ブドウ品種を知ろう!グルナッシュ

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公開日 : 2024.5.15
更新日 : 2024.9.27
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グルナッシュ

スペインやフランスの一部地域において赤ワインの主要品種として栽培されるグルナッシュはブレンドに用いられることが多く、出来上がるワインの味わいはさまざま。その魅力を知れば知るほどワイン選びの幅が広がる、世界で人気の品種です。


今回はそんなグルナッシュについて、ソムリエの解説付きで詳しくご紹介します。

グルナッシュのワイン一覧

解説してくれるのは、田邉公一さん


田邉公一さん

J.S.A認定ソムリエ 飲と食の様々な可能性を拡げていく活動をしています。 2003年 J.S.A認定ソムリエ資格取得 2007年 ルイーズ・ポメリー ソムリエコンクール優勝 2018年 SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL資格取得 著書『ワインを楽しむ 人気ソムリエが教えるワインセレクト法』(マイナビ出版)2023年12月発売 X(旧Twitter):@tanabe_duvin Instagram:@koichi_wine

目次

特徴

グルナッシュ

スペイン北東部アラゴン州を原産地とする黒ブドウ品種。グルナッシュには白ブドウのグルナッシュ・ブランやピンク色のグルナッシュ・グリもありますが、グルナッシュと言えば通常、黒ブドウのグルナッシュ(グルナッシュ・ノワール)を指します。


スペインではテンプラニーリョ、フランス・ローヌではシラーなどとブレンドされることが一般的で、ジューシーでライトな味わいのワインから長期熟成可能なフルボディなワインまで様々なタイプが造られています。

グルナッシュの特徴

実は果皮が薄いため、タンニン控えめで明るく薄い色合いのジューシーな味わいのワインが出来上がります。


樹勢が強く、暖かく乾燥している環境でよく育ち、萌芽が早いにも関わらず、晩熟で干ばつにも強いため、かなり温暖な地域での栽培に向いた品種です。


長い成長サイクルを経て高い糖度を得ることができるため、南フランスでは甘口ワインの原料としても使用されるほか、果実自体の糖度が高い特徴から、アルコール度数の高いしっかりしたボディのワインも造られます。


気候や土壌が合うと特別な手入れをしなくてもよく育つ品種ですが、痩せた土壌で厳しく剪定をし、完熟してから収穫・選果……というように手をかけて育てると非常に濃厚で長期熟成にも耐えうる高品質なワインとなります。


また、グルナッシュは産地によって下記のように異なる呼び名を持ちます。

グルナッシュのシノニム

ソムリエ解説!熟成させるとどうなるの?

グルナッシュを主体として造られた赤ワインは果実味が豊かでありながら、タンニンは控えめ、酸味も穏やかであるため、樽での酸化熟成により、比較的早い段階から熟成感が現れ始めます。 香りは複雑性が増し、凝縮した果実香に加えて、干しプラムや乾燥イチジク等のドライフルーツやキノコ、リコリスを思わせる香りも現れ、渋みと酸味は果実味により溶け込んだ状態となり、テクスチャーはなめらかで、複雑性のある風味が感じられるようになります。 シラー等の品種をブレンドすることで、熟成に対するポテンシャルがさらに高まります。

ソムリエ解説!グルナッシュをブレンドしたワインはどんな味わいになるの?

グルナッシュから造られる赤ワインは、明るめの色調になりやすく、豊かな果実味と高いアルコールをもち、タンニンと酸味が控えめになりやすい傾向があります。 この品種をブレンドする事により、豊かな果実風味、ほのかなスパイス感とドライハーブのニュアンス、味わいにまろやかさとボディを与えることができます。 特にシラーとの相性が良く、ブレンドされることで双方の特徴が合わさり、色調、タンニン、酸味と果実味のバランスがとれたワインに仕上がります。

