凝縮した豊かな果実味と精密さに優れたボルドー右岸のトップシャトーのひとつ

ボルドー右岸のトップシャトーのひとつ、シャトー・シュヴァル・ブラン。サン・テミリオンの格付けは、メドックの格付けと異なり10年ごとに見直されますが、1995年の制定当初から最高位である第一特別級のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに長年君臨し続けていたのは、シャトー・シュヴァル・ブランとシャトー・オーゾンヌだけでした。しかし、これらの2シャトーは、2022年のサン・テミリオン格付け更新時に、格付けから撤退。シュヴァル・ブランの会長、ピエール・リュルトン氏とマネージング・ディレクター、ピエール・オリヴィエ・クルエ氏は、格付けの評価基準がワイナリーの基本理念に沿わないことが、撤退を決断した理由だと述べています。 シュヴァル・ブランのブドウ畑は、ボルドーで最も複雑なテロワールの一つと言われるほど、モザイクのような土壌。サン・テミリオンの地域は主に2つの地層構造の上に土壌が形成されており、一つはコート（台地の意）地域と呼ばれる粘土石灰質の土壌、もう一つはグラーヴ（砂利の意）地域と呼ばれる砂利質の土壌です。他の多くのシャトーがどちらか一方の土壌タイプに属すのに対し、シュヴァル・ブランは古代の河川デルタ跡地に位置するため、粘土石灰質と砂利質の両方を均等に含み、区画によって粘土、砂利、砂が複雑に共存する特徴的なテロワールを持つのです。 このような土壌の豊かさに加えて、右岸では珍しく主にメルロだけではなくカベルネ・フランも多く植えられており、力強さとエレガンスを兼ね備えた味わいがこのシャトーの真骨頂。さらにポムロルのシャトー・レヴァンジルやシャトー・ラ・コンセイヤントと溝一つの距離のため、サン・テミリオンながらポムロルようなリッチでしなやかな酒質を持ちます。そして飲み頃の期間が特に長いとも言えるワイン。シュヴァル・ブランは瓶詰めされた時点で既に香り高く魅惑的な味わいですが、年を経るごとに更に調和がとれ風格を増します。 また、近年では生態系を尊重する農業「アグロエコロジー」に力を注ぎ、トップシャトーの中でもシャトー・ラフィット・ロスチャイルドと並び、自然環境保全を推進しています。生物多様性の回復や気候変動の抑制を目指し、敷地内に3,000本の森林樹と果樹を植えたり、ブドウ畑に羊を放牧して草を食べさせたり、土中の生態系を保つために耕作を止めるなど、様々なアプローチでより優れたブドウ栽培へ進化し続けています。