ブノワ・シュヴァリエは2018年に設立された、ヴォーヌ・ロマネ村を拠点とするドメーヌです。ブドウ農家として代々引き継いできた古樹を、こだわりの有機農法で栽培・管理しているのが特徴。その品質はワイン評価誌のお墨付きで、2021年にはブルゴーニュにおける新人賞「ヤング・タレント・トロフィー」を受賞しています。

ブルゴーニュの2021年は、ブドウの収量が減少したもののワインはエレガントな仕上がりになったことが特徴です。4月に夜間の気温が大幅に下がり、ブルゴーニュ全域で深刻な霜害が発生。また生育期間である春から夏にかけて湿度が高まり、病害に悩まされる生産者もいました。ただ生き残ったブドウは2020年と比べてジュースがしっかりと蓄えられ、酸味も高い仕上がりに。造られたワインは、果実味と酸味のバランスに優れた出来栄えとなりました。

ブノワ・シュヴァリエにおいては、全体的に豊潤で生き生きとしたスタイルに。ワイン・アドヴォケイトではヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ レ・ボー・モンが「豊かな果実味による強固なストラクチャーが感じられる。肉厚な質感と幾層にも重なる複雑なニュアンスが魅力。」とコメントされています。また2021年からニュイ・サン・ジョルジュ プルミエ・クリュ オー・ダモーデが新たにラインナップに加わった、注目のヴィンテージです。

ドメーヌ・ブノワ・シュヴァリエは2018年にヴォーヌ・ロマネ村を拠点に立ち上げられた、新進気鋭のドメーヌ。ワイナリーとしての歴史は浅いですが、当主のブノワ・シュヴァリエ氏はブドウ農家として3世代続く家系の出身です。

ブノワ氏の父であるモーリス氏は1960年に先代から畑仕事を継いでいましたが、2008年に引退。その後、所有する畑の90%が他生産者へ貸し出されていましたが、2018年にその契約が満了し、ブノワ氏たちの手元へ返却されます。これを機に、ブノワ氏は姉のエロイーズ氏と共にドメーヌを設立しました。

ドメーヌの設立以前もブノワ氏は手元に残っていた小さな区画を本職の傍ら手入れしてきましたが、畑仕事のみに専念するようになったのは2019年が初めて。そして、その2019年ヴィンテージにおいて、2021年に開催された第33回「ヤング・タレント・トロフィー」をコート・ド・ニュイ部門で見事受賞しました。この賞はブラインドテイスティングによって地区ごとの最優秀醸造家を選出する、ブルゴーニュの醸造家にとっての新人賞ともいえる賞。ファーストヴィンテージから華々しいデビューを飾り、今後さらに注目を集めることでしょう。

ドメーヌはブルゴーニュの中でも世界中に愛好家の多いヴォーヌ・ロマネ村を中心に、約4haの区画を所有。祖父の代から引き継がれた畑の中には、特級畑リシュブールに近いことで知られるレ・ボー・モンなどの一級畑もあり、優れた区画でブドウ造りを行っています。

その中でもブノワ・シュヴァリエの特徴として挙げられるのがブドウの樹齢です。ヴォーヌ・ロマネ村はもちろん、ニュイ・サン・ジョルジュ村に所有する区画の樹々まで、いずれも平均樹齢が50年を超えています。ブドウは年を重ねるごとに自然と収量が制限されることもあり、彼らのブドウは凝縮感を備えた、高品質なブドウへと育つのです。

栽培に関しては、ユーロリーフによるオーガニック認証を獲得しているのも特徴。2018年まで貸し出していた畑がビオディナミ栽培で管理されており状態が非常に良かったため、ブノワ氏も同様の栽培を続けています。

土壌に必要な微生物を活性化させるため、ブドウの新芽（新鞘）を有機物として粉砕し土壌に戻し、お茶や植物をもとに作ったプレパラシオンを畑に散布するなどの農法を実践。病害などが発生した場合は、その樹々の特徴に近い自然のものを用いて対処します。

また剪定については、近年多くのブルゴーニュのヴィニュロンが取り入れている、樹液の流れを重んじたギュイヨ・プーサールを導入。加えて、樹勢によってそれぞれの古樹の枝の長さを調整することで、ブドウの樹が疲弊せずに、ひとつずつの株が適切な量のブドウを実らせるのです。このように、ブノワ氏はナチュラルな農法と科学的なアプローチを融合させた栽培を実践しています。

収穫は畑で果実の熟し具合を確認しながら選別し、丁寧に手摘みで作業します。醸造所に運ばれた後、ブドウは100%除梗。その後タンク内の温度を7度から10度に保ち、ゆっくりと低温浸漬を実施することで、果実のアロマや風味といった要素を最大限果汁に抽出しています。

発酵では、テロワールとヴィンテージのアイデンティティをより表現するために、自然酵母を採用。これにより、15度から33度という幅広い温度帯での発酵が可能になり、違うタイプの様々な酵母が活発化します。その結果、ワインには各テロワールとヴィンテージごとに異なる味わい、複雑性がもたらされるのです。

また、発酵の間はポンピングオーバーを実施し、果汁を酸素と接触させることで、柔らかい口当たりになるように手掛けています。過度なタンニンが溶けだすのを避けるため、人的介入は最小限に留めますが、醸造の最後にパンチング・ダウンを軽く施すことで、果房から余すことなく糖分と最低限のタンニンを抽出しているのもポイントです。

熟成に関しては、樽の影響を抑えるため、新樽と3年間使用した古樽をキュヴェごとに使い分けて、12ヵ月間～18ヵ月間実施。彼らのフラッグシップであるレ・ボー・モンを含む一級畑の銘柄は新樽比率50%で熟成されています。

このような緻密な醸造と熟成を経て生み出されるワインは、凝縮感があり上質な酸と旨味が溶け合った繊細なスタイル。ブノワ氏は常に最高の状態の樹々・ブドウから美味しいワインを造ることを追い求めており、常に自問自答を繰り返しています。今後、ブノワ氏にしか成せない独自のスタイルが形づくられていくことでしょう。