さまのご来店、お待ちしております。
次回のスタッフブログは、5月23日(火)頃の投稿を予定しております。
船橋東武店の新メンバーをご紹介できるかも……?
どうぞお楽しみに!
エピソード中では、同生産地ながら、違う生産者のワインをご提案いたしました。
今回は、厚みのある果実感が魅力な、エノテカスタッフからの信頼も厚い「オリヴィエ・ルフレーヴ」のシャブリとピュリニー・モンラッシェをご紹介いたします。
ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。
妊娠中及び授乳中の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与える恐れがあります。
ほどよく、楽しく、良いお酒。のんだあとはリサイクル。