代表的な産地

グルナッシュの代表的な産地

原産国であるスペインの他、代表的な産地についてご紹介します。

スペイン

スペイン

国内で黒ブドウ品種第2位の栽培面積を誇り、原産地である北東部・アラゴン州をはじめ、ピレネー山脈の南に位置するナバーラ州やカタルーニャ州など、日照時間が長く降水量の少ない乾燥した地域で主に栽培されています。


スペインの固有品種テンプラニーリョとよくブレンドされ、ボディとアルコール濃度のしっかりしたワインが造られています。

フランス・ローヌ地方

フランス・ローヌ地方

南部ローヌにおいて赤ワインのブレンドやロゼワインの製造に用いられています。


この地方の気候の特徴はローヌ渓谷から地中海に吹き抜ける「ミストラル」という強風で、この風が、雨が降った後に畑の乾燥を助け、カビなどの湿気由来の病気を防ぐ役割を果たします。


加えて南部ローヌは地中海性気候をしており、ブドウの生育期の夏は乾燥していて平均最高気温は30℃に上るため、グルナッシュの栽培に非常に適しており、濃厚で果実の甘みが感じられるワインが造られます。


中でも南部ローヌを代表するAOCシャトーヌフ・デュ・パプやAOCジゴンダスなどでは主要品種として用いられており、高品質なワインが多数造られています。

南フランス

南フランス

主にランドック・ルーション地方、プロヴァンス地方において赤ワインのブレンドやロゼワインの製造に用いられています。


地中海を望む南フランスは典型的な地中海性気候で、冬は穏やかで夏は暑く乾燥し、雨もほとんど降りません。


しかし、夏に吹く強く冷たい風により、ブドウは過度の暑さから守られると同時に乾燥し病害も少ないため、グルナッシュに非常に適した気候をしています。


フレッシュな果実味とフルーティーな味わいの辛口ワインの他、「ヴァン・ドゥー・ナチュレル」と呼ばれる天然甘口ワインが造られており、デザートワインとして非常に高い評価を得ています。

イタリア・サルディーニャ州

イタリア・サルディーニャ州

地中海に浮かぶサルディーニャ島でも多く栽培されています。


スペインや南フランス同様、地中海性気候で冬は温暖で夏は暑く乾燥していますが、海からの風が夏の暑さを和らげるため、グルナッシュの栽培に適した気候をしています。


造られるワインは果実味が豊かで、かすかにスパイシーな風味の赤ワインになります。

ソムリエ解説!産地による味わいの違いは?

グルナッシュは、高温と乾燥に強いのが特徴で、気候条件の合う地中海沿岸地域で広く栽培されています。 ジューシーでフルーティーな味わいの赤ワインから凝縮した果実感をもつフルボディの赤ワインまで造られ、その他にも、ドライなロゼワイン、酒精強化された甘口のワインまで、様々なタイプが造られています。 原産地であるスペインでは、プリオラート等が主な産地で、こちらでは、凝縮した果実感としっかりとしたボディをもつ赤ワインが造られています。 一方で、フランスのローヌ地方南部では、シラーやムールヴェードル等のブドウ品種とブレンドされることが多く、豊潤で複雑性のあるフルボディの赤ワインが主流。プロヴァンス地方では、ドライなロゼワインの主力品種となり、ルーション地方では、酒精強化した甘口のワインが造られています。 新世界オーストラリアの南部エリアでは、果実味豊かでスパイス感のある赤ワインを生み出すことで有名で、グルナッシュ単一で造られるワインも多く見られます。

相性の良い料理

相性の良い料理

グルナッシュが洋食、和食、中華それぞれどんな料理が合うのか、田邉さんに聞いてみました。

相性の良い料理

ソムリエ解説!洋食ならどんな料理が合う?

