ワインのラベルには必ず「アルコール度数」が表示されますが、その数値はワインごとに異なります。
では、ワインのアルコール度数の差異は何によって生じるのでしょうか?今回は、そんなワインのアルコール度数について、ソムリエの解説を交えながらご説明します。
アルコールに強くない方向けに、低アルコールのワインもご紹介します。ぜひチェックしてみてください。
解説してくれるのは、紫貴あきさん
ワイン講師 日本最大級ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の人気講師。初心者から上級者まで唸らせる質の高いレッスンが評判で、その指導実績は3500人超。その他、企業研修、メディアへの執筆・監修・取材協力、出演など幅広く活動している。 著書『ゼロからスタート! 紫貴あきのソムリエ試験1冊目の教科書』(KADOKAWA)を2024年3月28日に出版予定。
目次
ワインのアルコール度数ってどれくらい?
ワインは種類によってアルコール度数が異なりますが、厚生労働省によれば、ワインのアルコール度数の目安は12%とされています。
これは他のお酒と比べると中程度に位置しています。ただし、焼酎やウイスキーなどは水や炭酸水で割ることが一般的なので実際に摂取されるアルコール度数は低くなります。そのため、ワインのアルコール度数は他のお酒よりやや高いと考えておくと良いかもしれません。
また、厚生労働省が推奨する「節度ある適度な飲酒」は1日平均純アルコールで約20g程度です。ワイン1杯(120ml)に含まれる純アルコールは12gなので、1日に1杯半程度が適切な飲酒量とされています。
ソムリエ解説!ワインのアルコール度数はどう決まる?
ここからは紫貴さんにワインのアルコール度数について詳しく解説いただきます。
紫貴さん
一言で「ワイン」といっても、そのアルコール度数には幅があります。低いものだと5%、高いものだと15%を少し超えるようなものもあるのです。 ワインのアルコールは製造過程で、酵母という微生物が、ブドウ果汁中の糖分を食うことによって生まれます(これを「アルコール発酵」と呼びます)。このとき、原料のブドウが甘いと、酵母のエサが多くなるため、アルコールがたくさん生成されるのです。 つまり、「甘いブドウからは甘いワインができる」という原則を知っておくと良いでしょう。 それでは、どうすれば甘いブドウが手に入るのでしょうか。以下に五つの要素をご紹介します。
- ブドウ品種
- 収穫時期
- 産地
- 干しブドウにする
- 醸造方法
ブドウ品種
約1,500種類あるといわれるブドウ品種のなかには、甘くなりやすいものがあります。
例えば、フランスのアルザス地方で有名なゲヴュルツトラミネール、スペイン出身のグルナッシュが代表例です。
カリフォルニアのジンファンデルもその一例で、ときにはアルコール度数が15%を軽く超えるようなものもあります。
収穫時期
同じブドウでも、収穫するタイミングを後ろに倒すと甘いブドウができます。
理想的な収穫のタイミングは、開花から100日間とされることが多いですが、米国人評論家ロバート・パーカーが活躍し、アルコール度数の高い濃厚なワインが流行ったときは、開花から120日経ったところで甘いブドウを収穫して、パーカー好みのパワフルなワインをつくる生産者もいました。
産地
トマトを暖かいところで育てると、赤くて甘いものができるように、ブドウも暖かいところで育てると、甘いブドウができます。当然、赤道線に近い低緯度ほど暖かく、甘いブドウができるのです。
例えば、白ブドウ品種のシャルドネは、ブルゴーニュのシャブリ地区(緯度約48度)では12.5%ぐらい、南仏の緯度43度付近では13.5%ぐらいになります。
他にも、年間を通じて乾いている産地は、ブドウがしっかりと完熟して甘いブドウが手に入ります。
干しブドウにする
干し柿が甘いのは、軒先につるして置いておくと、水分が蒸発し、糖度が高い柿ができるからです。それと同じで、収穫したブドウを藁の上で乾かしたり、吊るして干したりすると、甘いブドウができるのです。
イタリアの一部地域ではこの方法が行われることが多く「Appassimento(アパッシメント)」と呼ばれます。
醸造方法
そこまで甘いブドウではなくても、アルコール度数を高めることができる「裏テク」もあります。それがブランデー(ブドウからつくった無色透明のもの)を添加する方法です。
この手法でつくったタイプを「酒精強化ワイン」と呼びます。酒精強化すると15~22%程度のアルコール度数になります。ポートワインやシェリーがそれにあたります。
ソムリエ解説!低アルコールのおすすめワイン
ワインは好きだけど、できればアルコール度数が低いものがいいな……と思う方にピッタリのおすすめワインを紫貴さんに聞きました。
モスカート(マスカット)の発泡性ワイン
紫貴さん
イタリア北西部、ピエモンテ州でつくられる発泡性ワイン「モスカート・ダスティ」。アルコール5%前後で、ほのかな甘みがあるため、初心者にもおすすめしやすいワインです。 白ブドウ品種マスカットは、メロンや白バラのような華やかな香りも特徴。フルーティーで優しい飲み口に癒されること間違いないでしょう。
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ランブルスコ
紫貴さん
イタリア北東部のエミリア・ロマーニャ州の赤の発泡性ワインです。アルコール度数は8~10%程度。辛口も甘口もあるので、その日の気分に合わせて飲めるのも嬉しいところです。 グイグイ飲んで、お腹いっぱい食べたくなる食欲が増すワインです。同州は、生ハムやチーズの王様パルメザン・レッジャーノで有名ですから、一度試してみたい組み合わせです。
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ランブルスコ・ディ・ソルバーラ・セッコ
泡
フルーティー&バランス
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4.1
(114件)1,430 円
(税込)
V 90
リースリングのワイン
紫貴さん
ドイツ産のリースリングは特に低アルコールのものが多いです。アイスワイン、貴腐ワインといた甘口スタイルはアルコール度数7~9%ほどです。 清らかな酸とブドウ由来の天然の甘みのバランスがお見事。デザートワインでほっと一息つきたいときにはピッタリです。 ドイツに比肩するオーストラリア産のリースリングは12%以下のものが主流です。
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クナックアルシュ・リースリング・リープリッヒ
白
アロマティック&ピュア
モーゼルリースリングのスペシャリストが造る、日々のお食事との合わせやすいデイリーシリーズ。華やかな風味と程よい酸が心地よい甘口スタイル。 詳細を見る
4.4
(20件)2022年
2,420 円
(税込)
度数が高いときはカクテルに!
パーティーなど複数人でワインを飲む時など、アルコールが得意でない方がいたらワインカクテルにするのもおすすめです。アルコール度数や甘みを調整することで飲みやすい仕上がりになります。
赤ワインを使ったカクテル:キティ
【材料】
赤ワイン 1/2
ジンジャーエール 1/2
【作り方】
1.赤ワインを入れ、ジンジャーエールを注ぎ、混ぜ合わせて出来上がり。
お好みで氷を入れても美味しく召し上がれます。
白ワインを使ったカクテル:スプリッツァー
【材料】
白ワイン 3/5
ソーダ 2/5
【作り方】
1.白ワインとソーダをグラスに注ぎ、混ぜ合わせて完成。
お好みで氷を入れても美味しく召し上がれます。
その他ワインカクテルレシピはこちら
ソムリエ解説!高アルコールのおすすめワイン
一方でアルコール度数の高いワインからもおすすめを紫貴さんに聞きました。
アルコールが得意でない方は注意が必要ですが、高アルコールのものは飲み応えがあり満足感も高く、じっくりワインと向き合いたい時にピッタリです。
アマローネ
紫貴さん
イタリア北東部ヴェローナの街近辺で造られている「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」。干しブドウからワインをつくるため15%前後になります。 「アマローネ」と聞くと「甘いの!?」と思われがちですが、イタリア語「アマーロ」は「苦い」を意味し、実際は辛口です。凝縮した果実味と深い香りが楽しめる大人のワインです。
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カリフォルニア産のワイン
紫貴さん
カリフォルニアは、乾いていて日照量が多いために、甘いブドウが簡単に収穫できます。おまけに、アメリカ人は飲みごたえのあるパワフルな味わいを好むので、収穫もブドウがしっかり熟して(あるいは過熟して)から行います。 そのため、カリフォルニアのワイン全体が、ジューシーでアルコール度数が高いものが多いのです。
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ヴィントナーズ・リザーヴ ジンファンデル
赤
リッチ&グラマー
数々のラインナップを手掛ける、カリフォルニア屈指のワイナリーの人気シリーズ。カリフォルニアの代表品種から生み出される、深い凝縮感を備えた甘美な味わい。 詳細を見る
4.2
(44件)2022年
4,290 円
3,003 円
(税込)
※この商品を含むご注文は11月28日以降に出荷いたします。
ポートワイン
紫貴さん
ポルトガルでつくられるポートワインは、イギリス市場でとくに人気があります(日本の「赤玉ポートワイン」とは無関係なので注意)。 ワインにブランデーを入れて造るため、アルコール度数は20%前後。白・ロゼ・赤ワインタイプがありますが、どれも甘口です。 日本市場でよく見かける赤ワインタイプは、アルコールが高く、おまけに甘く、渋みもあるガツンとした飲みごたえです。そのため、チョコレートのような力強い食材と好相性です。
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まとめ
ワインのアルコール度数は12%が目安ですが、ブドウ品種や収穫時期、産地、醸造方法などによって変わることが分かりました。
ワインによってアルコール度数が異なるので、ラベルを確認したり今回ご紹介したワインをチェックしてみてください。
体質や体調などを考慮しながら、自分のペースでワインを楽しみましょう。
文=川畑あかり