グルナッシュの香りに感じられるほのかなスパイス感とトマトや黒オリーブのニュアンス、味わいに感じられる厚みと緻密なタンニン、なめらかな酸味に対して、ローヌ南部で有名な仔羊と地中海野菜を使用したお料理がよく合います。 「仔羊のナヴァラン」という仔羊をトマトやカブと一緒に煮込んだ郷土料理がありますが、こちらはまさにグルナッシュ主体の赤ワインと相性抜群。 ワインのほのかなスパイス感が仔羊の風味と相乗し、野菜の風味とワインのフレーヴァーが同調します。より軽やかなタイプのグルナッシュには、ラタトゥイユのようなお野菜の料理もよく合います。

ソムリエ解説!和食ならどんな料理が合う?

グルナッシュの香りに感じられる赤から黒い果実とほのかなスパイス感、味わいに感じられる緻密なタンニンとなめらかな酸味、そしてふくよかさを感じるボディ。 こちらの特徴にバランスよく調和する料理としておすすめしたいのが牛肉をたっぷりと使った肉じゃが。 じっくりと煮込んだお肉の甘旨味と脂質に、グルナッシュの熟した果実のまろやかな味わいと溶け込んだタンニンが調和し、出汁の味わいがしっかりと染み込んだニンジンやジャガイモの風味に、グルナッシュがもつ心地良い熟成感が重なり、風味が広がります。

ソムリエ解説!中華ならどんな料理が合う?

グルナッシュ主体の赤ワインに感じられるほのかなスパイシーさ、溶け込んだ緻密なタンニンとなめらかな酸味、豊かな風味と複雑性。 こちらの個性に中華料理をペアリングする場合は、北京ダックがおすすめです。肉のまろやかな味わいと香ばしさに、ワインの熟した果実の風味とほのかなスパイス感が同調しつつ、旨味を最大限に引き出します。 甘いタレのニュアンスとワインの豊かな果実の甘味もよく合い、双方の味わいのボリューム感もバランスがとれていて、それぞれの良さがしっかりと引き立ちます。

おすすめワイン

最後に、田邉さんおすすめのグルナッシュを使ったワインを3本ご紹介します。

レ・ドゥー・アルビオン・ルージュ / シャトー・ド・サン・コム

500年の歴史を持つジゴンダスの有名なワイナリーが造る秀逸な赤ワイン。 グルナッシュの個性をしっかりと表現しつつ、相性の良い複数の品種を絶妙にブレンドすることで、色調、果実風味、甘味、酸味のバランスが見事に調和したワインに仕上がっています。

レ・ドゥー・アルビオン・ルージュ
750ml

レ・ドゥー・アルビオン・ルージュ

  • リッチ&グラマー

  • 2020

    3,300

    (税込)

バイ・オット・ロゼ / ドメーヌ・オット

日本で手に入る南フランス プロヴァンス地方のロゼワインの中でも早くから人気銘柄となった、このエリアでトップクラスの生産者が手がけています。 ピンクグレープフルーツやオレンジの香り、ほのかな貝殻のニュアンス。フルーティーでジューシーな果実感とフレッシュな酸味のバランスが調和した、シーフードと相性抜群のドライロゼ。

バイ・オット・ロゼ
750ml

バイ・オット・ロゼ

  • ロゼ

    フレッシュ&ドライ

  • 2022

    3,630

    (税込)

コート・デュ・ローヌ・レゼルヴ / ファミーユ・ペラン

フランス ローヌ地方南部を代表するワイン「シャトーヌフ・デュ・パプ」の生産者として名高いペラン・ファミリー。 こちらはペランのラインナップの中でも気軽に楽しむことができるエントリーラインの1本。ハーブやスパイス、トマトやオリーブを使用したお肉料理とよく合います。

コート・デュ・ローヌ・レゼルヴ
750ml

コート・デュ・ローヌ・レゼルヴ

  • リッチ&グラマー

  • 2021

    2,915

    (税込)

まとめ

ブレンドに用いられることによって、様々なタイプのワインが造られるグルナッシュ。産地や生産者ごとにその違いをぜひ飲み比べてみてくださいね。

グルナッシュの商品一覧

文=岡本名央

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